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僕たちが何者でもなかった頃の話をしよう(文春新書)

雲の上のような偉大な人にも、
こんな失敗があった、こんな挫折があった。

僕たちが何者でもなかった頃の話をしよう
続・僕たちが何者でもなかった頃の話をしよう

(文春新書)
憧れの人をもたなくなっている現在の若い人たちに各界のスーパーリーダーの若い頃の話を聞いて一歩踏み出してもらおうと、京都産業大学が連続講演「マイ・チャレンジ 一歩踏み出せば、何かが始まる!」を開催しました。本書はその内容を書籍化したものです。

企画と進行は、永田和宏氏。京都産業大学タンパク質動態研究所所長で、歌人でもあります。ゲストは、山中伸弥(ノーベル生理学・医学賞受賞、京都大学iPS細胞研究所所長)、羽生善治(棋士)、是枝裕和(映画監督)、山極壽一(京都大学総長)。続編のゲストは、池田理代子(劇画家、声楽家)、平田オリザ(劇作家)、彬子女王(京都産業大学日本文化研究所研究員)、大隈良典(ノーベル生理学・医学賞受賞)の各氏です。

山中教授のパートは実に魅力的です。祖父が始めた東大阪の町工場のこと、医学部に入ったものの手術がヘタで「ジャマナカ」と言われたこと、基礎医学の研究者に転向してアメリカに渡ったこと。帰国後は順調に進むのだろうと思いながら読んでいると、まだ挫折は続きます。山中教授は、とうとう鬱状態に陥ってしまいます。こんな紆余曲折がユーモアを交えて語られます。

羽生善治さんは、中学生でプロの棋士になり、以来その道一筋、トップとして走り続けてこられたという点で、ほかの方とはやや趣が違うかもしれません。天才の頭脳から繰り出されるお話は、クリアで論理的です。それでいながら、将棋の手を決めるときには「形の美」を意識するということを何度か言及されているところが印象的です。

このシリーズの特徴は、講演のあとに永田さんとゲストとの対談が続くことです。いずれも永田さんと普段から交流のある人や面識のある人たちなので、うちとけた雰囲気のなかで講演の内容を深める話を引き出すことに成功しています。とくに、山中さんとの対談では関西弁がポンポン入ってきて、とても軽快です。

2冊ともたいへん面白いのですが、一冊目が出たときに気になったのは、ゲストもホストも中高年の男性ばかりという点でした。ホストの永田氏と面識があり、誰もが認める実績がある人という観点から選ばれたのでしょうが、共学の総合大学で開かれる「学生の憧れとなるような各界を代表するリーダー」による講演会シリーズに女性が一人もいないのは残念に思いました。

が、続編には、池田理代子氏、彬子女王が登場します。池田さんといえば、一世を風靡した名作漫画『ベルサイユのばら』の作者です。47歳にして漫画の仕事を中断して音楽大学に一般入試で入学、卒業後は声楽家として活躍されました。そして古希(70歳)を過ぎて、歌人としても仕事を残したいと抱負を語られています。驚きの連続のお話に、人生、何度でもチャレンジできるのだと感じ入りました。

彬子女王(あきこじょおう)は、ほかのゲストに比してかなり若手で、しかも皇族という特殊な立場にある方ですが、この講演の核は、皇族としての経験談ではありません。オクスフォード大学で言葉に苦労しながら博士号を取得し、その後京都に住んで、京都産業大学で研究員として勤めながら、専門性を生かして子どもたちに日本文化を体験してもらう社団法人を立ち上げる、エネルギッシュな「チャレンジャー」としての体験談です。むしろ身近な目標として感じられるのではないかと思います。

2年に渡る講演会シリーズで、1945~1981年生まれの男女6人のお話が収録されました。偉人の人生とは地道な苦労と挫折の連続なのだと、あらためて思い至りました。
僕たちが何者でもなかった頃の話をしよう
続・僕たちが何者でもなかった頃の話をしよう

(文春新書)
文藝春秋
京都産業大学での講演・対談シリーズ「マイ・チャレンジ一歩踏み出せば、何かが始まる!」。どんな偉大な人にも、悩み、失敗を重ねた挫折の時があった。彼らの背中を押してチャレンジさせたものは何だったのか。 出典:amazon

橋本 信子
流通科学大学 商学部 特任准教授

同志社大学大学院法学研究科政治学専攻博士課程を出て、2003年同志社大学にて嘱託講師、2011年から大阪商業大学、2015年4月から流通科学大学で初年次教育の専任教員として勤務。研究分野はロシア東欧地域研究
BLOG:http://chekosan.exblog.jp/
Facebook:nobuko.hashimoto.566
⇒関西ウーマンインタビュー(アカデミック編)記事はこちら

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