ロバのおうじ(グリム兄弟)
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![]() ロバのおうじ
リム兄弟 (著) バーバラ・クーニー (イラスト) あっという間に、連載5回目を迎えました。
たまには、古いおとぎ話などどうかしら?ということで。今回は、グリム童話が元になっている絵本をご紹介します。 「ロバのおうじ」という絵本です。 グリム童話の中には、本当は怖ろしい、なんていうものもあるといいますが、時代が下るにつれ、子供に聞かせるためにカスタマイズされたものというのは、やはり、ハッピーエンドが基本です。 お約束の展開と幸せな結末。それらがもたらす絶対的な安心感。大人になっても、たまに触れてみると実に心地よいものです。 「ロバのおうじ」の、ざっくりした内容を説明しますと… とある国に、ロバの姿をした王子が生まれます。 彼は教養を身につけるための努力を惜しみませんでしたが、見た目がロバということで周囲から孤立し、孤独を感じながら王子としての日々を過ごします。 ところが、旅人からリュートの演奏を学び、やがて見事な腕前となった彼は、色々なことに見切りをつけ、国を捨てて放浪の旅に出ます。 旅の途中、見知らぬ国の王とお姫様に、リュートの腕前を披露したのが転機となり、そのお城で暮らすことに。 かつて王子として身につけた教養が功を奏し、人気者になります。 そうしてお姫様から真実の愛を得て呪いが解け、ロバの姿から立派な青年の姿になった彼は、お姫様と結婚して子供にも恵まれ、幸せに暮らしましたとさ、というお話です。 この、コンプレックスに負けず、真っ当に努力して幸せをつかむお話に、素晴らしい絵を添えたのが、バーバラ・クーニーです。 彼女の絵の魅力は、なんといっても、お行儀がいいところかなあと思います。 それは、厳格に躾られたお行儀のよさではなく、あくまで、丁寧でおっとりとしたお行儀のよさなのですが、私は、この雰囲気が大好きなんです。 葉っぱの一枚一枚まで。ロバの尻尾の一本一本まで。 小さな星の、一つ一つの輝きまで。色も形も、ちんまりとお行儀がいい。 マイペースで努力家というロバの王子の気質に、この絵の持ち味がとてもマッチしており、彼の健気な様子がいきいきと描かれることで、どこか微笑ましい印象の作品に仕上がっています。 大人になってこの作品を読んでみて、この絵本の中に入ってみたいなあ、ロバの王子とお姫様が戯れる、朝の爽やかなお庭に私もご一緒してみたい!…などという、アホなことを考えたりしました。 もちろん、その朝の場面は、この作品の中で、私が一番お気に入りの場面です。ラストの、母親となったお姫様が、我が子にリュートを聴かせている場面も印象的ですけどね。 子供の頃、純真無垢な心でおとぎ話の世界に憧れた気持ち。 ほんのり包まれるような温度を伴った懐かしさ。 そんな記憶を呼び覚まされること、うけあい。 おとぎ話の魅力を、再認識させてくれる絵本です。 ![]() 恒松 明美
ギャラリーリール(GALLERY RiRE)店主 小説なら1日。映画なら2時間。絵本なら、長くても15分くらいでしょうか。 それでも小説や映画に負けないくらい、心が満たされる絵本があります。 毎日、時間がたりない…。そんな、忙しく働く女性にこそ、 絵本はよきパートナーとなってくれると思います。 毎日窮屈だな。ちょっと背伸びしてばかりだったかな。 「心の凝り」が気になる時におすすめの、絵本をご紹介します。 ギャラリーリール(GALLERY RiRE) |
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