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ママのスマホになりたい(のぶみ)

「便利」は、はたして美徳なのか。

ママのスマホになりたい
のぶみ(著)
タイトルにドキッとして、思わず手に取った絵本です。

息子のかんたろうが、スマホばっかり見ているママに寂しい思いをぶつける・・・というストーリーです。

絵もかわいくて、子供向きのようですが、これは大人が読むべき絵本だと思います。

正直、ラストシーンでは胸が張り裂けそうになりました。

スマホの便利さは周知のことですが、その危険性については、どこかで見ないようにしている節がありました。

以前、ある方が「子供は社会の宝です」とおっしゃっていたのが深く心に残っています。

利便性の追求は大いに結構ですが、その裏で子供たち、そして大人も被害を受けている事実に目を背けるわけにはいきません。

学生時代、チェロのレッスン中に先生の携帯電話が鳴ったことがありました。先生はすぐに電源を切って言いました。

「これで邪魔者はいなくなったね」

あ、先生は自分に100%集中して教えようとしてくれている。ほっとしたのを覚えています。

その後、集中力が増し、さらに良い学びになりました。

“ずっと見ているよ”という姿勢は、親と子だけに限らず、信頼を深める上で最も大切なことです。

この絵本は、人間関係の根幹である、向き合うことへの問い掛けではないでしょうか。

かんたろうのように、”見てほしいのに、見てくれない・・・”

そこから「愛着障害」という障害を引き起こすらしいのです。

愛着障害 子供時代を引きずる人々
岡田尊司(著)
これは、2011年に発行された本ですが、愛着障害については現在でも広く知られている訳ではないようです。

怖いことや知りたくない…、と思うようなことも書かれていますが、現実に起こっている問題として、事実を直視しなければならないと思います。

教育の現場に身を置くものとして、人間関係の構築は基礎中の基礎です。

無論、子どもに限らず、

“人ときちんと真正面から向き合えていますか?”

そんなメッセージを絵本が投げかけているようです。


「便利」は、はたして美徳なのか。

文明の利器が人間の最も大切な根幹を揺るがしてはいないか。

立ち止まって考えたくなる1冊でした。
ママのスマホになりたい
のぶみ(著)
WAVE出版
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植木 美帆
チェリスト

兵庫県出身。チェリスト。大阪音楽大学音楽学部卒業。同大学教育助手を経てドイツ、ミュンヘンに留学。帰国後は演奏活動と共に、大阪音楽大学音楽院の講師として後進の指導にあたっている。「クラシックをより身近に!」との思いより、自らの言葉で語りかけるコンサートは多くの反響を呼んでいる。
HP:http://www.mihoueki.com
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