我慢ならない女(桂望実)
作家さんだから書ける内情? 我慢ならない女
桂望実(著) 桂望実さんの『我慢ならない女』を読みました。面白かったですよ。
”作家志望の岩淵明子は18歳。おばの樺山ひろ江の小説が賞をとり、作家になったことを知って上京。自分の作品をおばに読んでもらい、できれば編集者を紹介してもらいたいと思っていた。
作家 樺山ひろ江は明子より10歳年上の28歳。出版社主催の公募で1位になり作家デビューしたものの、その後鳴かず飛ばずで、皿洗いのバイトをして生計を立てている状態だ。 そこにころがりこんできた姪が、編集者を紹介しろと言ってきた。 冗談ではない、自分が必死で作り上げてきたものの上に、ひょいと乗っかろうというのか?ひろ江はけんもほろろに断る。 明子は、ひろ江の創作活動を間近で見るうち、必死で言葉を紡ぎ、物語を作り上げるひろ江に尊敬の念を抱くようになり、いつのまにか秘書のような存在になっていく。” (桂望実『我慢ならない女』の出だしをまとめました) ひろ江は、本当に命を削るようにして小説を書いています。
ピンとくる言葉を見つけたら、それがどこかに飛んで行かないうちに必死で書き留める。 小説を書くことが優先順位の第一位、というより、唯一無二の目的であって、他のことはどうだっていいのです。 たとえば、メガネはいつだってくもったまんま。シャツのボタンが取れたら、輪ゴムで止めて、そのまま皿洗いのバイトにも出かけてしまう。 メガネを手入れしたりボタン付けをしている時間があれば言葉を探して紡いでいたい、まさに小説に全身全霊をかけている人。 だから、生半可な編集者には容赦がありません。ビシバシと罵倒します。 編集者も実はサラリーマン。良い小説家を育て、良い作品を世に出したいと、志高い編集者ばかりではないのです。 話題や時流に乗っかって「売れる本」が作れれば良いと考えている編集者もいるし、映画やドラマとのタイアップ、プロモーション活動ばかり熱心な出版社も。 作家さんだから書ける内情みたいなものも多く、小説とはいえ、大変興味深かったです。 ひろ江の語り口などから、私が連想したのは、高村薫さん。ずっと高村さんをイメージしながら読みました。 タイトルの『我慢ならない女』とは、作家 樺山ひろ江のことを指すのかと思うのですが、私はひろ江のことはむしろ大好きになったので、このタイトルがピンときませんでした。 この小説は、作家や編集者の生態(?)描写の中に、複雑な家族関係、人間関係が編みこまれていて、絡み合った糸が徐々にほどけていくのを読み解く面白さもありました。 『我慢ならない女』が教えてくれたのは、作家としてデビューすることよりも、ずっと作家で居続けることの方が何倍も難しいということ。 ゼロから物語を生み出し続ける全ての作家さんに改めて尊敬の念を覚えます。 我慢ならない女
桂望実(著) 光文社 あらゆることを犠牲にし、小説を書くことに全身全霊を傾ける作家・樺山ひろ江。秘書として支え続ける姪の明子だったが、気難しい性格のひろ江は、編集者たちに煙たがられる存在だ。六年前に出したデビュー作のドラマ化をきっかけに、状況は一変。作品は売れ、執筆依頼も殺到するのだが…。浮き沈みの中、絆を深めてゆく二人の女性の人生を濃密に描く、傑作長編。 出典:楽天 池田 千波留
パーソナリティ・ライター コミュニティエフエムのパーソナリティ、司会、ナレーション、アナウンス、 そしてライターとさまざまな形でいろいろな情報を発信しています。 BROG:「茶々吉24時ー着物と歌劇とわんにゃんとー」 ヒトが好き、まちが好き、生きていることが好き。だからすべてが詰まった本の世界はもっと好き。私の視点で好き勝手なことを書いていますが、ベースにあるのは本を愛する気持ち。 この気持ちが同じく本好きの心に触れて共振しますように。⇒販売HP/Amazon
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