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バックスター ルミ
バイリンガルライフコーチ RumiBaxter

丁寧に生きるという選択 ライフスタイル 2023-05-10
志を美しく照らす

長かったゴールデンウイークも、ここ大阪では激しい雨と共に去って行きましたが、今週は色々な休暇の思い出と共に日常に戻られた方も多いのではないでしょうか。私は遠出をすることもなく、普段の日常とあまり変わりなく過ごした日々が続きました。映像で見る限りではありますが、数年ぶりの旅行ブームとなった今年、主要駅や各地での混雑の様子はびっくりするほどに見受けられます。

旅行に出かけられた方々も多かったでしょうが、皆さんは休暇中、どんな風景に出会われましたか。そして、どんな風景の映像が心に残っていますか。それらは見るからに派手でないかもしれません。思いがけないフッとした一瞬に見た光景かもしれません。

私自身、近年は旅行らしい旅行にも行っていませんが、私は風景画が大好きで、中でも好きな作家の風景画の前では、時に時間をも忘れてしまいます。まるでその場を知っているような懐かしい気持ちにさせてくれる風景から、そこに行きたくなるような、誘い込まれるような風景とさまざまですが、感動するような美しい風景画に出会うと、画家はその風景を目で見て描いたのではなく、心で感じ、それを風景を通して表現しているのだろうな、と思うことがあります。

見たもの、そこに感じる心が重ねてあるからこそ、それに心が共感して震え、美しく見える風景があるのだと思うのです。また、心が嬉しい時は見るもの全てが美しく見えるとも言われていますが、では心が嬉しくない時に見るものは、その全てが綺麗でないかというと必ずしもそうでもないのです。

日本を代表する風景画家の一人、東山魁夷の代表作品のひとつである「残照」(1947) は、題名から察するに、夕焼けの時間帯の山々に差す残照の風景なのでしょうが、私にはこの風景の中の光が、早朝の、今から辺りを照らしていく「始まりの照らし」に感じて仕方がないのです。この大作を初めて見た時から、大きな感動と共に、そこには安らぎと強さ、そして希望にあふれる、日の出直後の明るくなっていく「これから」をずっと感じていました。

1940年父を亡くし、1945年母、そして弟を次々と亡くし、終戦と共に1人残され、打ちひしがれ、絶望的になっていた東山魁夷自身が千葉県鹿野山の山頂から、一刻一刻変わっていく山と光の光景に出会い、自然の美しさに涙したそうです。そこに、心に残っていた風景、肥後平野、そびえる阿蘇の威厳を感じた様を重ねて完成させたのが、画家として生きる志を誓う転機ともなった「残照」なのだそうです。

このように目で見て、心で感じた風景こそが、画家の創造性を駆り立てるのでしょうし、観るものに深い感動を与えてくれるのでしょう。画家自身と自然現象との一瞬の出会い、そしてその作品と鑑賞する者との出会い、それらの「重なり合い」はやはり一期一会なのでしょうし、それは旅の中で遭遇する一期一会に似ているのかもしれません。そんな出会いを経験するために私たちは旅に出るのでしょうか。
profile
私たちが「生きる」中で、たくさんの選択をしています。 その選択は、意識したものから無意識に選んでいるもの、とるに足らない小さな選択から人生の岐路に立たされた大きな選択まで、その種類も様々。「丁寧に生きる選択」というライフスタイルは、未来へのキーワードでもあります。
バックスター ルミ
バイリンガルライフコーチ

心理カウンセラーのバックグラウンドをいかし、英会話講師として「コミニケーションレッスン」を展開中。 半生を英国、ヨーロッパのライフスタイルに関わってきたことから、それらの経験をもとに独自のレッスンを提供している。「五感+plus」を使ってコミュニケーション能力を磨くレッスンは、本格的英国サロンで行われている。
RumiBaxter
BROG:http://ameblo.jp/rumi-b/

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