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第2図書係補佐(又吉直樹)



 
第2図書係補佐
又吉 直樹(著)
出版社:幻冬舎(2011)【内容情報】(「BOOK」データベースより)お笑い界きっての本読み、ピース又吉が尾崎放哉、太宰治、江戸川乱歩などの作品紹介を通して自身を綴る、胸を揺さぶられるパーソナル・エッセイ集。巻末には芥川賞作家・中村文則氏との対談も収載。(出典:amazon
今でもあるのでしょうか。
私が中学生のころ、委員というものがありました。
例えば、保健委員、放送委員、美化委員、そして図書委員など。
私は本が好きだったので、何の迷いもなく図書委員に立候補しました。

図書委員の仕事は、
ローテーションでお昼休みや放課後に図書館に詰め、
貸し借りの手続きをしたり、
返却図書を棚に返したり。

もちろん仕事の合間は本の読み放題です。
周りは本だらけ。
読み終わったらまた好きな本を探せるし、
ああ、パラダイス。

当時はバーコードリーダーなどありませんから、
貸し借りは全て手作業。
本の奥付きあたりに、小さな袋が貼り付けてあり、
そこにちょっと厚みのある紙で作られた
「貸出カード」が入れられていました。

貸出人の学年クラス氏名、貸出日、返却日を書き込んであるそのカードを見ると、
日頃しゃべったことがない違う学年や他の組の生徒を発見することがあり、
「へぇ、⚫︎⚫︎さんはこの作家が好きなのか」と、何かを共有した気分になったものです。

かと言ってその人にわざわざ話しかけに行くでもなく、
でもそれを知ったあとは、相手に対する気持ちは前より柔らかくなっていました。
そのことが学生生活にどんな影響があったかはわからないけど、
悪いことではなかった気がしますよ。

さて、芥川賞作家となった又吉直樹さんの『第2図書係補佐』。

若手芸人がしのぎを削る場だったある劇場が
2006年から2009年まで発行していたフリーペーパーに、
又吉さんが本を紹介するコラムを連載していたそうで、
それをまとめたものです。

図書係か…。
私が通った、山の上に建つ中学校。
その3階にあったあの図書室。
放課後、徐々に陽が傾き、オレンジ色に染まっていく書架を思い出し、
懐かしい気持ちでいっぱいになりました。

しかし「第2」でしかも「補佐」とは、ずいぶんへりくだっていますね。
又吉さんは、人様の作品を勝手に紹介する行為を厚かましいと感じていたそう。
また、書評家のように、覚悟を持って評価をくだす書評家にも
引け目を感じているとかで、つけたタイトルが『第2図書係補佐』だったそうな。

ギクギクギクッ。
芥川賞作家にして、この謙虚さ。

日頃、自分の好みを尺度にして、
面白いだの、面白くないだの、
ピンとくるだの、こないだの、
あれこれ書き散らしている私は、
能力もないのに『図書係筆頭』を気取っていることになりますやん。

ああ「はじめに」を読んだだけで、胸に突き刺さるし、耳も痛いぞ。
しかも、この8月8日に『パーソナリティ千波留の読書ダイアリー』なんて、
思いっきり自分を前に出したタイトルで書評コラムを発行したばかり。
ああ、恥ずかしい…。

おおいに出鼻をくじかれながらも読んでみたら、
面白くて、面白くて。
ときにワクワク、ときにニヤニヤ、
ときに「うーん。わかる。恥ずかしいよなぁ、そういうときは」と
さまざまな感情を呼び覚まされました。

「本を紹介するコラム」と銘打ってはいますが、
本の内容に触れるのはわずか数行。
ほとんどは、その本から引き出された又吉さんのエピソードです。
これを読んだら、本も読みたくなるけど、
「ピース」の漫才を見たくなるね。
そして又吉さんのファンになるわ。

このコラムはもちろん、芥川賞作家になる前の、
小説を書くなんて思ってもいなかったかもしれない時代のものですが、
小説や作家に対する又吉さんの謙虚な思いは、
受賞後の今も変わっていないのではないかと思います。
いや、そうであってほしい。
本にぬかずく使徒に、文学の神様は微笑んだんですねェ。

紹介されている47冊のうち、私が読んだことがあるのは14冊。
読み始めたものの、最後までたどり着けなかった作品は4冊。
まずはその4冊を再読してみようかな。

「はじめに」で、自分の書評コラムの内容が不遜であると
指摘された気分になり、ちょっとひるみましたが、
全部読んだ今は、また違う気持ちになっています。
開き直るようだけど私には私の書き方しかできない。
いや私に限らず、どなたであれ、他の人の真似をしても仕方ない。
これからも今まで通り、私は思ったことを書かせていただきますワ。
「私は私で良い~♪」(劇団四季ミュージカル『赤毛のアン』より)

ただ、これからは又吉さんを見習って、
作家を呼び捨てにするのはやめます。
(表題は除く)

【おまけ】
巻末に付されている又吉直樹さんと作家・中村文則さんの対談の中で
中村さんが
「純文学をたくさん読んだ人には、内面に自然と海のようなものができる」
という内容の発言をされていました。

私の中にも海があるだろうか。
これから死ぬまで、その海を、
もっと広く深く、もっと青く清らかなものにしていきたい。

池田 千波留
パーソナリティ・ライター

コミュニティエフエムのパーソナリティ、司会、
ナレーション、アナウンス、 そしてライターと、
さまざまな形でいろいろな情報を発信しています。
BLOG ⇒PROページ

著書:パーソナリティ千波留の読書ダイアリー
ヒトが好き、まちが好き、生きていることが好き。
だからすべてが詰まった本の世界はもっと好き。

「千波留の本棚」50冊を機に出版された千波留さんの本。
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