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をんな紋~まろびだす川(玉岡かおる)



 
をんな紋~まろびだす川
玉岡かおる(著)
出版社:角川書店(2000)【内容情報】(「BOOK」データベースより)明治43年10月、豊穣の播磨平野。期待通り豊かな実りを得た村では、娘の嫁入りがあいついでいた。小作人七十人とも言われる大地主の青倉家の長女・柚喜は、明石の女子師範学校に通う十七歳。幼なじみのハルの晴れ姿を、一目でいいから見送りたいと朝いちばんで帰省してきた。三つ違いの妹の佐喜は、「綺麗やったろ?」とまるで自分のことのように誇らしげだ。ひさしぶりに会う彼女は、また愛らしくなったようだったー。秋より深く染めあげられる女たちを描く、生々流転の長編小説。(出典:楽天ブックス
私が親にもたせてもらった着物のうち、
礼装として着る着物には紋が入っています。
それは全て実家の紋。
普通は嫁いでしまうと苗字は変わり、紋も変わってしまうのだけれど
嫁入り道具に婚家の紋ではなく、実家の紋を入れても差し支えはないとか。
このように代々母から娘に受け継ぐ母系の紋のことを「女紋」といい、
私も着物には実家の紋「女紋」を入れているというわけ。
この習慣は西日本独自のものなんですって。

私が玉岡かおるさんのファンになったのは「天涯の船」から。
以後、新作が発表されるごとに飛びつくようにして読んでおりますが、
「天涯の船」以前の作品は、読んでいないものもあります。
その中でひときわ気になっていた作品が「をんな紋」。
気になりながらも なかなか読めなかったのは
現在(2015年5月)「をんな紋」シリーズが書店・ネット通販では手に入らないから。
新品入手を諦めて、図書館で借りて読むことにしました。
タイトルから、どんな話なのか、自分なりにイメージを膨らませつつ…。

***
物語の舞台は播磨(兵庫県)。
時代は明治末期。
「女子に教育など必要ない、なまじ勉強ができる女は生意気で、
嫁に行って苦労するだけ」とされた時代に
大地主である青倉家の長女 柚喜(ゆき)は、
明石の女子師範学校に通わせてもらっている。
柚喜は妹の佐喜と二人姉妹で、
ゆくゆくは柚喜が婿をとって家督を継ぐことになっており、
縁談のために「無学で可愛い女」でいる必要などないからだ。

柚喜の母・津多は夫を亡くしたあと、
先祖から受け継いだ田畠を減らすどころか
少しずつ増やし続けてきた。
男性と肩を並べて、潰されないように生きていくには
「可愛いだけの女」ではダメなことを誰よりも知っているのだ。
しかし、同時に、いくら頑張っても
女性では相手にもされない場面があることもよくわかっている。
だからこそ、柚喜自身に学を身につけさせたうえで
適当な婿を見つけることが青倉家安泰の道だと信じている。

母の薫陶を受けて、賢いしっかり者に育った柚喜。
同じく教師を目指して師範学校に通っている壮児は
書を読み勉学の話もできる柚喜に好意を抱き、
ストレートに感情をぶつけてくる。
だが、未婚の男女が見つめあったり、
親しく話をしたりすることがはばかられた時代、
柚喜は壮児への想いに戸惑い、気持ちを抑え続ける。
二人の想いは叶うのか…
***

甘い恋愛小説のような紹介文になってしまいました。
ネタバレしないようにと思うと、これしか書きようがなくて…。
実際は、甘くはなく、非常に読み応えのある小説です。

女性が自由に生きられなかった時代に、
ひときわ力強く生きている母・津多と娘の柚喜。
適当な年齢で嫁に出せばいいと、
娘らしく育てられている3歳違いの妹・佐喜。
姉妹の幼馴染であり、親戚でもあるハルは、
早くも嫁に行き、姑問題で苦労をしている…。
性格も立場も違う女性の生き方がしっかりと描かれていて
自分がこの人の立場だったら何を思い、
どう行動するだろう…と考えながら読み進めました。

そして、ヒロインたちを囲む男性たちも、
それぞれ濃く描かれていて面白いです。

当時の農政の問題や、
播州独特の風土や風習が随所に描かれ、
物語を引き締めています。
私は生まれも育ちも兵庫県なので、
登場人物たちの会話のイントネーションなどがわかるし、
景色も眼に浮かぶよう。
とても親しい気持ちで読めました。

ストーリーに関しては、途中から
「多分、こんな結末になるのではないかなぁ」と予想がつき始めます。
結果的に、予想通りの展開にはなるのですが、
そのきっかけは「え?!そんな?!」と驚くような事件。
私の予想を超える出来事でした。

この人たち、この先どうなってしまうんだろう。
どう生きていくんだろう…
最後のページを読み終わった時、そんな気持ちにさせられます。

実はこの小説には「をんな紋 はしりぬける川」
「をんな紋 あふれやまぬ川」という続編があります。
登場人物の縁や、ちょっとした出来事が
あとになって大変な問題に発展し、
私が知りたかった「この先どうなってしまう」のか
「どう生きていくのか」が明かされていきます。

正直に言うと私は「をんな紋 まろびだす川」は序章だと思います。
「はしりぬける川」「あふれやまぬ川」と話が進むほど
面白さは加速し、ページをめくるのを止められませんでした。
文字通り一気読みしてしまうほどの面白さ。
この小説のタイトルにかけていうなら、
最初は穏やかだった川面にしぶきが上がり、
最後はうねりながら海に注いで行ったと、でも例えましょうか。

ちなみに、この作品は第10回山本周五郎賞の候補に挙げられました。
これ一冊だけではなく、あとの二冊と合わせて候補にしてもらえたなら、
間違いなく受賞していただろうに、というのは私の意見です。

「をんな紋 はしりぬける川」の感想は来週に。

池田 千波留
パーソナリティ・ライター

コミュニティエフエムのパーソナリティ、司会、
ナレーション、アナウンス、 そしてライターと、
さまざまな形でいろいろな情報を発信しています。
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