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絶望読書(頭木弘樹)

絶望読書
苦悩の時期、私を救った本
頭木弘樹(著)
出版社:飛鳥新社(2016)【内容情報】(「BOOK」データベースより)悲しいときには、悲しい曲を。絶望したときには、絶望読書を。(出典:楽天
以前読んだ『絶望名人カフカの人生論』があまりにも面白かったので、
編者である頭木弘樹さんの新著『絶望読書』を読むことにしました。

読んでみると、いろいろと見えてくるものがありました。

なぜ「読書」と「絶望」が合体するのか。
私にはそれがまず理解できませんでした。
読書って楽しむものではないの?
でも、読み進めるにつれてわかりました。
ありがたいことに、
私はこれまで絶望したことがなかったんだなと。

悔しくてハラワタが煮えくり返り、
うがぁぁぁと獣のように声をあげて泣いたことはある。
「ああああ~失敗してしまった!!
どうしよう、もうだめだぁ!」と泣いたこともある。
でもまぁ一晩寝ればなんとか治り、
3日もすれば、チクチク痛む胸のまま、
人と会えばニッコリもして、
明るい声で話すこともできました。

最後の最後、一番深刻な部分を直視しないというか、
「きっとなんとかなる。私は運が強いんだ!」と
根拠のない自信を持っているおかげだと思います。
早く言えば、表面上は心配性でも、
心の奥が能天気なのでしょう。私は。

それ以前の問題として、
自分では人生最大のピンチと思ったことも、
俯瞰してみたら、全然ピンチなんて言えないことだったのです。
絶望するしかない、という立場になったことがなかった。
「挫折」という言葉もふさわしくない、
ちょっとしたつまづき体験しかしたことがない、
とても甘い道を歩んできたのだなぁ、私は。

それに気づかせてくれたのが『絶望読書』です。

著者の頭木さんは大学三年生のとき、突然難病にかかりました。
それまでは健康そのものだったのに、
ある日突然入院。
医師からは「一生治らない病気です」と宣告を受けます。

それまでは大学院に進むべきか、
それとも就職すべきか悩んでいた頭木さん。
医師からは
そのどちらも無理で、
一生親御さんに面倒をみてもらうしかないと
宣告されたのでした。
頭木さんはご両親が年齢がいってからのお子さんであり、
しかも裕福とは言い難い、
つまりお先真っ暗になってしまったのでした。
若干二十歳で。

長期入院中、頭木さんを救ったのは、
小説やドラマなどの「物語」でした。

と言っても、お見舞いに来る人が
良かれと思って持ってきてくれる
明るい夢のある小説や、
前向きな主人公が頑張るポジティブな小説は、
逆に苦しかったそうです。
贈る側は励ましているつもりでも、
絶望している人にとっては辛いものがある。
それは絶望した人にしかわからないことかもしれません。

例えば、辛い体験をした人は、
同じように辛い体験をした人にしか
自分の気持ちはわからないと思うもの。
普通の人に言葉を尽くしてなぐさめてもらうより、
同じような体験をした人に、
「その気持ち、わかるよ」
と言ってもらったほうがどれほど救われるか、
というのと似ているようです。

絶望している人に、そっと寄り添い、
共感を与える小説。
それこそが頭木さんを救ったというのです。

この本の中で印象深いエピソードを一つだけご紹介しましょう。
それは頭木さんのいらした病院で
ドフトエフスキーが流行ったというもの。

読書がさほど好きではない人が入院すると、
まずはテレビを見る。
まれに雑誌やスポーツ紙に目を通し、
時間をやり過ごすそう。

短期入院ならそれもいいけれど、
重病などで入院が長期になってくると、
バラエティ番組で出演者が楽しそうに笑っているのを見て
逆に気持ちがふさいだりしてくるそうです。
そんな人に頭木さんが本を薦めたら、
それをきっかけに熱心に読み始める人が、
驚くほどいたそうです。
しかも、ドフトエフスキーにハマっちゃう人が多かったと。
それまで文学に興味なんかなかった人がドフトエフスキーです。

私はドフトエフスキーは苦手です。
文学史に燦然と輝くドフトエフスキー。
『罪と罰』くらいは読んでおかねばなるまいて、と
読むには読みました。
もちろん面白かったです。
ですが、次に手が伸びませんでした。
はっきり言って10代の私には
暗すぎたし、重すぎました。

でもそれが病室で流行ったということは、
あの暗さと重さが逆に慰めになったのでしょうね。

『絶望読書』は決して後ろ向きな本ではありません。
むしろ、絶望から立ち直る処方箋であり、
これ以上前向きな本はないかもしれません。

もう人生を終わらせたいとまで思っている人がいたら、
まずは『絶望読書』を一読し、
そこで薦められている本やドラマ、映画をご覧になるといいと思います。

頭木さんがおっしゃるには、
真っ暗なところから少し抜け出すと、
今度は明るい物語に救われる段階になるんですって。

鬱のかたに「頑張れ」が禁句だという認識が
徐々に広がっている今、
『絶望図書』への理解も得られやすいのでは。
一人でも多くの人がこの本でいい方向に向かいますように。
 
それにしても、この本を読み終わった私は反省しきり。
これまで、持ち前の能天気で
知らず知らずに多くの人を傷つけてきたことでしょう。
どうかお許しを!!
 

池田 千波留
パーソナリティ・ライター

コミュニティエフエムのパーソナリティ、司会、
ナレーション、アナウンス、 そしてライターと、
さまざまな形でいろいろな情報を発信しています。
BLOG ⇒PROページ

著書:パーソナリティ千波留の読書ダイアリー
ヒトが好き、まちが好き、生きていることが好き。
だからすべてが詰まった本の世界はもっと好き。

「千波留の本棚」50冊を機に出版された千波留さんの本。
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