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ノスタルジア食堂 /ノスタルジア喫茶 (イスクラ)

旅愁が少し満たされたかな

ノスタルジア食堂
労働者の在りし日の食卓 東欧旧社会主義国のレシピ63
ノスタルジア喫茶
子どもの頃の懐かしい味 ソヴィエト連邦のおやつ事情&レシピ56
イスクラ(著)
旅行や遠出がしづらい日々が続いています。そういうときほど、異国の地への旅愁がかきたてられます。私も、東欧やロシアに行きたい熱がふつふつわいて仕方がないので、せめてかの地の雰囲気だけでも楽しもうと、せっせと本を読んだり、映像を見たりしています。

今回ご紹介するイスクラさんの『ノスタルジア食堂』『ノスタルジア喫茶』は、東欧や旧ソ連諸国の庶民的な食べ物を紹介する本です。お料理は、イスクラさん自身が現地のレシピを研究して作ったもので、食器もイスクラさんが集めた東ドイツ、ソ連、東欧のものです。

昔懐かし素朴なデザインのお菓子や食品のパッケージや、現地の食堂の写真などもたくさん載っているので、パラパラ見て、コラムを読むだけでも楽しいです。が、ちょうど冬休みなので、本書のレシピを見て、いくつかお料理を作ってみました。この本は、私にも作れそう、作ってみようかなと思わせてくれるのです。

まずは、特別な材料のいらないメニューにトライです。ロシアの食堂で出されるという、ポジャルスキー風魚(サケ)のハンバーグを作りました。シンプルなのにおいしくて、家族にも好評。気をよくして、次にリトアニアのじゃがいもの焼きコロッケにも挑戦しました。こちらも、材料、作り方とも至ってシンプルなのですが、驚くほどおいしい。どちらもリピート決定です! (ブログに試作の様子を載せています)

勢いづいて、『ノスタルジア喫茶』からも、3品にチャレンジしてみました。甘いおやつは、ハルヴァというお菓子の2つのバージョンです。ハルヴァと言えば、米原万里さんの『旅行者の朝食』(この書評欄でも紹介しました)でクローズアップされて以来、注目を集めているお菓子です。

『ノスタルジア喫茶』でも、ハルヴァについてはページを割いて、詳しく紹介しています。それによれば、ハルヴァとは、ユーラシア大陸の広い地域で食され、原料は穀物、砂糖(はちみつ)、水、油脂と香料で作られる、シンプルな甘いお菓子の総称です。プディング状だったり、わたあめのようだったり、積み木のようなカチカチのものもあったりと、地域によって形状や食感のバリエーションがあるのだそうです。

私がリトアニアなどのスーパーで見つけた市販のハルヴァは、油粘土のような見た目で、沖縄のお菓子「ちんすこう」をさらに固く油っぽくしたような食感でしたが、『ノスタルジア喫茶』には、とろとろハルヴァや、「ういろう」のようなハルヴァが紹介されています。そのようなハルヴァがあるとは知りませんでした! これは作らなければと、ねりねりねりねり、慎重に、時間をかけて、作ってみました。

さらに、昼食にもなりそうなアゼルバイジャン発祥の「おやき」も作ってみました。こちらは、巨大なギョウザという感じのお料理です。さて、出来はいかに!? ハルヴァとおやきの試作の詳細もぜひブログでご覧ください!

今回、作ってみた5品は、材料、味付け、調理方法とも特別なものではなく、なんとなく懐かしさを感じる素朴なお味です。そうでありつつ、やはり異国のテイストを感じさせてくれました。旅愁が少し満たされたかな!

本書はどちらも縦15㎝×横21㎝の横長の本で、装丁や紙の質もソ連東欧っぽさを感じさせてくれます。お料理するときにも場所をとらなくていいですよ!

以前にご紹介したシベリカ子さんの『おいしいロシア』の続編『おいしいロシアおかわり』(イースト・プレス 2021年)にも、ロシアやジョージアの食事情やレシピが紹介されています。こちらもおすすめです。
ノスタルジア食堂
労働者の在りし日の食卓 東欧旧社会主義国のレシピ63
イスクラ(著)
(グラフィック社 2020年)
旅行先として注目を集めているロシア、ジョージア、ウズベキスタンを始め、人気の東欧諸国の代表料理を一冊にまとめた初のレシピ本。 出典:amazon

ノスタルジア喫茶
子どもの頃の懐かしい味 ソヴィエト連邦のおやつ事情&レシピ56
イスクラ(著)
(グラフィック社 2020年)
旧ソヴィエト連邦の、市販菓子と家庭のおやつ、そして包み紙。どこか郷愁を覚える在りし日のお菓子の記憶 出典:amazon
profile
橋本 信子
同志社大学嘱託講師/関西大学非常勤講師

同志社大学大学院法学研究科政治学専攻博士課程単位取得退学。同志社大学嘱託講師、関西大学非常勤講師。政治学、ロシア東欧地域研究等を担当。2011~18年度は、大阪商業大学、流通科学大学において、初年次教育、アカデミック・ライティング、読書指導のプログラム開発に従事。共著に『アカデミック・ライティングの基礎』(晃洋書房 2017年)。
BLOG:http://chekosan.exblog.jp/
Facebook:nobuko.hashimoto.566
⇒関西ウーマンインタビュー(アカデミック編)記事はこちら



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