お見合い経験はおありですか?
私はありません。
お見合いがこんなにも
波瀾万丈、奇妙きてれつな人との出会いの場なら、
後学のため一度くらいはしておけば良かった。
そう思わせてくれるのが鈴木輝一郎さんの『ご立派すぎて』。
鈴木さんはお見合い歴30回以上なのですって。
つまりはその数だけ、
不調に終わった経験をお持ちということ。
タイトル『ご立派すぎて』は
お見合いの断り文句なんですってね。
確かに、
「ご立派すぎて私などにはもったいないかたです」
と言えば、相手を傷つけず、仲人の面子も保てます。
本音とは別に、こういう言葉でやんわり断るところが
日本人らしいといえましょう。
***
丹波十四朗は29歳。
実家の建材店をを手伝いながら、
小説家になることを夢見ている。
とはいえ、新人賞に応募しても、
結果は伴っていない。
それでもあきらめたくない十四朗にとって、
結婚など考えてもみないことだった。
しかし、世話焼きで口のたつ伯母に丸め込まれ、
お見合いをすることを決意した。
まさか、その先何十回も
「ご立派すぎて」と言われようとは考えもせずに。
***
この小説、著者は「フィクション」と断っていますが、
どう考えても鈴木さんの実体験を元にした、
限りなくノンフィクションに近いフィクションだと思います。
そのせいか、十四朗の言動の一つ一つにリアリティがあります。
小説家志望ということで、ロマンティックなところがあり、世間知らずでもある。
良かれと思って、発する言葉がとんでもない。
もし私が仲人さんだったら、
テーブルの下で何度も脚を蹴りまくることでしょう。
アホすぎてなんだか いとおしい。
十四朗にだんだん情がわいてきて、
応援せずには居られなくなります。
十四朗だけでなく、彼の家族、
特にお見合い話を持ってくる
パワフルな叔母さんの含蓄深い語録も楽しい。
また、お見合いと平行して進行する、
十四朗が応募した文学賞の行方。
私は十四朗と一緒に泣きました。
十四朗は無事に結婚相手を見つけられるのか?
小説家として日の目を見ることができるのか?
おもしろいので是非ご自分で読んでください。
結果はどうあれ、
人生あきらめちゃイケマセン。
継続は力なり。
何事も続けていきましょう、と、
そんなエールももらえる小説でした。 |
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池田 千波留
パーソナリティ・ライター
コミュニティエフエムのパーソナリティ、司会、
ナレーション、アナウンス、 そしてライターと、
さまざまな形でいろいろな情報を発信しています。
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著書:パーソナリティ千波留の読書ダイアリー
ヒトが好き、まちが好き、生きていることが好き。
だからすべてが詰まった本の世界はもっと好き。
「千波留の本棚」50冊を機に出版された千波留さんの本。
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