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デンジャラス(桐野夏生)

大谷崎の一面を見る

デンジャラス
桐野夏生(著)
桐野夏生さんの『デンジャラス』を読みました。

タイトルから、ハードボイルドな話かと予想しましたが、全く違いました。

『細雪』『痴人の愛』などの名作を残した文豪 谷崎潤一郎を取り巻く家族の物語です。
主人公 重子は谷崎潤一郎の義妹。姉の松子が谷崎の三番目の妻で、重子を含む四人姉妹が『細雪』のモデルなのだ。重子は自分が『細雪』の雪子のモデルであることを誇らしく思い、生きる支えにしている。

大作家として、多くの家族や縁者を支える谷崎。おおらかなところがあると思えば、気に入らない者をそっと輪の中から排除し、自分の「王国」を築いていることを、重子は知っている。

そして自分は「王国」からのはみ出し者になりたくないと、姉と二人画策したりもするのだった……。
(桐野夏生『デンジャラス』を私なりに大まかにまとめました)
全て確認し尽くしたわけではありませんが、どうもこの小説は実在する人物を実名で描いているようです。

私は文学部で近代文学が専門でしたが、この小説を読んで、初めて知ることがいっぱいありました。

非常に興味深いです。

極度に女性を崇める傾向のある谷崎作品。

谷崎潤一郎が小説に登場させる女性の多くは、男性にかしずく従来の大和撫子ではなく、男性の鼻面をとって引き回す女性です。

高飛車だったり、自由奔放だったりする女性に翻弄されながら、「ああ、なんてエエ女なんやろ」とうっとりする男性という構図。

そういう意味で私が最も谷崎潤一郎らしいと思う作品は『少将滋幹の母』です。

藤原氏全盛期の時代のお話です。

色好みの平中という男性が、侍従の君という美女に猛アプローチするも、いつもするりとかわされます。

すげなくされればされるだけ燃え上がる平中。

しかしプレイボーイを自認する自分が、どんな手を使っても相手にされません。

こうなったら、思い切って彼女のどうしようもなく汚い面を見て、思いを断ち切ろうと考えます。

そして侍女が処理するために運ぶ侍従の君の”おまる”を取り上げて、蓋を開け中を見る……。

気分が悪くなりそうな、むちゃくちゃな手段ですが、敵は一枚上手。侍従の君は、そういうこともあろうかと、対策を練っておりました。

それに気がついた平中は、一枚うわてな相手にさらに惚れ直す……という、一種ヘンタイじみた話ではありますが、大谷崎の筆にかかると、なぜか美しいんですワ。

私は平安の雅さもあり『痴人の愛』のナオミより、こちらを推します。

谷崎潤一郎は、そういった小悪魔のモデルになるような女性で身の回りを固めて、創作のヒントを得ていたんですねぇ。

重子は、名作と褒めそやされる小説のモデルになったことを誇りに思いながら、新しく発表される小説を読み、そこに登場する女性が誰をモデルにしているのか、考えては焦りを覚えたりしています。

もう自分の存在意義はなくなったのだろうかと。

そいういた気持ちの揺れ動きなどを、私は理解できるし、哀れとは思いません。

そういう女性を礎にした、素晴らしい小説の数々。

肉体は滅んでも、彼女たちは物語の中で今も生き続けているのですもの。

すでに読んでいる谷崎潤一郎のあの作品もこの作品も、もう一度読み返してみたい気持ちになりました。

それにしても、桐野夏生さんってこういう作品も素敵。
デンジャラス
桐野夏生(著)
中央公論新社
臨する男。寵愛される女たち。文豪が築き上げた理想の“家族帝国”と、そこで繰り広げられる妖しい四角関係ー日本文学史上もっとも貪欲で危険な文豪・谷崎潤一郎。人間の深淵を見つめ続ける桐野夏生が、燃えさかる作家の「業」に焦点をあて、新たな小説へと昇華させる。 出典:楽天
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池田 千波留
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コミュニティエフエムのパーソナリティ、司会、ナレーション、アナウンス、 そしてライターとさまざまな形でいろいろな情報を発信しています。
BROG:「茶々吉24時ー着物と歌劇とわんにゃんとー」

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