片づきません!(牧村泉)
片付かないのが人生だ 片づきません!
牧村泉(著) 私は最初、片付けが苦手な主人公が何かのきっかけで汚部屋を脱出する、お片づけノウハウ満載の小説かと思って読み始めました。
ところが読んでみると、お片づけ小説ではなかったのです。タイトルに偽りなし。全然「片づかない」お話でした。 主人公の珠希は三十二歳。十三歳年上の夫 史人と知り合ったのは職場で。珠希の派遣先の上司だったのだ。その時、史人は妻も子もいた。つまり、珠希は不倫のすえ略奪婚をしたことになる。
物語は、史人がある日唐突に、会社を辞めると宣言したところから始まる。跡取りがいない親戚のソース工場を継ぐことにしたというのだ。 しかも当面は義母が一人で住んでいる実家に住むという。自分に何の相談もなく決められたことに納得しかねながらも、珠希は従うことにした。 夫の実家は北大阪にあった。敷地は五十坪強。部屋数は九つ。夫婦が間借りして住んでも、全く問題はない……はずが、家についてみて珠希は絶句する。部屋の中に、なぜ巨大な信楽焼の狸がいるのか?! 他にも、昭和の時代に銭湯にあったような、巨大なもみ玉がむき出しになったマッサージチェア、オフィス向けのロッカー、木彫りの熊などなど、家の中はガラクタだらけだったのだ。 結局引越し荷物を入れる場所が確保できず、自分たちの荷物はトランクルームを借りて保管することになった。さて、このガラクタのどこから手をつければいいものか。 その惨状を、大阪に住んでいた友人に愚痴ったところ、逆に彼女の小さな子どもを預かることになってしまった。なんでも、保育園で預かってくれなくなったというのだ。こうしてガラクタ屋敷は託児所になった。 ゴタゴタはまだ終わらず、今度は、史人と前妻の間の娘が転がり込んできた。樹里亜という名の娘は、口の悪いヤンキー娘で、あろうことか彼氏も一緒に居候するという。 ガラクタに囲まれて住んでいた義母、行きがかり上預かることになった幼女、いきなり転がり込んできた義理の娘とその彼氏。ああ、本当にややこしい!片づきません!! 物理的に散らかっているガラクタ屋敷はもちろんのこと、人間関係もみごとに取り散らかっています。
もし私が珠希だったら、上の条件一つだけでもキーッとなってしまいそう。それなのに、この小説ではまだまだ「片づかない」ことがあれこれ勃発するのですよ。 小説だからデフォルメされているとはいえ、よく考えれば、誰の人生にも大なり小なり「片づかない」ことってありますよね。 「安心して。片づかないのはあなただけじゃない」と言われているような気がしました。そしてややこしいことが勃発しても、なんとかなるよ、と言われているような気にも。 小説の舞台となった「北大阪市」は架空の市名ですが、もしかしたらあの場所かな?なんて想像しながら読むのも面白かったです。 片づきません!
牧村泉(著) ポプラ社 夫が突然仕事を辞め、北大阪の義実家へ引っ越した珠希。そこには超マイペースでくせ者の姑、夫と前妻の間のヤンキー娘、その彼氏で気弱なバンドマンとの珍妙な同居生活が待っていた。おまけに謎の家財道具が家から溢れんばかり。平穏に暮らしたい珠希は整理に乗り出すがー。 出典:楽天 池田 千波留
パーソナリティ・ライター コミュニティエフエムのパーソナリティ、司会、ナレーション、アナウンス、 そしてライターとさまざまな形でいろいろな情報を発信しています。 BROG:「茶々吉24時ー着物と歌劇とわんにゃんとー」 パーソナリティ千波留の『読書ダイアリー』 |
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