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藤田 由布
産婦人科医 レディースクリニック サンタクルス ザ シンサイバシ

婦人科医が言いたいこと 医療・ヘルシーライフ 2025-02-06
妊娠初期の「つわり」の対処方法

悪阻(つわり)がひどくて、なにを食べても吐いてしまう。

妊娠初期のツラいつわり、経験した人も多いでしょう。

結論からいうと、つわりは妊娠16週ぐらいで治ります。

ずっと続くものではないので心配しないでください。

つわりで苦しい時期は、食べては吐く・飲んでも吐く、の繰り返しは仕方ないのですが、好きものを何回かに分けて口にするように工夫してみてください。あと、水分だけでも摂るように心がけてください。

ここで大事なのは、水も受け付けない状態が2日以上続く場合は必ず主治医に相談してください。

点滴などで水分やビタミンを補給し、体の中の栄養バランスを補正することで、身体も気持ちもラクになることが多いです。
5大栄養素を知ろう
毎日の食事で大事なことは、必要なエネルギー量の範囲内で、しっかり栄養のバランスをとることです。

栄養の基本となるのが、以下の5大栄養素です。

1.炭水化物
2.タンパク質
3.資質
4.ミネラル
5.ビタミン
栄養バランスをしっかりとるのは、それほど難しいことではありません。お勧めの組み合わせとしては、お米などの主食と、肉・魚・豆腐などの主菜と野菜たっぷりの副菜をくみわせた献立です。

1日の摂取エネルギーの半分強を炭水化物で摂るようにすると、体脂肪の蓄積を減少させ、肥満を防止することにもつながります。

ご飯やパン、芋などの主食は炭水化物の重要な供給源であり、食物繊維も豊富です。食物繊維には、整腸作用や血糖値抑制といった働きがあり、便秘になりやすい妊娠中には積極的に摂取してほしいです。

また、妊娠中は赤ちゃんの発育のために、普段より多めにタンパク質が必要になります。卵、魚、肉、牛乳、乳製品、大豆製品などの良質なタンパク質をいろいろと組み合わせて食べましょう。

なるべく多くの種類を組み合わせ、朝・昼・版の3食しっかり主食もとって、少しずつ食べることを心がけてみてください。

ここで一息、妊娠中Q&Aコーナー


Q:妊娠に気付くまで毎日栄養ドリンクを飲んでいましたが、これって大丈夫でしょうか?

A:栄養ドリンクは300種類ほどあるようですが、どれも成分はビタミン類が中心で、アミノ酸、生薬、ローヤルゼリーなどが入っているものもあります。カフェインやアルコールが含まれている栄養剤も多いです。

カフェインやアルコールの覚醒作用が活力剤の作用であるかのごとく含有されていますが、栄養というより覚醒ドリンクといった方が正しいかも。

また砂糖もたくさん入っています。栄養ドリンクには小さじ5杯くらいの砂糖(約15g)が含まれていますが、成人の1日の砂糖摂取量が25gなので、栄養ドリンクは妊娠母体にとってはあまり良いものではありません。今後、飲まないようにすれば心配ありません。
葉酸不足は「神経管閉鎖障害」のリスク
葉酸の1日必要摂取量は、妊娠初期で240μg、妊娠中期以降は480μgです。
葉酸はビタミンBの仲間で血液を作ったり、タンパク質の代謝を助ける働きをしています。妊娠中は血液がたくさん作られるので多くの葉酸が必要となります。

妊娠初期に葉酸が必要になるのは、葉酸不足が胎児の神経管閉鎖障害のリスクが高まるためです。葉酸に関しては、妊娠前の妊活の時点から摂取を心がけるのが大事です。

葉酸はほうれん草などの緑黄色野菜や果物、大豆、レバーなどに多く含まれています。
葉酸サプリは妊娠する1カ月以上前から摂取する必要があります
葉酸は、妊娠する前からの摂取が大事です。

葉酸の摂取が推奨されているのは、妊娠する1ヶ月以上前から妊娠3ヶ月までの期間と言われています。

特に大事な時期は、胎児の神経管閉鎖障害のリスクが低減される「妊活時〜妊娠14週まで」の時期とも言われています。

食事からは「1日240µg」の葉酸にくわえて、サプリメントなどから「1日400µg」の葉酸摂取を推奨しています。

葉酸には、おなかの中の赤ちゃんの細胞分裂を促進する作用のほかに、ビタミンB12とともに赤血球の形成を助ける働きがあります。
妊娠中は母体の血液量は1.5倍くらい増えるし、ママの体から血液を通じて赤ちゃんに栄養や酸素を送り込むため、貧血になるママも多いです。

葉酸は血液を作り出す働きを助けるので、貧血予防のためにも赤ちゃんがどんどん大きくなる妊娠中期から後期にも、実は葉酸が欠かせないのです。

葉酸とはビタミンB群の一種で、妊娠期においてとても大切な栄養素ですが、その重要性は妊娠期だけではなく、近年では、動脈硬化や脳梗塞など、様々な病気の予防にも欠かせない栄養素であることが分かってきました。

自分の体のことですから、普段から栄養バランスを考えて食事やサプリメントをバランスよく摂取することが大事ですね。
profile
全国で展開する「婦人科漫談セミナー」は100回を超えました。生理痛は我慢しないでほしいこと、更年期障害は保険適応でいろんな安価な治療が存在すること、婦人科がん検診のこと、HPVワクチンのこと、婦人科のカーテンの向こう側のこと、女性の健康にとって大事なこと&役に立つことを中心にお伝えします。
藤田 由布
産婦人科医
レディースクリニック サンタクルス ザ シンサイバシ 院長

大学でメディア制作を学び、青年海外協力隊でアフリカのニジェールへ赴任。1997年からギニアワームという寄生虫感染症の活動でアフリカ未開の奥地などで約10年間活動。猿を肩に乗せて馬で通勤し、猿とはハウサ語で会話し、一夫多妻制のアフリカの文化で青春時代を過ごした。

飼っていた愛犬が狂犬病にかかり、仲良かったはずの飼っていた猿に最後はガブっと噛まれるフィナーレで日本に帰国し、アメリカ財団やJICA専門家などの仕事を経て、37歳でようやくヨーロッパで医師となり、日本でも医師免許を取得し、ようやく日本定住。日本人で一番ハウサ語を操ることができますが、日本でハウサ語が役に立ったことはまだ一度もない。

女性が安心してかかれる婦人科を常に意識して女性の健康を守りたい、単純に本気で強く思っています。

⇒藤田由布さんのインタビュー記事はこちら
FB:https://www.facebook.com/fujitayu
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