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あすは きっと(ドリス シュワーリン)

あすは きっと
ドリス・シュワーリン (著)
新しい年を迎えたなーと思ってたら、あっという間にもう3月。 東日本大震災からは、丸5年になりますね。

関西に長くお住まいの方は、 阪神・淡路大震災を経験してるかなと思うわけですが、 私は当時高校生で、暮らしている堺は震度4でした。

2階の自室では、2段ベッドの上段にいるような状態だったんですが、 ベッドは不安定にガタガタ揺れて、ギシギシいう天井はすぐ目の前。

真横では、ぶら下がった照明の傘が、揺れてるのか回ってるのか、 はっきりしない動きで度々ベッドの縁にぶつかってきました。

未経験の揺れだったし、震度4でも充分に怖かったなあ。 それがもう、20年以上も前のことなのですよね。

今回ご紹介する絵本は、個人的に「とっておき」の箱に入ってる作品です。

表紙からしてすでに、ちっちゃくてかわいい子たちが ちょろちょろと楽しそうにしてるんですが、 本の扉をめくってすぐの見開きに、作者のこんなメッセージが書かれています。

「思い出すのを手助けしてくれるベンジャミンのために」

これは、文章を担当したドリス・シュワーリンさんの言葉。 ベンジャミンというのは、お孫さんなんだそうです。

お話は明日の少し前、つまり「今日の終わり」から始まります。

夜はどんな時間?みんなどうやって過ごすのかな。 何人かの子供たちの様子が描かれています。 みんなベッドに入っているし、暗くて、とっても静かです。

次のページは、明るくて真っ新。そこにかかれいているのは…

目をさまして「おはよう!」っていうと、 もう そのときが、あす。

あすは、こんなこえで はじまるよ。

「うあい、あかるい おひさまあ! あさごはんが たべたいや!」

ベッドの上に立ち上がり、 感動に満ちた様子で窓の外を眺めてたと思ったら、 すぐさま、朝ご飯が食べたくなって、 ごきげんな様子で駆け出しちゃってる男の子。

目を覚まして「おはよう!」、確かにそれが明日。 (それでいて、毎日だいたい同じことの繰り返し…)

もしかして、あなたが最近そう感じる機会が増えてるとしたら、 ぜひとも次のページをめくりましょう。

あすは いっぱい できるよ、 きょう できなかったことも。

そうして、この絵本ではしばらくの間、 まさに子供たちにとって、「明日叶うかもしれない」ことが次々と語られます。

沢山のちっちゃい子供たちが、 心の向くままに、笑ったり、はしゃいだり、もう楽しくて仕方なかったり。

だけど、楽しい想像ばかりではありません。 後半ではほんの少し、「明日起こるかもしれない」ことも語られています。

心の向くまま、怒ったり、機嫌を損ねたり、悲しくて仕方なかったり。

絵はどれも、少し離れたところから見守っているような、 あるいは、そんな記憶を断片的にいくつか並べたような、 小さな小さなスケールで描かれています。

その、素直に精一杯生きる子供たちの様子は、 そばまで行って「いい子だね」って撫でてあげたくなるくらい。

ページをめくって、作者の眼差しや記憶を受け取っていくうちに、 目を細めたくなるような、愛おしい気持ちで胸がいっぱいになるのです。

そして最後にもう一度、夜の時間についてふれています。 夜ぐっすり眠ることは、痛みをケアするためにかかせないことなのだと。

「明日ってなあに?」

花の名を聞くように、何気に出てきたであろう、孫からの問いかけ。

それは、年を重ねた作者自身が気に留めなくなっていた大切なことを、 しっかりと思い出させてくれるきっかけになったのです。 なんと大きな手助けでしょうか。

ありきたりなフレーズかもしれないけれど、

『明日とは、希望に満ちた可能性をはらんでいる。 いつも好奇心を忘れず、期待に胸膨らませて、明日を迎えよう!』

そんな気持ちを思い出させてくれる、とっておきの絵本です。
profile
恒松 明美
ギャラリーリール(GALLERY RiRE)店主

小説なら1日。映画なら2時間。絵本なら、長くても15分くらいでしょうか。 それでも小説や映画に負けないくらい、心が満たされる絵本があります。 毎日、時間がたりない…。そんな、忙しく働く女性にこそ、 絵本はよきパートナーとなってくれると思います。

毎日窮屈だな。ちょっと背伸びしてばかりだったかな。 「心の凝り」が気になる時におすすめの、絵本をご紹介します。

ギャラリーリール(GALLERY RiRE)
大阪府堺市中区深井水池町3125
営業日:基本的に事前予約制(ご利用方法はHPご確認ください)
定休日:月曜・火曜+不定休
HP:https://galleryrire.theshop.jp/



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