百田尚樹さんの最新刊『カエルの楽園』を書店で見かけました。
帯に著者自身のことばが紹介されています。
「これほどの手応えは『永遠の0』『海賊とよばれた男』以来。
これは私の最高傑作だ」と。
ほぉ。
その2作と並ぶのであれば、
読まないわけにはいかないでしょう。
ということで買って帰り、一気に読みました。
***
主人公はアマガエルのソクラテス。
彼は有志たちと一緒に生まれ育った場所を離れ、
安住の地を探しに旅に出た。
というのも、凶悪なダルマガエルの群れがやってきて、
アマガエルは次々食べられてしまったから。
このままでは自分たちは滅んでしまうと
危機感を覚えた若いカエル達が、
新天地を求めての旅だった。
過酷な旅の末にたどり着いたのが
平和で豊かな国「ナパージュ」。
心優しいツチガエル達の住む国。
ツチガエル達はある戒律を守り、
穏やかに暮らしている。
その戒律を守ることで平和が守られているのだと信じて。
しかし、国を揺るがす事件が起こる。
今までのようにナパージュは平和な国であり続けられるのか?
どうしたら平和が守られるのか?
ナパージュのツチガエルたちの言動を観察し、
ソクラテスは考えるのだった…。
***
勘のいい方はお分かりかと思いますが、
ナパージュ=日本。
カエルの社会を舞台にした寓話です。
安全保障の問題、日中、日韓に横たわる問題、
集団的自衛権の問題などが、全て盛り込まれています。
寓話だから、とてもわかりやすいうえに、
カエルそれぞれの名前がまさに「名は体を表して」いて、
キャラクターや主張がつかみやすい作りです。
日頃、いろいろなニュースを
遠い国の話のように「ふーん」と聞き流している人も
この本を読めば危機意識を持つことになるでしょう。
しかし、読めばきっと賛否両論分かれる小説だと思います。
むしろ百田さんはそういう議論を起こしたくて、
この小説を書いたのかもしれません。
なぜ主人公を他の生き物ではなく、カエルにしたでしょう。
多分、よく言われる、
「カエルを熱湯にほうり込むとすぐに飛び出して逃げるが
水に入れておき徐々に熱くしていくと
カエルは温度変化に気がつかず茹でられてしまう」
という例え話と関連があるのではないかと思います。
平和ボケしている場合じゃないぞ、と。
日本が抱えている問題を
わかりやすく目の前に突きつけてくれる『カエルの楽園』。
しかしこれをご自分の最高傑作だとおっしゃるのには
賛成しかねます。
私の中では百田さんの作品では
『永遠の0』、『風の中のマリア』が
1位、2位。
3位が『海賊とよばれた男』かなぁ。
最高傑作というよりは、大変な問題作というのが
正しい気がする。
では百田さんの作品の中でどのあたりかと考えても
順位はつけがたく、私は番外に位置付けました。
人それぞれ意見が違って当たり前。
賞賛するにせよ、けなすにせよ、
まずは一読すべき書だと思います。 |
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池田 千波留
パーソナリティ・ライター
コミュニティエフエムのパーソナリティ、司会、
ナレーション、アナウンス、 そしてライターと、
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