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遥かな海路

偉人たちがたどった道程とそのメッセージとは

遥かな海路
―巨大商社・鈴木商店が残したもの
神戸新聞総合出版センター

(本文よりp.14)
かつて「日本にスズキあり」といわれた総合商社、鈴木商店。

神戸港の発展と軌を一にするように明治から大正にかけて驚異的な多角化を遂げた。

昭和初期の金融恐慌で破綻するが、60社を超える企業を育て日本の産業近代化に貢献した。
こんな近くに、日本を代表する商社があったとは知りませんでした。

なぜ“巨大商社”といわれるまでに成長したのでしょう?そして、破たんの原因は何だったのか・・・?

鈴木商店の発展を支えた大きな存在に、番頭の金子直吉がいます。

土佐出身で、貧しく小学校にも通えませんでした。14歳で質屋に雇われ、その後20歳で神戸に渡ります。

質屋時代、客が預け入れた本を読みあさっていた金子が、「孫氏の兵法」を熱読していた、というくだりから、将来、大番頭と呼ばれる素質が見て取れます。

(本文よりp.235-236)
―番頭金子直吉をどう評価する。

「会社をつぶした経営者に日本の社会は厳しい。だから金子を評価しない向きもありますが、そうだろうかと言いたい。世界中に鈴木商店のような企業があっていい」

―というと。

「企業の存在価値とは何か、という問題に行き着きます。日本では『企業よ、永遠たれ』『経営者は雇用を守るべき』といった論調がある。しかし、私は必ずしも同意しません。

企業の価値は人を育てることにある。つまり、会社は人を、特に若者を開花させる機会を提供する場なのです。金子は大勢の人を育てた。そこが経営者として彼のすごいところ」
三品和弘さん(神戸大学大学院教授)
出光興産の創業者、出光佐三を思い出しました。

その著書「人間尊重」で掲げた大家族主義の理念。つまり、社員は家族と同じと考え、人を育てることに力を注ぎました。

企業は利益を生むだけの存在でなく、人を育てる場でもある。

振り返ると、私自身も仕事を通して社会に育ててもらっている実感があります。

しかし、それでは足りないことがある。

以下は、なるほどと納得する指摘です。

(本文よりp.239)
―番頭金子の印象は?

「金子は優れた企業家であったけれども経営者ではなかった。当時のライバル、三井、三菱といった財閥系との決定的な違いです。

『マネー』『キャピタル』の概念に乏しく、情熱的で決断力溢れる傑出した企業家であったけれども、ガバナンス(企業統治力)において欠ける。ま、いつの時代も傑出した挑戦者の宿命かもしれません」
内橋克人さん(経済評論家)
大番頭として鈴木商店を牽引(けんいん)した金子。

圧倒的なリーダーシップで企業を成長へ導いた一方で、経営者としての意識や知識が充分であったのか?

経営をもっと俯瞰できていたら、違う行動がとれたのではないか?

破たんの原因はそのアンバランスさあるのではないかと思いました。

鈴木からのメッセージをどのように受け取るか。今、この本を手にしたことに必然を感じています。

偉人たちがたどった道程を自分の軸に加え、力強く生きたいと思いました。
遥かな海路
―巨大商社・鈴木商店が残したもの
神戸新聞総合出版センター
売上日本一を誇った鈴木商店の成功と失敗に、いま、何を学ぶか。伝説の番頭・金子直吉が率いた幻の総合商社の、波乱の軌跡をたどる。ゆかりの地のガイドも収録。 出典:amazon

植木 美帆
チェリスト

兵庫県出身。チェリスト。大阪音楽大学音楽学部卒業。同大学教育助手を経てドイツ、ミュンヘンに留学。帰国後は演奏活動と共に、大阪音楽大学音楽院の講師として後進の指導にあたっている。「クラシックをより身近に!」との思いより、自らの言葉で語りかけるコンサートは多くの反響を呼んでいる。
HP:http://www.mihoueki.com
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