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藤田 由布
婦人科医 レディース&ARTクリニック サンタクルス ザ ウメダ

婦人科医が言いたいこと 医療・ヘルシーライフ 2022-11-03
【婦人科漫談セミナー】講演会でよく聞かれる質問〜かんたん解説〜その④

私は2021年から「婦人科漫談セミナー」と題して女性の健康の啓発活動で、全国津々浦々、講演会をして巡っています。

芸人のウーマンラッシュアワー村本大輔氏のおかげで、全国のオモシロ愉快な仲間と繋がることができ、講演の機会が増えました。また、おもしろく喋る技術についても学ばせてもらいました。

村本氏のスタンダップコメディは、歯に衣着せない忖度なしの漫談で、日本のマスメディアでは削除されるような「言っちゃいけない」内容だったりします。

しかし、言っちゃいけないことって、たいてい正しいことです。

では今回も、婦人科漫談セミナーで過去にうけた質問を紹介していきます。
【質問】
印象的だった患者さんはいらっしゃいますか?
【回答】
一人だけ忘れられない患者さんがいます。性暴力被害に遭って、私の婦人科に現れた17歳の子です。風俗勤務だったその患者との出来事は、コラムに書いています。

※奈良の民宿に呼ばれても婦人科漫談セミナー講演に出向きます
【質問】
なぜ男の子には生理がないのですか?
【回答】
ほほう、これは「なぜ女の子に勃起するペニスがないのか」と同等の質問なのですが、面白い質問ですね。

子宮内膜が増殖して、妊娠に至らない場合には、その増殖した内膜がベリベリっとはがれて生理が起こるというのは、人類子孫繁栄になぜ必要なのかは神秘の世界かもしれません。

※看護学校での講演会ではたくさん質問でました
【質問】
どんな場合に男性も乳がんになるのですか。
【回答】
これは、とても興味深い質問です。

遺伝子異常や放射線被曝なども考えられますが、男性乳がんが起こる明確な発生機序はまだはっきりとは解明されていません。

わかっていることといえば、肝臓の病気や、内分泌疾患も関与していることです。性染色体が多いクラインフェルター症候群も関与しています。

要するに、エストロゲン(女性ホルモン)が過剰に分泌してしまう状態が関与していることも考えられます。

※ウーマンラッシュアワー村本氏が繋げてくれたご縁で広島県のハチドリ舎にて2回講演会をさせてもらいました。
【質問】
私は男性学生です。彼女に子宮頸がんワクチンをもう接種したのか聞きたいと思うのですが、いきなり聞いてもいいことなのでしょうか。あまりこのような会話をしないので相手にとって失礼なことではないのか、軽い感じで聞くと無神経だと思われないでしょうか。
【回答】
すごく良い質問です。子宮頸がんワクチンについて聞いたり話したりすることは失礼ではありません。

欧米諸国では学校で全員が学ぶ内容です。むしろ、HPVワクチンについて知らないのは日本人だけです。

※どんな組合からもオファーを受けます笑
【質問】
男性がパートナーのためにピルを受け取る事は可能でしょうか。
【回答】
クリニックでは当事者本人への診療が大原則ですので、第三者に処方することは不可能です。
【質問】
婦人科の敷居は今までよりも低くなってきているのでしょうか?
【回答】
とても良い質問ですが、同時に難しい質問です。巷の女性の意見をきいていると、一概には「敷居低くなった」とは、まだ言えないかもしれません。言っちゃいけないことを言ってしまう私は、こうやって日本社会からは干されるのでしょうね笑
ご参考までに以下のコラムを。
女性医師が増えると、婦人科診療はもっと変わる
【質問】
HPVワクチンの接種率を上げるために男性ができることは、自分が接種すること以外にも何かあるでしょうか。個人的には「性感染症などの知識があり、対策できる男がモテる」という文化を作ることだと考えました。男性は子宮頸がんのワクチンを打つ以外、どうすれば子宮頸がんのウィルスを女性にうつるのを防止できますか?
【回答】
「性感染症などの知識があり、対策できる男がモテるという文化を作ること」、これはとても興味深い発想ですね。

まずは、子宮頸がんのこと、ヒトパピローマウィルスのことを知って理解することが大事ですよね。

子宮頸がんの原因はヒトパピローマウィルスで、これは殆ど性交渉でしかうつりません。ワクチンが広く普及しているオーストラリアなどでは、子宮頸がんは撲滅可能な疾患と明記されるとまでになりました。

なのに、日本では

毎年、約3万人が子宮頚がんを宣告され (上皮内癌含む)、
毎年、約1万2千人が子宮頚がんで手術を受け、
毎年、約3千人が子宮頚がんで死亡しています。

このように、子宮頸がんは、日本人女性にとっては、異様に身近な「癌」なのです。

※当直の夜に看護師さん達とオモシロ写真撮影会をした時のものです
事実、日本の子宮頚がんワクチン接種率は0.1%以下。

妻が子宮頸がんを発症したら、それは夫がうつしたウィルスのせいかもしれません。酷です。

このHPVウイルスに感染してから頸がんが発症するまでは、数年〜十数年と言われています。

逆算したら、必ずしも夫がうつしたウィルスのせいかどうかは定かではありませんが、やはり、男性にしてみたら耳を塞ぎたくなる事実だと思います。

子宮頸がんの診断をご夫婦で聞きに来られる際、やはり結構気を遣います。

そりゃそうですよね、貴方の愛する妻を子宮頸がんにしたのは、貴方の持っていたウィルスのせいかも知れませんから。

男性が子宮頸がんワクチンを打ったら、男性自身の肛門癌や咽頭癌も予防できます。それと、貴方の愛するパートナーを子宮頸がんから守ることも出来るのです。

主体的に自分で考えて行動にうつせる男性が増えることを願ってやみません。

婦人科外来では、毎日のように子宮頸がん検査に異常結果となって怯えて不安に押しつぶされそうな女性がやってきます。

不安で泣いてしまう女性もいます。

私も人間です。こんな悲しい顔をした女性を毎日見ていたら、自分の患者を懸命に守りたい、と思うのは当然の心境です。

※いつもそばで応援してくれる看護師さん、感謝です。
キャリアについての質問
【質問】
どのように多言語で医学を学ばれたのですか?一すぐに読んだり書けたりできた状態だったのですか?
【回答】
言語を学ぶのは、若い方が吸収が早いです。

言語を使って仕事をすると、いやでも、喋らないと仕事にならないので、喋れるようになります。つまり、目的がはっきりしていると語学の習得は早いです。

語学留学よりもワーキングホリデーの方が、きっとたくさん喋れるようになると思います。
【質問】
医者になって、医学部でない関西大学を卒業していてよかったと思う点があれば知りたいです。
【回答】
私は、医学部に入る前に、一般の大学に通っていました。

私は関西大学の総合情報学部1期生です。25年以上前の、あの当時に学んだメディア制作論はもう思い出せません。インターネットが世に出始めた頃です。ビデオだってVHSでした。パソコンだって50万円くらいでドデカいヘッドのマッキントッシュでフロッピーデスクを使っていました。1994年の携帯電話は、今となってはもう博物館に保存しても良いレベルのレトロなものです。懐かしいです。

関西大学で学んだことは、医学の勉強には全く関連しませんでしたが、大学で出会った仲間との繋がりが今の自分に活かされています。

事実、関西大学の仲間が、今、日本全国の大学で教授や講師となって大活躍しています。そんな仲間から大学での婦人科漫談セミナーの機会をいただいています。ありがたい。。。

あと、関西大学の出身者は全国にいるので、年齢は違っても「関大卒」という同窓意識は何かと役に立ったかもしれません。

※加工した盛り盛りの写真です笑
【質問】
藤田先生は、途上国など海外で悲惨な現場をたくさん見てきたそうですが、その中でも特に印象に残った出来事は何ですか?
【回答】
飢餓で死んでいく子供を目の前にした時は無力感に陥り辛かったです。 悲惨な現状を見て、何もできない自分の無力感が最も辛いかな、と今振り返って思います。 紙面に書いて悲惨な現状を描写するのは、なかなか難しいですね。
【質問】
私も将来は海外で色々な経験をしたいと思っているのですが、藤田さんのその活動のエネルギーがどのように生まれたのかがすごく気になりました。
【回答】
良くも悪くも、強い「思い込み」かと思います笑。

また、私の短所でもあり長所でもある強い思い込みもプラスに働いているのかもしれません。

ひとの夢は単純で純粋なほうがいい。

思い込みが強ければ強いほど、ひとを動かす力も強いです。

また、どんな人生にも何らかの「縛り」や「制限」があるけど、むしろこの制限の中で学ぶ事が多いと思います。

回り道をすることで、違った世界を見て、人生に楽しみやゆとりが増えることもあるので、いろんな人生を楽しめるのがいいですね。
profile
全国で展開する「婦人科漫談セミナー」は100回を超えました。生理痛は我慢しないでほしいこと、更年期障害は保険適応でいろんな安価な治療が存在すること、婦人科がん検診のこと、HPVワクチンのこと、婦人科のカーテンの向こう側のこと、女性の健康にとって大事なこと&役に立つことを中心にお伝えします。
藤田 由布
婦人科医

大学でメディア制作を学び、青年海外協力隊でアフリカのニジェールへ赴任。1997年からギニアワームという寄生虫感染症の活動でアフリカ未開の奥地などで約10年間活動。猿を肩に乗せて馬で通勤し、猿とはハウサ語で会話し、一夫多妻制のアフリカの文化で青春時代を過ごした。

飼っていた愛犬が狂犬病にかかり、仲良かったはずの飼っていた猿に最後はガブっと噛まれるフィナーレで日本に帰国し、アメリカ財団やJICA専門家などの仕事を経て、37歳でようやくヨーロッパで医師となり、日本でも医師免許を取得し、ようやく日本定住。日本人で一番ハウサ語を操ることができますが、日本でハウサ語が役に立ったことはまだ一度もない。

女性が安心してかかれる婦人科を常に意識して女性の健康を守りたい、単純に本気で強く思っています。

⇒藤田由布さんのインタビュー記事はこちら
FB:https://www.facebook.com/fujitayu
レディース&ARTクリニック サンタクルス ザ ウメダ 副院長
〒530-0013 大阪府大阪市北区茶屋町8-26 NU茶屋町プラス3F
TEL:06-6374-1188(代表)
https://umeda.santacruz.or.jp/

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