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女龍王 神功皇后(黒岩重吾)

運命を掴む。その先には新天地が広がっている。

女龍王 神功皇后
黒岩重吾(著)
神功皇后と聞くと、古事記に登場する物語を思い出します。

それは、朝鮮半島を攻める時、仲哀天皇の子を身ごもっていた神功皇后が、遠征の最中に生むわけにいかない、ということでお腹に石を巻き、出産時期を遅らせた…という話です。

真意は不明ですし、この神功皇后自体も存在したか分からないようですが、この勇ましいエピソードが印象的でした。

しかし、長らく記憶の彼方にあったので、今回、あらためて神功皇后を思い出すきっかけとなりました。

巫女のような神秘性に魅了され、あっと言う間に完読した一冊です。

(本文よりp.380~382)
その夜、息長姫(おきながひめ・後の神功皇后)は宮の傍にある神殿に籠った。~

神殿の傍らに筵(むしろ)を敷き、建人(神功皇后の参謀)が琴を弾いた。確かに神を呼ぶ琴は、無念無想の境地から放つ気かもしれない。~

息長姫の瞼に昨夜の夢の続きが、浮かんだ。
長い顎を切断された血塗れの鰐(わに)が気比の浜に打ち上げられた。~

「あの鰐は救いを求めている」
琴の音か、松林の囁きか、間違いなくそう聞えた。

「何故、私に救いを?」
「姫よ、そちの夫になる男子だからじゃ」
「私の夫に……ひょっとするとタラシナカツヒコ王子でしょうか」
「そうじゃ」~

「私には救う力はございませぬ、それに、そんなに救ってやりたいとも思いません」
「救おうと救うまいとそちの自由じゃ、そちが夢の意味を求めたが故に教えたまでじゃ、ただ、そちが瀕死の王子の正妃になれば、そちは倭国の女王になるであろう」
運命を掴む。
人生の岐路に立った時、一歩踏み出す決断をしなければなりません。

ある方がこう言っていました。

「運命は、少し手を伸ばすと届くようなところにやってくる。
掴み取る勇気があるかないかが、運命を自分のものにできるかできないかの分かれ道だ」

「倭国の女王」という運命を掴んだ息長姫。
後に神功皇后となり、圧倒的な力を発揮していきます。

自身を振り返ると、これまでさまざまな決断の場面がありました。
単身、ドイツに渡ったこともそのうちの一つです。

一人でやっていけるのか?
ドイツ語は話せるようになるのか?

考えれば考えるほど、不安はありました。

実際に、大変なこと、予想もしなかったこと、
死ぬほど辛かったこと…

たくさんありましたが、今思えば、全てが良い経験です。

何より、ドイツでの学びが人生の軸となっています。
留学していなかったら、今はありません。

運命を掴むのは、苦労を伴うかもしれない。
だけど、その先には新天地が広がっている。

得体の知れない世界に飛び込んだ神功皇后に、大きな刺激をもらいました。
女龍王 神功皇后
上・下巻
黒岩重吾(著)
新潮社
ちはやぶる神々の力が天地に満ちていた古代日本。龍神の加護により、生まれながらにして恐るべき呪力を備えた一人の姫が誕生した。のちに神功皇后となる息長姫である。倭建の息子である偉丈夫タラシナカツヒコ王子(仲哀帝)は、この息長姫との婚姻を強く望む一方で、大和の政権を奪取すべく立ち上がる―。四世紀の大和の地で、武力と呪力が妖しく交錯する闘いの火蓋が切られた。 出典:amazon

植木 美帆
チェリスト

兵庫県出身。チェリスト。大阪音楽大学音楽学部卒業。同大学教育助手を経てドイツ、ミュンヘンに留学。帰国後は演奏活動と共に、大阪音楽大学音楽院の講師として後進の指導にあたっている。「クラシックをより身近に!」との思いより、自らの言葉で語りかけるコンサートは多くの反響を呼んでいる。
HP:http://www.mihoueki.com
BLOG:http://ameblo.jp/uekimiho/
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