ゴールディーのお人形(ゴフスタイン)
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![]() 人生のどの部分をどのように彩るかは人それぞれ。 ゴールディーのお人形
M.B. ゴフスタイン つい先日、急に何人かの旧友と会う機会ができました。みんな同い年です。
彼女たちはみな、それぞれに自分の得意な分野を生かす仕事についているわけですが、それなりに迷いは尽きないようで。 みんな同じように将来を模索しているんだなあとわかっただけでも、幾分心が軽くなったような気がするから不思議ですよね。 さて今回の絵本は、人形作家の女の子が主人公のお話です。 両親から受け継いだ素質を、人形作りに対する情熱と探求心でひたむきに磨き上げ、いつしか人気の人形作家となったゴールディー。 ある日、普段と変わらない日常の中の、ほんの些細な場面で、恋に落ちるように美しいランプに心を奪われてしまいます。 誰かの仕事が、誰かを魅了する。 ゴールディーのお人形も、そうしてたくさんの人々に求められているのだけれど、彼女は、自らの仕事を全うすることで頭がいっぱい。そのことには全く気づいていません。 思わず買ってしまった。こんなことは初めて。取引先でもある店の主は、せっかくだからと値引きまでしてくれた。とっても嬉しかったけれど…。 彼女は、この初めての経験に戸惑います。 「(こんなに気に入っているのだから)やはり定価で買うべきだった」とか、反対に「どうしてこんな高価なものを買ってしまったんだろう」とか、忙しなく立場を変えて悔やむのです。 この作品は、誰かの日常にとって、特別な彩りとなるような作品を生み出せる、特別な作り手のひたむきな物語が本筋にあります。 が、同時に私は、彼女の周囲にいる人々の「人生を彩るためのささやかな選択」がいくつも描かれているところにも、魅力を感じています。 登場人物それぞれの働き方や人との接し方。目の前の小さな出来事に対して、どのような判断をするのか。 どんな仕事であっても、日常の中のささやかな選択の積み重ね次第で、人生の彩りはぐんと違ってくるはず。 ここに登場するランプを売る店の主やパン屋さん、大工さんなどは、それぞれの立場で、自分なりの彩り方をよく心得ているように見えます。 モノクロで、こんなに白いページが度々挟まっている絵本は珍しいなと思うのですが、含蓄に富んだこの作品には、むしろそのくらいがちょうどいいかもしれません。 人生のどの部分をどのように彩るかは人それぞれ。ああでも、みな迷うのは「人それぞれ」だからこそなんですよね。 私はゴールディーの見つけた答えが大好きです。皆さんはいかがでしょうか? ゴールディーのお人形
M.B. ゴフスタイン (著) 末盛 千枝子 (翻訳) すえもりブックス ![]() 恒松 明美
ギャラリーリール(GALLERY RiRE)店主 小説なら1日。映画なら2時間。絵本なら、長くても15分くらいでしょうか。 それでも小説や映画に負けないくらい、心が満たされる絵本があります。 毎日、時間がたりない…。そんな、忙しく働く女性にこそ、 絵本はよきパートナーとなってくれると思います。 毎日窮屈だな。ちょっと背伸びしてばかりだったかな。 「心の凝り」が気になる時におすすめの、絵本をご紹介します。 ギャラリーリール(GALLERY RiRE) |
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