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私が誰かわかりますか(谷川直子)

様々な人が避けて通れない問題

私が誰かわかりますか
谷川直子(著)
新聞の新刊案内を見て読みました。谷川直子『私が誰かわかりますか』。
イラストレーターの桃子は50代前半。再婚を機に、東京から九州に引っ越してきた。

義理の両親とは同居こそしていないものの、「長男の嫁」たるもの、あれこれ期待されている。そのうちの一つは、認知症の義父の世話だ。

桃子が住んでいるのは、九州でも田舎の村で、一番の行動基準は世間体。

何をするにも人様にどう思われるかを気にする義母を古いと思いながら、桃子自身も「悪い嫁」だと思われたくない。しかたなく、義父の世話を引き受けてしまう。

しかし、東京での自由な生活から一転しストレスはたまる一方。認知症の義父を長く在宅介護している東京の友人に電話し、愚痴を言い合い情報交換することが気晴らしになっている。

義父の入院先に毎日通ううち、介護する人もされる人も、いろいろなんだとわかってくる桃子だった。
(谷川直子さんの『私が誰かわかりますか』の前半を私なりにまとめました)
胸が痛くなるようなタイトルが印象的です。

認知症のかたを介護していたら、口に出すか出さないかは別として、最後に行き着く疑問ではないでしょうか。

この問題は様々な人が避けて通れない問題で、普通の小説の数倍、真剣に読み進めました。

桃子が気づいたように、いろいろな人がいます。

先だった夫の両親に尽くし続けてきた静子。先に亡くなった自分の母親は「我慢」を口癖に、さまざまな理不尽を耐えて家に尽くす人でした。

それを見て育った静子は夫亡き後、実の子どもが他にもいる義理の両親の面倒を当然のようにこなしています。

また、高齢出産をした瞳は生まれたばかりの子どもを抱えて介護に突入することになります。

実にさまざまなケースが盛り込まれていますが、暗澹とした気持ちにならないのが不思議。読後感も悪くありません。

実は谷川さんご自身、義理のお父様を1年半介護され、今年で七回忌を迎えるそうです。

この小説の登場人物桃子さん同様、再婚を機に長崎県五島列島に引っ越し、そこで長男の嫁として介護を経験されたのですって。

どれほど尽くしても介護を受ける人からは感謝の言葉1つもらえなかったのに、世間は誉めてくれたそうです。

介護のさいちゅうは、あれこれ口出しして、疎ましいと思っていた世間なのに。

そういうご経験に裏打ちされた小説であるのに後味が良いのは、著者のお人柄によるものかもしれないと思いました。

私は谷川さんの作品を読むのはこれが初めてで、多くを知りませんが、文体からそんな印象を受けました。
私が誰かわかりますか
谷川直子(著)
朝日新聞出版
文藝賞受賞の実力派作家の体験にもとづく介護・看取り小説。「世間体」と「本音」の間で揺れながら、介護を通して女たちは「老いと死の現実」を教えられる。 出典:楽天
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池田 千波留
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