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藤田 由布
産婦人科専門医 レディースクリニック サンタクルス ザ シンサイバシ

婦人科医が言いたいこと 医療・ヘルシーライフ 2025-05-29
「低用量ピル」ってなに? その⑤ 〜ピルは、いつ服用開始したらよいか?〜

ピルの内服開始(はじめてピルを使用する人へ)
はじめてピルを内服する人は、月経開始5日目以内に服用を開始します。

月経開始直後から内服する理由は、卵胞(卵子が入っている袋状の組織)が10mm以内の場合は排卵することがないからです。

つまり、排卵前に内服を開始するとしっかり避妊効果をもたせるためです。また、生理中にピルを内服開始した方が飲み始めの不正出血が少ないからです。

月経が終わってから数日後に内服を開始すると、すでに卵胞が大きくなってしまっています。

つまり、卵胞発育が進行してから低用量ピルの服用を開始しても排卵が抑制できないことが示されています。※1)
月経周期5日目を過ぎて低用量ピルを開始した場合は、追加の避妊法を用いるか、7日間は性交を避けましょう。
飲み忘れの対応法
低用量ピルの添付文書に記載がある通り、飲み忘れた場合は、翌日までに気付いた際はただちに飲み忘れた錠剤を服用し、その日の錠剤も通常通り服用します。

2日以上連続して飲み忘れた場合は、服用をいったん中止し次の月経を待って内服を再開します。

飲み忘れにより避妊できず妊娠する可能性が高くなるので、その周期は他の避妊方法を使用するなどの対応を忘れないように。
飲み始めの副作用
低用量ピルを初回に内服する場合、はじめの1〜2週間は嘔気や悪心を感じる場合があり、このときは制吐剤で対応するのが良いです。

2週間以上持続する嘔気、不快感、浮腫、胸の張りなどの症状が著明な場合は、低用量ピルの種類を変更するなどの考慮も必要です。

また、2週間以上の不正性器出血の持続や、経血量の増加など月経トラブルを認める場合は婦人科を受診するよう予め伝えておくのが良いです。

安心安全にピルの服用を継続するため、定期的な超音波や採血検査で副作用がないことを確認し、性交経験がある場合は子宮頸がん検査(頸部細胞診)も施行することが大事です。
避妊はどうするべきか?
様々な避妊方法の中から、その使用者にとって適切な避妊法の選択を医師がきちんと提示することが重要です。

医療者側は「確実に」「簡便で」「副作用なく」そして「女性の意思だけで実施可能であるか」を総合的に判断することが求められます。

女性が安全で満ち足りた性生活を営むことができ、子どもをもつかもたないか、いつもつのかを決める自由を行使し、そのための情報と手段を得ることができるというリプロダクティブ・ヘルス&ライツをもつことを女性自身も実感することもとても重要です。

これには、女性が安全に妊娠・出産を享受でき、またカップルが健康な子どもを持てる最善の機会を得られるような適切なヘルスケア・サービスを利用できる権利も含まれます。※2)※3)
女性の皆さんは、ピルについて分からないことがあれば、遠慮なく医療者になんでも質問してくだいね!

生理は我慢する時代ではありません。 世界はとっくに、女性自ら生理をコントロールする時代です。

その6「見逃してはいけないピルの副作用」へ続く
【参考文献】
※1)Baerwald AR. Olatunbosun OA. Pierson RA: Effects of oral contraceptives administered at defined stages of ovarian follicular development. Fertil Steril 2006: 86:27-35
※2)日本産婦人科学会/日本女性医学学会 OC・LEPガイドライン2020年度版
※3)Rinehart W. Rudy S. Drennan M: GATHER guide to counseling Popul Rep J 1998: 48: 1-31 (Guideline)
profile
全国で展開する「婦人科漫談セミナー」は100回を超えました。生理痛は我慢しないでほしいこと、更年期障害は保険適応でいろんな安価な治療が存在すること、婦人科がん検診のこと、HPVワクチンのこと、婦人科のカーテンの向こう側のこと、女性の健康にとって大事なこと&役に立つことを中心にお伝えします。
藤田 由布
産婦人科専門医
レディースクリニック サンタクルス ザ シンサイバシ 院長

大学でメディア制作を学び、青年海外協力隊でアフリカのニジェールへ赴任。1997年からギニアワームという寄生虫感染症の活動でアフリカ未開の奥地などで約10年間活動。猿を肩に乗せて馬で通勤し、猿とはハウサ語で会話し、一夫多妻制のアフリカの文化で青春時代を過ごした。

飼っていた愛犬が狂犬病にかかり、仲良かったはずの飼っていた猿に最後はガブっと噛まれるフィナーレで日本に帰国し、アメリカ財団やJICA専門家などの仕事を経て、37歳でようやくヨーロッパで医師となり、日本でも医師免許を取得し、ようやく日本定住。日本人で一番ハウサ語を操ることができますが、日本でハウサ語が役に立ったことはまだ一度もない。

女性が安心してかかれる婦人科を常に意識して女性の健康を守りたい、単純に本気で強く思っています。

⇒藤田由布さんのインタビュー記事はこちら
FB:https://www.facebook.com/fujitayu
レディースクリニック サンタクルス ザ シンサイバシ
〒542-0085 大阪府大阪市中央区心斎橋1-8-3 心斎橋パルコ10F
TEL:06-6253-1188(代表)
https://shinsaibashi.santacruz.or.jp/

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