HOME  Review一覧 前のページへ戻る

ローマから日本が見える (塩野 七生)

なぜ今、「古代ローマ」なのか

ローマから日本が見える
塩野 七生(著)
「歴史とは人間である」と著者は語ります。

歴史をたどれば、そこにどんな人間が生き、何を考え、どう行動したかが見える。

そしてその歩みが歴史になる。

学校の授業では、史実がずらりと並ぶだけでその面白さに気がつきませんでした。

歴史=人間

目から鱗が落ちる思いです。

なぜ今、「古代ローマ」なのか

これは、第1章のタイトルにもなっています。

(第1章本文より)
「『ローマ人くらい面白い人たち、素敵な人たちはいなかったから』と答えるしかない。

…ローマが千年以上にわたって続いたのは、けっして運がよかったからでもないし、彼らの資質が特別に優れていたからでもありません。

ただ、彼らには自分たちのありのままの姿を直視し、それを改善していこうという気概があった。だからこそ、ローマの繁栄はあれほど長続きしたのです。」
ありのままの姿を確認し、視野を広げる『水平思考』。

その上で歴史を振り返り、同じ苦境をどのように乗り越えたかをリサーチする『垂直思考』。

古代ローマをこの一冊では書ききることはできない、としながらも要点を絞りわかりやすい内容となっています。

では、ローマを代表する英雄はだれでしょう?

「ブルータス、お前もか」で有名なガイウス・ユリウス・カエサル(B.C.100年頃-B.C.44年)が紹介されます。(英名はジュリアス・シーザー)

『指導者に求められる五つの素質』

① 知力
② 説得力
③ 肉体上の耐久力
④ 自己制御能力
⑤ 持続する意思

これは、イタリアの教科書に載っているそうです。

そして、この全てにおいて100点満点は「ローマ史上、唯一の創造的天才」と言わしめたカエサルなのです。

千年に一人の逸材。どんな人物だったのか興味がわきます。

カエサルは、現実を直視し抜本的な改革をしました。

それは、リーダーとして当たり前かもしれません。

ですが、「見たい現実は見るけれども、見たくない現実は見ないのが人間ではないか。」と著者は続けます。

最終章(第9章)ローマから日本が見える、にその見解が記されます。

「なぜ日本にリーダーは登場しないのか」

「日本の混迷は、ここに始まる」

なかなか辛口な意見もあり、ドキッとします。

でもそこには、著者・塩野七生のローマに対する情熱と、母国を愛する熱い気持ちが感じられます。

さて、ローマを読みながら聴こえてくるのは…

交響詩「ローマの松」、これしかありません。

イタリア人作曲家、レスピーギ(1879-1936)が書きました。

あまり耳にしない名前かと思いますが、この曲はオーケストラコンサートでも人気の作品です。

「松」を自然と見立て、この松が見てきた古代ローマを音楽に表現しました。

標題があるので、「交響曲」ではなく、「交響詩」と言います。

この曲は4つの部分から成りますが、最後にあたる第4部、『アッピア街道の松』は、「松」が静かに見守るなか、勝利をおさめ凱旋する古代ローマ人が勇ましく街道を進む音楽です。

足音がリズムとなり、初めは遠くから小さな音で、そしてだんだん大きくなり、輝かしい勝利を手にローマに帰ってくる様子が音楽に表現されます。

まさにその頃の空気や精神が描かれ、映像となって見える。そんな曲です。

きっと、古代ローマの人々を感じられることでしょう。

ローマから日本が見える。

まずは、今まで知らなかったローマに触れてみてはいかがでしょうか。
レスピーギ:ローマ三部作
トスカニーニ
ローマから日本が見える
塩野 七生(著)
集英社
資源も富もない、小さな都市国家ローマは「衆知を集める」という共和政の利点をフルに活用することによって、地中海世界を制覇する。しかし、勝者となったローマも「制度疲労」だけは避けることができなかった。この危機を乗り越えるべく、不世出の指導者カエサルが採った帝国方式とは―国家盛衰の法則を探りつつ、今日の日本を考える著者渾身の一冊。 出典:amazon
profile
植木 美帆
チェリスト

兵庫県出身。チェリスト。大阪音楽大学音楽学部卒業。同大学教育助手を経てドイツ、ミュンヘンに留学。帰国後は演奏活動と共に、大阪音楽大学音楽院の講師として後進の指導にあたっている。「クラシックをより身近に!」との思いより、自らの言葉で語りかけるコンサートは多くの反響を呼んでいる。
Ave Maria
Favorite Cello Collection

チェリスト植木美帆のファーストアルバム。 クラッシックの名曲からジャズのスタンダードナンバーまで全10曲を収録。 深く響くチェロの音色がひとつの物語を紡ぎ出す。 これまでにないジャンルの枠を超えた魅力あふれる1枚。 ⇒Amazon
HP:http://www.mihoueki.com
BLOG:http://ameblo.jp/uekimiho/
⇒PROページ
⇒関西ウーマンインタビュー記事



@kansaiwoman

参加者募集中
イベント&セミナー一覧
関西ウーマンたちの
コラム一覧
BookReview
千波留の本棚
チェリスト植木美帆の
[心に響く本]
橋本信子先生の
[おすすめの一冊]
絵本専門士 谷津いくこの
[大人も楽しめる洋書の絵本]
小さな絵本屋さんRiRE
[女性におすすめの絵本]
手紙を書こう!
『おてがみぃと』
本好きトークの会
『ブックカフェ』
絵本好きトークの会
『絵本カフェ』
手紙の小箱
海外暮らしの関西ウーマン(メキシコ)
海外暮らしの関西ウーマン(台湾)
海外暮らしの関西ウーマン(イタリア)
関西の企業で働く
「キャリア女性インタビュー」
関西ウーマンインタビュー
(社会事業家編)
関西ウーマンインタビュー
(ドクター編)
関西ウーマンインタビュー
(女性経営者編)
関西ウーマンインタビュー
(アカデミック編)
関西ウーマンインタビュー
(女性士業編)
関西ウーマンインタビュー
(農業編)
関西ウーマンインタビュー
(アーティスト編)
関西ウーマンインタビュー
(美術・芸術編)
関西ウーマンインタビュー
(ものづくり職人編)
関西ウーマンインタビュー
(クリエイター編)
関西ウーマンインタビュー
(女性起業家編)
関西ウーマンインタビュー
(作家編)
関西ウーマンインタビュー
(リトルプレス発行人編)
関西ウーマンインタビュー
(寺社仏閣編)
関西ウーマンインタビュー
(スポーツ編)
関西ウーマンインタビュー
(学芸員編)
先輩ウーマンインタビュー
お教室&レッスン
先生インタビュー
「私のサロン」
オーナーインタビュー
「私のお店」
オーナーインタビュー
なかむらのり子の
関西の舞台芸術を彩る女性たち
なかむらのり子の
関西マスコミ・広報女史インタビュー
中村純の出会った
関西出版界に生きる女性たち
中島未月の
関西・祈りをめぐる物語
まえだ真悠子の
関西のウェディング業界で輝く女性たち
シネマカフェ
知りたかった健康のお話
『こころカラダ茶論』
取材&執筆にチャレンジ
「わたし企画」募集
関西女性のブログ
最新記事一覧
instagram
facebook
関西ウーマン
PRO検索

■ご利用ガイド




HOME