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あみ りょうこ
版画家 ninjacco

AMIのAMIGO アート・芸術 2020-10-19
Vol.29 赤緑白、の巻

オラー、こんにちは。あみりょうこです。ここのところ、毎日澄んだ青い空が気持ちいいですね。日本の秋。素晴らしい!としみじみと季節を感じています。

私が住んでいたオアハカでは季節は四季というよりも、乾期と雨期に分けられるという感じでした。乾期が1年の半分、そのもう半分が雨期、という具合です。雨期と言っても日本の梅雨のようにしとしとと一日中雨が降っているわけではありません。
昼間は晴れの時が多く、夕方になると雲行きが怪しくなり道路が冠水してしまうほどの激しい雨が降ります。そして昼間の熱気やほこりを洗い流してクールダウンするというのを毎日繰り返す感じです。
その雨期が終わるのが、死者の日の少し手前、そうちょうどいまくらいの季節、10月くらいでした。

その時の空の色は本当に突き抜けるように真っ青で澄んでいたので、町を歩いていても思わずあゆみを止めて見上げてしまうことがよくありました。日本の秋の空もそれに似た感じがします。(ただし、色の濃さはオアハカのものは日本のものよりもずっとずっと濃いのです。)
そんなノスタルジーな気持ちになるのも秋ならでは、という感じでしょうか。先月は、つい食欲に負けて食べ物の話を書いてしまいましたが、9月と言えばメヒコでは独立記念日があるので結構「ビバメヒコ!(メキシコ万歳!)」色の濃い1か月です。

日本には独立記念日というものがないので、スポーツの日本代表戦が盛り上がっている以外は、あんまり「われらが日本、イエイ!」という雰囲気を感じるときはありませんが、メヒコに住んでいると、結構それを感じると思う瞬間がありました。

政治や社会問題のことなどにはうんざりしているメヒコ人たちですが、自分たちの国や自分たちの文化に誇りを持っているという愛国心をとても感じます。
特に9月は独立記念日があるので、”El mes de la patria”(私たちの国の1か月)と称されてお祝いムードのなか、「ビバメヒコ」感はいつもよりさらに高いです。

独立記念日は9月16日なのですが、9月のはじまりと同時に町を歩いていても急に「メヒコ感」が増すのが感じられます。
まずは、町やお店の飾りつけです。メヒコの国旗は「赤・緑・白」が基調とされているのですが、町全体がそのような色合いになってきます。

路上にも、メヒコグッズ売りが出現します。メヒコの路上グッズ売りを見ることで季節を感じられたりするので面白いです。

メヒコ国旗の色合いになってきたら9月というわけです。どの屋台も一緒のものを売っているのかと思いきや、微妙にラインアップが違うので面白いです。
わかりやすいメヒコの国旗やメヒコのステレオタイプのイメージを具現化したような帽子は目を引くところですが、近づいてみるとこまごましたグッズが目立ちます。

ピンバッヂ、付け髭、髪留め、ネックレスなど、など。冷静になればどれも「別にいらん」というわけで担ってしまうのですが、町全体が盛り上がったムードになっていると「なんかいる気がしてきた」という具合に購買意欲をそそられるのも不思議なもんです。

そしてやはり、楽しみと言えば季節ならではの食べ物です。独立記念日月間にレストランで一番よく見かけるのは、Chiles en nogada(チレスエンノガダ)というメニューです。

大きなチリ(辛くないもの)の中にいろいろな具材が詰め込まれてあり、その上に白いクルミの入ったソースとザクロの実がかかっています。チリ=緑、ソース=白、ザクロ=赤とメヒコの国旗を表しているので、この季節に好んで食べられるようです。
オアハカで働いていたスペイン語の語学学校のクッキングクラスでも、この季節になるとこのチレスエノガダを作っていました。

完成図からはどんな料理か想像しにくいと思うので、つくる工程の写真を……。↓
中身は、肉や野菜などを炒めたピカディージョというものがぎっしりと詰め込まれています。
学校でつくられていたものは、天ぷらのように衣をつけて揚げられていました。こうしてみるとChiles relleno(チレスレジェノ)という料理のようですね。

チレスレジェノは、大きなチレの中にチーズや鶏肉などを詰めて揚げられたもので、道端の屋台や食堂で必ず見かける定番のメヒコ料理です!
チレスエンノガダは、レストランによっても結構味が異なります。お雑煮が地域や家庭によって味が違う、みたいなことなのでしょうか……?このクルミ入りのソースが結構特徴的な味なので、初めて口にしたときは他の料理にたとえようがないような感じで好きなのか嫌いなのかよくわからなかったのですが、食べすすめるうちに癖になる味なので私はすごく好きなメヒコ料理の一つです。

レストランで食べた上品な味もおいしかったですが、ワークショップでつくられていたパティ先生のレシピのチレスエンノガダもめちゃくちゃおいしかったのを覚えています。

もしかすると観光客に向けて過剰に「9月の食べ物!!」感をあおられているのかもしれませんが……。

その証拠に、友人の家では「ポソレ」というスープをごちそうになったことがあります。ポソレにも、コーン(この場合はポソレ用の大きなもちもちしたタイプのコーン)=白、スープ、赤カブ=赤、キャベツ、オレガノ=緑、という国旗の色要素が……。

もはや何でもありなのかもしれませんが、おいしいものを楽しくいただくというのはいいことですね。

また旅行ができるようになってメヒコにいけるようになった暁には、あるいはお近くにメヒコ料理屋さんを発見した際にはぜひともこれらのメヒコ料理を楽しんでみてください。

食べ物の思い出というのは、人を饒舌にしますね。今、傍から見たらにやにやしながらキーボードをたたいている怪しい人になっているに違いありません。食欲の秋です。

それでは、また次回!Hasta luego!
works
【今月の作品】
あたたかい飲み物のおいしい季節になりましたね。
profile
あみ りょうこ
版画家

1982年大阪生まれ、兵庫育ち。メキシコのオアハカ州での暮らしを経て、2020年から日本に。 ものつくりが好きで、オアハカで版画に出会い制作を続けている。
HP:https://amiryoko.wordpress.com/
instagram:ninjacco
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