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ハムレット(シェイクスピア)

「人間」をこれほど強烈に感じたことはない

ハムレット
ウィリアム シェイクスピア (著)
誰もが知っているシェイクスピア(1564-1616)ですが、手に取ることは少ないのではないでしょうか。

自身も「知ったつもり」でいた一人です。

ハムレットは芝居の台本として書かれた戯曲です。

そしてそこから、数々の名言が生まれました。

現代に語り継がれる、その魅力を探ります。

デンマークの王子ハムレットは父である王の急死に嘆き悲しみます。

心から尊敬していた偉大な父。

毒蛇にかまれて死ぬ、と言うあっけない最後を受けとめられないハムレット。

さらに、時間をおかず叔父(デンマーク王の弟)が母親と結婚し、王位を継承してしまいます。

(本文より)
ハムレット「葬式の温かい焼肉が、冷めればすぐにそのまま婚礼の冷肉に役立つというわけさ」
悲しみと混乱のなか、ある夜、父の亡霊があらわれます。

天使か悪魔か…!

恐れおののくハムレット。

そして亡霊となった父の口から、衝撃の事実を聞かされます。

(本文より)
亡霊「聞いてくれ、ハムレット。父の死因につき言いふらされし故意の流言、デンマーク中がそれにだまされ、誰ひとり疑うものもない。庭で午睡の夢を楽しみおりしきそのとき、毒蛇(どくじゃ)に嚙まれて死んだと。そのとおり、そして父を嚙(か)み殺したその毒蛇が、現在、頭に王冠をいただいておるわ。」

ハムレット「う、思ったとおりか!やはり、あの叔父が!」

亡霊「畜生にも劣る人非人。不義といおうか、その生れついたる邪智奸佞(じゃちかんねい)、女を惑わす才にたけ、手練手管(てれんてくだ)を弄(ろう)して、操ただしき妃(きさき)をたぶらかし、恥ずべき邪淫(じゃいん)の床に誘った。ハムレット、なんという裏切りか!…」
どうか恨みをはらしてくれ…、と大地に消える父。

その言葉を胸に深くきざみ復讐を誓うハムレット。

父を殺し、母を奪い、王位までも我がものにした叔父。

亡霊の「声」は嘘か誠か…?

ハムレットは気が狂ったふりをしながら復讐を思案します。

名言の「生か、死か、それが疑問だ。」は、悶々と葛藤するハムレットのセリフです。

狂気に触れた恋人のオフィーリアはいつわりとは気がつかず、苦しみ、正気を失い、溺死してしまいます。

一方、不穏な空気を感じた叔父はハムレットを抹殺しようとたくらみます。

復讐に燃えながら何もできず、時間だけが過ぎ、恋人も、王も、母も、ハムレットまでもが悲劇の波に飲みこまれます。

シェイクスピア四大悲劇のハムレット。

「人間」をこれほど強烈に感じたことはなかったかもしれません。

この人間劇に入り込むうちに、チャイコフスキーの音楽が浮かび離れなくなりました。

ロシアを代表する作曲家、チャイコフスキー(1840-1893)は「白鳥の湖」や「くるみ割り人形」「眠れる森の美女」などのバレエ音楽を生み出したことでも有名です。

その音楽はロマンティックで濃厚。

シェイクスピアの戯曲に基づいた作品も、「ロメオとジュリエット」「テンペスト」、そして「ハムレット」と3曲書いています。

これらを聴くと、チャイコフスキーがどれほどシェイクスピアに響いていたかがうかがえます。

シェイクスピアを読むとチャイコフスキーが浮かび、チャイコフスキーを聴くとシェイクスピアを感じる。

2014年、シェイクスピアは生誕450年を迎えました。核心をついたドラマ、一言一句たいせつに読みたい本です。

お薦めCDはベネズエラ・シモン・ボリバル交響楽団×ドゥダメル指揮 チャイコフスキー&シェイクスピア

今回の執筆がきっかけで出合ったCD。

1981 年ベネズエラに生まれた 新進気鋭の指揮者ドゥダメルの情熱あふれる一枚です!
チャイコフスキー&シェイクスピア
ベネズエラ・シモン・ボリバル交響楽団×ドゥダメル指揮
ハムレット
ウィリアム シェイクスピア (著)
福田 恒存 (翻訳)
新潮社
城に現われた父王の亡霊から、その死因が叔父の計略によるものであるという事実を告げられたデンマークの王子ハムレットは、固い復讐を誓う。道徳的で内向的な彼は、日夜狂気を装い懐疑の憂悶に悩みつつ、ついに復讐を遂げるが自らも毒刃に倒れる―。恋人の変貌に狂死する美しいオフィーリアとの悲恋を織りこみ、数々の名セリフを残したシェイクスピア悲劇の最高傑作である。 出典:amazon
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植木 美帆
チェリスト

兵庫県出身。チェリスト。大阪音楽大学音楽学部卒業。同大学教育助手を経てドイツ、ミュンヘンに留学。帰国後は演奏活動と共に、大阪音楽大学音楽院の講師として後進の指導にあたっている。「クラシックをより身近に!」との思いより、自らの言葉で語りかけるコンサートは多くの反響を呼んでいる。
Ave Maria
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