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藤田 由布
婦人科医 レディース&ARTクリニック サンタクルス ザ ウメダ

婦人科医が言いたいこと 医療・ヘルシーライフ 2023-08-24
妊娠中は、2人分食べないといけないの?〜妊婦さんの食事と栄養 その2〜

つわりは、16週くらいまでです
つわりがひどくて、食べていても吐いてしまう。妊娠初期のつらいつわり、経験した人も多いでしょう。

結論からいうと、つわりは妊娠16週ぐらいで治ります。ずっと続くものではないので心配しないでください。

つわりで苦しい時期は、食べては吐く、の繰り返しも仕方ないのですが、好きものを何回かに分けて口にするように工夫してみてください。水分だけでも摂るように心がけてください。

ここで大事なのは、水も受け付けない状態が3日以上続く場合は必ず主治医に相談してください。点滴などで水分やビタミンを補給し、体の中の栄養バランスを補正することで、身体も気持ちもラクになることが多いです。
5大栄養素を知ろう
毎日の食事で大事なことは、必要なエネルギー量の範囲内で、しっかり栄養のバランスをとることです。

栄養の基本となるのが、以下の5大栄養素です。
栄養バランスをしっかりとるのは、それほど難しいことではありません。お勧めの組み合わせとしては、お米などの主食と、肉・魚・豆腐などの主菜と野菜たっぷりの副菜をくみわせた献立です。

1日の摂取エネルギーの半分強を炭水化物で摂るようにすると、体脂肪の蓄積を減少させ、肥満を防止することにもつながります。

ご飯やパン、芋などの主食は炭水化物の重要な供給源であり、食物繊維も豊富です。

食物繊維には、整腸作用や血糖値抑制といった働きがあり、便秘になりやすい妊娠中には積極的に摂取してほしいです。

また、妊娠中は赤ちゃんの発育のために、普段より多めにタンパク質が必要になります。

卵、魚、肉、牛乳、乳製品、大豆製品などの良質なタンパク質をいろいろと組み合わせて食べましょう。

なるべく多くの種類を組み合わせ、朝・昼・版の3食しっかり主食もとって、少しずつ食べることを心がけてみてください。

ここで一息、妊娠中Q&Aコーナー その③


Q:妊娠に気付くまで毎日栄養ドリンクを飲んでいましたが、これって大丈夫でしょうか?

A:栄養ドリンクは300種類ほどあるようですが、どれも成分はビタミン類が中心で、アミノ酸、生薬、ローヤルゼリーなどが入っているものもあります。カフェインやアルコールが含まれている栄養剤も多いです。

カフェインやアルコールの覚醒作用が活力剤の作用であるかのごとく含有されていますが、栄養というより覚醒ドリンクといった方が正しいかも。また砂糖もたくさん入っています。栄養ドリンクには小さじ5杯くらいの砂糖(約15g)が含まれていますが、成人の1日の砂糖摂取量が25gなので、栄養ドリンクは妊娠母体にとってはあまり良いものではありません。

今後、飲まないようにすれば心配ありません。
葉酸不足は「神経管閉鎖障害」のリスク
葉酸の1日必要摂取量は、妊娠初期で240μg、妊娠中期以降は480μgです。
葉酸はビタミンBの仲間で血液を作ったり、タンパク質の代謝を助ける働きをしています。妊娠中は血液がたくさん作られるので多くの葉酸が必要となります。

妊娠初期に葉酸が必要になるのは、葉酸不足が胎児の神経管閉鎖障害のリスクが高まるためです。葉酸に関しては、妊娠前の妊活の時点から摂取を心がけるのが大事です。

葉酸はほうれん草などの緑黄色野菜や果物、大豆、レバーなどに多く含まれています。
コーヒーは何杯まで飲んでいいのでしょうか?
まあ、何杯飲んでも赤ちゃんにはそれほど影響はありません。ただし、動物実験の結果を人間に当てはめた場合、もし1日に30杯のコーヒーを飲んだら、赤ちゃんに悪影響を及ぼす可能性がある、と報告があります。

また、妊娠中に1日3〜4杯のコーヒーを毎日毎日飲み続けると、赤ちゃんの体重が小さくなるようです。これは、コーヒーに含まれるカフェインが原因なのです。

カフェインは、コーヒーだけでなく、紅茶やウーロン茶にも含まれています。

カフェインは飲みすぎると不眠、不安、動悸の原因となることもあるので、コーヒー好きの妊婦さんは、薄めのコーヒーを1日1〜2杯くらいにしておきましょう。
塩分は控えめに
塩分を摂りすぎると、血圧が高くなったり、尿にタンパクが出たり、むくみが強くなったりする妊娠高血圧症候群という病気になりやすくなります。

その結果、お腹の赤ちゃんの発育が悪くなったり、最悪の場合にはお腹の赤ちゃんが脂肪することもあります。

また、分娩後も高血圧やタンパク尿が続いてしまうこともあります。食塩の摂取量は1日6.5g以下が目標です。

普段から、薄味の塩分控えめを心がけましょう。
乳製品をとりすぎると、赤ちゃんがアトピーになるって本当?
牛乳とアトピーの関連をときどき耳にすることがありますが、実はアトピーの原因については未だハッキリいた定説はありません。

乳製品をたくさん食べたお母さんから生まれた赤ちゃんにアトピー性皮膚炎が多いことが明らかになっているわけではありません。

アトピーを心配して妊娠中に乳製品を控えるように、と指導する動きもありますが、赤ちゃんの栄養を考えるうえでは、乳製品を全く控えるというのも問題があります。乳製品はタンパク質やカルシウムが豊富なので、食事に取り入れる方が良いです。
魚介類に蓄積した水銀が気になる?!
妊婦は魚や海藻を食べない方が良いのか、と聞かれることが多いです。

確かに魚介に含まれる水銀がお腹の赤ちゃんの神経系に与える影響が指摘された論文もありますが、注意が必要なのは、マグロ・カジキ・キンメダイなどの一部の大型魚やクジラ類に限られます。

これら以外の魚介類に含まれる水銀量はごくわずかなので、食べても赤ちゃんへの影響は心配する必要ありません。

海藻や魚介に含まれるヨウ素の過剰摂取は注意しなければなりません。ヨウ素を多く摂りすぎると甲状腺機能障害のリスクも指摘されていますが、これも神経質になる必要はありません。

昆布などを毎日毎日たくさん食べるといったことを控える程度でよいです。

過剰摂取を気にして心配するよりかは、たくさんの種類のものをバランスよく食べることが何よりも大事です。

あまり難しく考えないで

妊娠中の栄養に関しては、最低限のことを押さえておけば、あまり心配する必要はありません。神経質になりすぎる方が良くないです。

栄養バランスの基本は次のことを頭の隅に置いておけば大丈夫です。

1日3食規則正しく食事する
主食、主菜、副菜を献立の基本に野菜をたっぷりと
いろんな食品を取り入れる
薄味を心がける

そしてなにより大事なのは、妊娠生活を毎日楽しく健やかに過ごすこと。
参照:公共社団法人 日本産婦人科医会 妊娠中の食事と栄養2021年版
profile
全国で展開する「婦人科漫談セミナー」は100回を超えました。生理痛は我慢しないでほしいこと、更年期障害は保険適応でいろんな安価な治療が存在すること、婦人科がん検診のこと、HPVワクチンのこと、婦人科のカーテンの向こう側のこと、女性の健康にとって大事なこと&役に立つことを中心にお伝えします。
藤田 由布
婦人科医

大学でメディア制作を学び、青年海外協力隊でアフリカのニジェールへ赴任。1997年からギニアワームという寄生虫感染症の活動でアフリカ未開の奥地などで約10年間活動。猿を肩に乗せて馬で通勤し、猿とはハウサ語で会話し、一夫多妻制のアフリカの文化で青春時代を過ごした。

飼っていた愛犬が狂犬病にかかり、仲良かったはずの飼っていた猿に最後はガブっと噛まれるフィナーレで日本に帰国し、アメリカ財団やJICA専門家などの仕事を経て、37歳でようやくヨーロッパで医師となり、日本でも医師免許を取得し、ようやく日本定住。日本人で一番ハウサ語を操ることができますが、日本でハウサ語が役に立ったことはまだ一度もない。

女性が安心してかかれる婦人科を常に意識して女性の健康を守りたい、単純に本気で強く思っています。

⇒藤田由布さんのインタビュー記事はこちら
FB:https://www.facebook.com/fujitayu
レディース&ARTクリニック サンタクルス ザ ウメダ 副院長
〒530-0013 大阪府大阪市北区茶屋町8-26 NU茶屋町プラス3F
TEL:06-6374-1188(代表)
https://umeda.santacruz.or.jp/

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