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フードバンクという挑戦(大原悦子)

フードバンクという挑戦
大原 悦子 (著)
出版社:岩波書店 (2016)【内容情報】(「BOOK」データベースより)まだ十分安全に食べられるのに、ラベルの印字ミスや規格に合わないなどの理由で生まれる大量の「食品ロス」。その一方で、たくさんの困窮する人々や食べられない子どもたちがいる。両者をつなぎ、「もったいない」を「ありがとう」に変える、フードバンクという挑戦が日本各地で徐々に広まりつつある。携わる人々の思いと活動の実際、これからの課題をわかりやすく示す。(出典:amazon
食品の大量廃棄という言葉から何を連想するでしょうか。食べ残しを捨てるのがもったいないとか、まだ食べられるのに消費期限が過ぎてしまって捨てられてしまう食品といったところでしょうか。

本書が問題とする食品ロスは、賞味期限が近づいたとか、包装にちょっとした印刷ミスがあったとか、商品の品質には影響しないが梱包にキズがあるなどの理由で、十分安全においしく食べられるのに大量の食品が廃棄されているという問題です。その一方で食べ物に困窮している人々がたくさんいるのにです。

2016年2月、フランスでは、大規模スーパーマーケットに対して売れ残った食品の廃棄を禁止する法律が施行されました。これによって、ある一定以上の規模のスーパーマーケットは、あらかじめフードバンクなどの慈善団体と契約しておき、食品を安全に食べられる間に食糧を必要とする人々に提供する義務を負うことになりました。

このような法律の制定は新しい動きなのですが、食べられるのに廃棄される食品を引き取って困窮する人々に提供するフードバンクの活動は以前からあります。本書は、その代表的な団体である全米最大のフードバンク「セカンドハーベスト」の発足とあゆみ、そして日本への導入の経緯と課題を紹介するルポルタージュです。

セカンドハーベストは1967年にアメリカで発足しました。50年近くの間に、規模も活動の幅も大きく広げてきました。食品の提供だけでなく、困窮者が調理を学んで手に職をつける職業訓練の機会も提供しています。

近年は企業の技術改良や輸送、在庫管理の工夫によって、廃棄される食品はずいぶん減っているということです。それ自体は歓迎すべきことなのですが、セカンドハーベストが必要とする種類の食品が確保しにくくなってきたそうです。そこでセカンドハーベストは、企業と協力してオリジナル食品を開発し、それを格安で提供するという事業にも着手しています。飢えをなくすことを徹底して追求しているのです。

日本でも2000年頃からフードバンクを設立する動きが出始めます。その後なかなか認知されなかったのですが、2008年頃から経済格差や貧困が社会問題として認識されるにつれ、「もったいない」というだけではなく、飢えをなくすための活動としても注目されるようになりました。

現在、さまざまな理念や形態をもつ大小のフードバンクが設立され活動しています。施設や団体に食品を配るだけでなく、行政と連携してシングルマザーや子ども、高齢者などを個人単位で支援する活動も広まっています。

しかし課題もあります。アメリカではもともと教会が社会的なセーフティネット(安全網)の役割を果たしていて、フードバンクの機能も担っているのですが、日本にはそれに相当するものがありません。またアメリカの場合、フードバンクへの支援金は企業よりも個人からの寄付の方が多いのですが、日本では個人による寄付文化が脆弱なため、どの団体も資金繰りに苦労しています。

食品の入手についても、アメリカには企業が食品をフードバンクに寄付すると税金が控除されるというビル・エマーソン食糧寄付法がありますが、日本にはそういった制度はなく、そのため企業の理解を得るのがなかなか大変なのだそうです。

日本に本格的なフードバンクを設立したセカンドハーベストジャパンのチャールズさんは言います。「図書館や交番は、たとえ自分がお世話にならなくても、まちにとっては必要なもの。フードバンクも、コミュニティー全体にとって有用な公共財産にしたい」と。日本にも互助の文化や経験はあります。たとえば、お寺がお米の寄付を募って、困っている人に配る活動が広がっています。また首長がリーダーシップを発揮してフードバンクを設立した自治体(群馬県太田市)も現れました。今後の展開に大いに期待したいと思います。

橋本 信子
流通科学大学 商学部 特任准教授
同志社大学大学院法学研究科政治学専攻博士課程を出て、2003年同志社大学にて嘱託講師、2011年から大阪商業大学、2015年4月から流通科学大学で初年次教育の専任教員として勤務。研究分野はロシア東欧地域研究
BLOG:http://chekosan.exblog.jp/ Facebook:nobuko.hashimoto.566
⇒関西ウーマンインタビュー(アカデミック編)記事はこちら

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