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TED TALKS(クリス・アンダーソン)

大切なのはアイディアを伝える言葉

TED TALKS
スーパープレゼンを学ぶTED公式ガイド
クリス・アンダーソン(著)
NHKで放送中の番組「スーパープレゼンテーション」をご覧になったことはあるでしょうか。カジュアルなスタイルの登壇者が、最新の研究成果や、社会問題への取り組みなどについて、聴衆に語りかけるプレゼンテーション番組です。NHKの番組は、アメリカで始まったTEDというプレゼンテーションイベントから特に優れたものを選んで放送しています。

TEDは、もともとはテクノロジー、エンタテインメント、デザインの3分野を結びつける、年に一度のカンファレンス(集まり)として始まりました。2001年に現在の代表であるアンダーソン氏が運営を引き継いでからは、3分野に限らずあらゆる分野のアイディアを発信する場へと転換しました。

発信の手段も、年一回のカンファレンスにとどまらず、インターネットでの動画配信に踏み切ります。それによって爆発的に視聴者が増えました。2015年には月1億回の再生を数えたそうです。運営は非営利団体が行っていて、登壇者は無料で出演しています。

私が心動かされたのは、最終章の「考察」の部分です。ここでアンダーソン氏がTEDの意義と可能性を熱く語っています。たしかにTEDでは、各分野の選りすぐりのアイディアのエッセンスを凝縮して聞くことができますし、それらは刺激的で聞く者に希望を提供してくれます。

しかし本当に大切なことは、ここで提供されるようなさまざまな知識が、巨大な蜘蛛の巣のようにつながっていることを実感し、以前より物事を深く理解できるようになることだとアンダーソン氏は言います。

またここで提供されるアイディアは、発明とか特許が取れるような新しい技術ばかりではありません。それは登壇者が心の底から大切にしている「なにか」なのです。それを聞き手の心の中にもう一度築き上げるのがTEDの求めるスピーチです。

そのために大切なのはアイディアを伝える言葉です。一貫したテーマを、論理的に、筋立てて、わかりやすい言葉で組み立てることです。そういったスキルは、今以上にこれから絶対に欠かせないものになるとアンダーソン氏は言います。

自分の考え方の一方的な押し付けや、これくらいは当然知っているだろうというような話し方では何も伝わりません。単なる売り込みや自慢話、とりとめもない話、自分が属する組織の話、うまいプレゼンを真似しただけのパフォーマンスなどはNGです。聞いてくれる人たちの時間を奪うだけです。

TEDほどの大規模な場でなくても、学校や職場で、あるいは趣味の会や社会的な活動の場において、自分のアイディアや思いを伝える機会はたくさんあります。そんなとき相手の心に思いを伝えるスキルを本書は教えてくれます。

「信子先生のおすすめの一冊」第一回の書評『LEAN IN』(シェリル・サンドバーグ著)TEDでのスピーチがきっかけで執筆されました。併せてどうぞ。
TED TALKS
クリス・アンダーソン(著)
日経BP社
ケリー・マクゴニガル、ビル・ゲイツ、アル・ゴア、ケン・ロビンソンなどが登場し、 世界中が注目するカンファレンス「TED」 忘れられないプレゼンを生み出す舞台裏とノウハウを TED代表のクリス・アンダーソンが自ら解説する初めての公式ガイド! 出典:amazon
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橋本 信子
同志社大学嘱託講師/関西大学非常勤講師

同志社大学大学院法学研究科政治学専攻博士課程単位取得退学。同志社大学嘱託講師、関西大学非常勤講師。政治学、ロシア東欧地域研究等を担当。2011~18年度は、大阪商業大学、流通科学大学において、初年次教育、アカデミック・ライティング、読書指導のプログラム開発に従事。共著に『アカデミック・ライティングの基礎』(晃洋書房 2017年)。
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⇒関西ウーマンインタビュー(アカデミック編)記事はこちら



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