昔話法廷(今井雅子)
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![]() こんな昔話でもなかなか答えを出せない 昔話法廷
NHKEテレ「昔話法廷」制作班, 今井 雅子 私がパーソナリティを担当している大阪府箕面市のコミュニティFMみのおエフエムの「デイライトタッキー」。その中の「図書館だより」では週に一度、箕面市立図書館の司書さんが選んだ本をご紹介しています。
今回ご紹介するのは 今井雅子さんの『昔話法廷』。 有名な昔話の主人公が法廷に呼び出され、裁判員裁判にかけられるという面白い設定です。 例えば第一章『三匹のこぶた』裁判の場合、被告は三男(トン三郎)。オオカミを殺した殺人罪に問われています。 実際の裁判と同じように、検察側、弁護側による主尋問、反対尋問が行われます。 証人席に立つのはオオカミの母や、こぶたの長男トン一郎。裁判員は、そのやりとりをしっかりと聞き、被告の顔色もチェックしなくてはいけません。 最終弁論ののち、評議へ。これは正当防衛だと判断する裁判員もいれば、こぶたによる計画殺人であると判断する裁判員も。 さぁ、評決は?! 実はですね、このお話には結論はないのです。 「え?!ここで終わり?!」 私としては、判決や量刑がどうなるかにとても興味があったのに、これじゃあ消化不良だ!欲求不満だ!と、ジタバタしちゃいました。 でもね、この本の成り立ちを知ると、納得できました。この本はNHK Eテレの教育番組をまとめたものだったのですよ。ドラマというよりは学校教材。 ホームページには「きょうざい」と「先生向け」のタブがあり、先生向けをクリックしてみると、授業プランやワークシート、指導用資料までプリントアウトできるように用意されているのです。(ご参考に→『三匹のこぶた』裁判 先生向けページ) 要するに、物語としての結論が大事なのではなくて、子どもたち一人一人が自分で考えて結論を出すことが大事という観点で作られているのですね。その結論がみんな一緒である必要はないのでしょう。 私はてっきり昔話をベースにした現代小説だと思っていたので落とし所がなく、読後モヤモヤしておりますが、教材としては素晴らしいと思いました。 ちなみにこの本に収められている三つの裁判、『三匹のこぶた』裁判、『カチカチ山』裁判、『白雪姫』裁判は2015年の夏に放送されたもの。 2016年12月には新たに『アリとキリギリス』裁判、『舌切りすずめ』裁判、『浦島太郎』裁判が放送されたようなので、書籍でも続編が出るのではないかと思います。 それにしても…… 実際に裁判員に選ばれた時、きちんと判断できるか不安になってきました。だって、こんな昔話の法廷でもなかなか答えを出せないのですから……。 昔話法廷
NHKEテレ「昔話法廷」制作班, 今井 雅子 金の星社 これから不思議な裁判が始まろうとしている。被告人は、オオカミを殺してしまった『三匹のこぶた』の末のこぶた。おばあさんの敵討ちのためにタヌキを殺そうとした『カチカチ山』のウサギ。そして、嫉妬をつのらせて美しい姫を毒殺しようとした『白雪姫』の王妃。昔話の登場人物たちを、現代の法律で裁く「昔話法廷」開廷! 出典:楽天 ![]() ![]() 池田 千波留
パーソナリティ・ライター コミュニティエフエムのパーソナリティ、司会、ナレーション、アナウンス、 そしてライターとさまざまな形でいろいろな情報を発信しています。 BROG:「茶々吉24時ー着物と歌劇とわんにゃんとー」 パーソナリティ千波留の『読書ダイアリー』 |
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