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コミュニティ難民のススメ(アサダワタル)

コミュニティ難民のススメ
― 表現と仕事のハザマにあること ―
アサダワタル (著)
出版社:木楽舎 (2014)【内容情報】(「BOOK」データベースより)コミュニティ難民とは、現代日本における、創造的な漂泊の民である。(出典:amazon
タイトルをみると、住んでいる地域にうまく溶けこめないとか、ふるさとを喪失したとか、地域共同体が崩壊したとかいった問題が思い浮びます。でもそれを「ススメ」るってどういうこと? と、「?」が飛ぶタイトルですね。

本書でいう「コミュニティ」は、地域社会や地域団体のことではなく、仕事や社会活動に関わる人間関係や組織などを指しています。ふつうそれは「業界」、「会社」、「専門分野」といった言葉で表現されます。著者アサダワタルさんは、そこに「難民」という言葉を付けて、どの業界、会社、分野にも定住(専属)しない人たちを「コミュニティ難民」と定義しています。彼らは、専門的な知識やスキルを活かして、複数のコミュニティに関与しながら、いくつもの仕事やプロジェクトを手掛けている人たちです。

アサダさん自身、音楽家であり、ラジオのパーソナリティであり、自宅を拠点とした文化発信(「住み開き」)の提唱者でもあります。その他にも文筆家、美術関係のプロデューサー、大学非常勤講師、大学院生と、いくつもの仕事や活動に携わっています。

アサダさんにとってはこれらの活動には共通する関心事が根底にあるのですが、しかし一方では、どのコミュニティにも定住していない、一体化できていないという意識があります。多方面で活躍しているように言われる一方、「で、一体何屋さん?」と訊かれる所在のなさ(アウトサイダー感)があります。また、いま自分が就いているポスト(身分)や仕事(プロジェクト)自体がいつまで続くかわからない制度上の不安定さ、そうしたことから生じる不安感(アイデンティティの揺らぎ)によって、アサダさんはずいぶん悩み傷ついてきたといいます。「難民」という表現をあえて選択したのにはそういった事情があるようです。

ある人について理解しようとするとき、私たちはその人を既知のコミュニティ、つまり「聞いたことのある」業界や専門分野のカテゴリーに当てはめようとします。そういうやり方はある程度有効なのですが、ややもすると、どのカテゴリーにも当てはまらない人や、どこかに所属していなかったり、何かに専念していなかったりする人は、いったい何者なのかと怪しまれたり、なんにでも手を出す人と軽んじられたり、ときには「イロモノ」「キワモノ」として扱われたりするといいます。

しかしそれでもアサダさんは、「自分がどう生きたいか」から逆算して、自分が生きやすいように自分に仕事を合わせていく働き方があって良いし、それが可能な時代になっているといいます。さらに趣味、仕事、社会活動などの境界自体が曖昧なものだと考えています。

このように、自分の信条や関心事に忠実に生きようとすると、一つの職業や活動では収まらなくなることがあるのかもしれません。その場合、新しいコミュニティをつくるという道もあるのでしょうが、アサダさんの場合はあえてそうせずに、細分化した各コミュニティをつないで再構築するという役割を担おうとしているのです。

そのような働き方、生き方は制度上不利な立場に置かれますし、誰にでも理解されるわけではありません。とくに職業に関しては、自分にあった一つのコミュニティ(例えば企業)に属して、そこで与えられる仕事に専念するのが制度上も社会通念のうえからも支持されます。

でも、アサダさんは、これまで関わった仕事や活動を通じて、アサダさんのような働き方の意義を発見してくれる人が、どのコミュニティのなかにもいてくれたと言います。だから「コミュニティ難民」であることの「生きづらさ」と向き合って、自分の人生を生き切りたいと覚悟を決め、同じようにもがいている人々にエールを送っているのです。

橋本 信子
流通科学大学 商学部 特任准教授
同志社大学大学院法学研究科政治学専攻博士課程を出て、2003年同志社大学にて嘱託講師、2011年から大阪商業大学、2015年4月から流通科学大学で初年次教育の専任教員として勤務。研究分野はロシア東欧地域研究
BLOG:http://chekosan.exblog.jp/ Facebook:nobuko.hashimoto.566
⇒関西ウーマンインタビュー(アカデミック編)記事はこちら

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