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ちょっと今から仕事やめてくる(北川恵海)

自分に悩んで袋小路にいる若者に読んでもらいたい

ちょっと今から仕事やめてくる
北川恵海(著)
2017年5月27日公開の映画『ちょっと今から仕事やめてくる』。福士蒼汰くんと工藤阿須加くんが主演で、予告編を見ると、なかなか見栄えのする二人で目の保養でした。

その原作である北川恵海さんの『ちょっと今から仕事やめてくる』。

大学を卒業後、自分の本意ではない就職をした青山隆。上司には怒鳴られ、得意先には土下座せんばかりに謝り、そして連日残業の日々。

帰宅時、駅のホームの端っこを疲れ果ててふらふら歩きながら、「もう疲れちゃったな、このまま死んじゃってもいいかな」……そう思った時、誰かにぐいっと腕を引かれ、ホームの中央に連れ戻された。

連れ戻した相手はヤマモトと名乗った。「小学生の時以来だ、久しぶり!」とにっこり笑うヤマモト。だが隆はその男に見覚えがなかった。

しかし、ヤマモトと連れ立って飲むようになってから、隆は自分が少し変わったように思った。自分が変われば仕事も変わる。少しずつ成果を感じられるようになってきた。

すべてがうまくいきそうだ……と思ったある日、隆はネットでとんでもないものを見てしまう。ヤマモトが数年前に自殺した記事を見つけてしまったのだ。ではいつも会っているヤマモトはいったい何なのか?

映画の予告編でもこの辺りまでは明かされています。私は予告編を見た時も、小説を読んでいる時も、ヤマモトの正体は亡霊なのかと思っていました。映画「シックスセンス」みたいなオチかなと。

でも、結論は割と常識的なものでした。「なんだ、やっぱりそうだよね」

このオカルト的なものが主眼ではないのです。

ベースにあるのは、自殺は自分だけではなく、周囲のすべての人を傷つける。死んではダメ!というメッセージ。

次に伝わってくるのは、仕事がうまくいかないなら自分を変えてみてはどうか、というメッセージ。

ヤマモトが語るビジネスのコツは、仕事だけではなく、いろいろな場面に応用できそうで、私はその場で手帳に書き留めましたよ。

そして三つ目のメッセージはタイトルの通り。努力しても、どうしても合わない場合は会社を辞めたっていいんだよ、ということ。

「会社」を「学校」に置き換えても良いと思います。自分が現在所属している狭い世界だけが全てと思い込まないで、別の世界もあることを覚えておいて欲しい、と。

映画もそうですが、この小説は若い世代をターゲットにしたものだと思います。今の自分に悩んで袋小路にいるような若者にぜひ読んでもらいたい。

ちゃらんぽらんに見えるタイトルに愛情を感じた、『ちょっと今から仕事やめてくる』でした。
ちょっと今から仕事やめてくる
北川恵海(著) KADOKAWA
ブラック企業にこき使われて心身共に衰弱した隆は、無意識に線路に飛び込もうしたところを「ヤマモト」と名乗る男に助けられた。同級生を自称する彼に心を開き、何かと助けてもらう隆だが、本物の同級生は海外滞在中ということがわかる。なぜ赤の他人をここまで?気になった隆は、彼の名前で個人情報をネット検索するが、出てきたのは、三年前に激務で自殺した男のニュースだったー。スカっとできて最後は泣ける、第21回電撃小説大賞“メディアワークス文庫賞”受賞作。 出典:楽天

池田 千波留
パーソナリティ・ライター

コミュニティエフエムのパーソナリティ、司会、ナレーション、アナウンス、 そしてライターとさまざまな形でいろいろな情報を発信しています。
BROG:「茶々吉24時ー着物と歌劇とわんにゃんとー」

パーソナリティ千波留の『読書ダイアリー』
ヒトが好き、まちが好き、生きていることが好き。だからすべてが詰まった本の世界はもっと好き。私の視点で好き勝手なことを書いていますが、ベースにあるのは本を愛する気持ち。 この気持ちが同じく本好きの心に触れて共振しますように。⇒販売HPAmazon



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