ショコラティエ( 藤野恵美)
まるで丸ごとチョコレート ショコラティエ
藤野恵美(著) 神戸を舞台にした、二人の少年の成長物語、藤野恵美さんの『ショコラティエ』を読了しました。
始まりは1985年。9歳の羽野聖太郎がクラスメイトの誕生会に出席するところから始まる。誕生日会の主役大宮光博とはさほど親しいわけではないのに、なぜか招待状をくれたのだ。
有名な製菓会社の御曹司、光博の家は大きく、会場には食べきれないほどのおいしいものがあふれていた。その中で聖太郎がひときわ気を惹かれたのが「チョコレートの泉」。そのおいしさに夢中になった。 光博が将来継ぐべき製菓会社を興したのは、祖父の源二だ。源二は光博を慈しむと同時に、後継者である孫には独特な教育をしていた。あちこち連れ回し、おいしいものを食べさせて味覚を育てるのだ。 その源二が、チョコレートに魅せられた聖太郎を気に入った。友達がいなかった光博は、お菓子をきっかけに聖太郎と仲良くなる。放課後、光博の家で様々なお菓子を作ることが日課のようになっていった…… (藤野恵美さん『ショコラティエ』の最初の部分を私なりにご紹介しました) 主な登場人物は、羽野聖太郎と、大宮光博、そして光博の幼馴染の村井凛々花です。
チョコレート(製菓)の才能に恵まれているものの、経済的な基盤がなく、一つ一つ積み上げていくしかない聖太郎。 恵まれすぎた境遇で、自分を持て余していく光博。 才能だけでは足りない世界にいる凛々花。 三人の生き方の対比が面白いです。 また、光博の祖父、製菓会社の創業者源二が圧倒的にカッコイイ! 聖太郎と光博の子ども時代、毎日のようにおかし作りをする場面と、聖太郎の修行時代が特に光っていると思いました。 神戸のお話なので避けて通れない阪神淡路大震災については、こんなに淡白なものではなかったよ、と思ったりしましたが、それは物語の本筋とは違う話。 希望のある結末が爽やかで、読後感がとても良かったです。 ところでこの本、内容に相応しいようにと、装丁も実に考えて作られているんですよ。 まず、カバーが本体より5mmほど小さいのです。だから、こんなふうに本がはみ出すことに。 はみ出した部分がチョコレート色なので、あれ、どうなっているのかな、と思わずカバーを外すと、本自体がまるでチョコレートみたい!
おまけに、花布(矢印部分)が金箔ぽくって、チョコレートの包み紙みたいなのです。
関係者の皆さんの愛を感じるではないですか!
素敵な本です。 ショコラティエ
藤野恵美(著) 光文社 母子家庭で育った聖太郎と、大宮製菓の御曹司・光博は、共通の趣味であるお菓子作りを通して親友となる。ある日、聖太郎は光博から、幼馴染みが出場するというピアノコンクールに誘われ、凛々花を紹介される。凛々花のピアニストとしての才能と、奔放な性格に惹かれてゆく聖太郎。光博や凛々花との貧富の差も、なぜだか気になり始める。そして、些細な出来事をきっかけに、ふたりは疎遠となってしまう。月日は流れ、大人になったふたりは、それぞれの道を歩み出し、聖太郎はショコラティエとして類い稀なる才能を発揮していくが…。 出典:楽天 池田 千波留
パーソナリティ・ライター コミュニティエフエムのパーソナリティ、司会、ナレーション、アナウンス、 そしてライターとさまざまな形でいろいろな情報を発信しています。 BROG:「茶々吉24時ー着物と歌劇とわんにゃんとー」 ヒトが好き、まちが好き、生きていることが好き。だからすべてが詰まった本の世界はもっと好き。私の視点で好き勝手なことを書いていますが、ベースにあるのは本を愛する気持ち。 この気持ちが同じく本好きの心に触れて共振しますように。⇒販売HP/Amazon
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