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藤田 由布
婦人科医 レディース&ARTクリニック サンタクルス ザ ウメダ

婦人科医が言いたいこと 医療・ヘルシーライフ 2021-08-04
子宮頸がんワクチン、高校1年生の娘さんがいらっしゃる方、3回とも無料で定期接種するためには9月中に1回目接種を!

子宮頸がんワクチンを定期接種(無料)で接種できる期限がせまっています。ワクチンは3回セットです。9月末までに1回目を接種すると、全3回とも無料になります。

高校2年生から自費接種となり、1回2万円前後かかります(これでもクリニックは赤字です)。
【命を守る予防接種です】
私は、昨年までクリニックの婦人科外来で、2年間で4000名以上の子宮頚癌の細胞診を施行していました。子宮頸癌は日本では明らかに急増しています。海外の国々では、HPVワクチン接種率が8割以上で、子宮頸癌は撲滅可能な癌として周知されるようになりました。

世界で日本だけが、子宮頚がんの罹患率が増加しており、若い女性が毎年3千人命を落とし、1万人が頚がんで子宮全摘手術を受けています。この事実を目の前にし、私たち医師は諦めずに声を上げなければなりません。

日本国内において最近明らかになっできているのが、ワクチン接種した21〜26歳の女子たち(94〜99年生まれ)は殆ど検査で異常所見になりにくいということ。子宮頸癌ワクチンが絶大な効果を呈している事実を肌で実感しています。

日本で毎年数百万回も施行される「コルポスコピー生検」、これがいかに酷い精密検査かを世の男性は知らないと思います。

ペニスの先を米粒大チョン切るのと同じ、子宮頸部を血塗れに切り取るのが、コルポスコピー検査です。これを私は毎日、女性たちにずっと声掛けして励ましながら毎日やってます。

子宮頸癌の患者を毎日診ていると、はらわた煮え繰り返りそうになりますが、ぐっと堪えながら患者に話しつづけます。科学に基づいた知見を発信するのも医師として当然の仕事です。

世界の77カ国では、男性もちゃんとHPVワクチンを打ってます。24カ国では公費で男性にもワクチン接種しています。

妻が子宮頚がんになったら、夫がうつしたウィルスのせい。こんな酷い癌が他にあるでしょうか。

ヒトパピローマウイルスの潜伏期間は三年〜十数年。一度の性交渉でも感染するリスクがあり、実際、日本人女性の8割以上が生涯に一度は感染しています。

性風俗に従事される女性に子宮頸癌が多いわけではありません。一人の少女が大人になって家族を築く過程で既に子宮頚がんのリスクを負うのです。

大切な妻そしてパートナーを守るためでもあるHPVワクチンをちゃんと男女平等に普及している国々では、子宮頚がんは撲滅寸前です。

しかし、日本では百万人以上が、流血と痛みを伴うあの酷いコルポスコピー検査を強いられるわけです。私一人だけでも年間100件以上行っています。

コロナ禍で年間1000人の死亡がある中で、ヒトパピローマウィルスは、若い女性を毎年3千人死なせて、毎年1万人の子宮を全摘しています。

わたしたち産婦人科医は、いつまで子宮を延々と掘り続けなければならないのでしょうか。日本だけです、子宮頚がんが急増しているのは。

私は臨床現場で子宮頸がんワクチンの有効性を痛いほど実感しています。だから声が枯れるまで、語り続けるのです。

あのむごい、流血と痛みを伴うコルポスコピー生検をしている婦人科医なら、女性の痛みをイヤと言うほど毎日感じているはずです。

私達は、1979年に天然痘という疫病がワクチンによって撲滅達成したことを思い出すべきです。

人類が疫病に「撲滅達成」として打ち勝った症例は、天然痘だけです。ちなみに第二例目の撲滅達成は、ギニアワーム感染症です。これも、ヒトの既存の免疫力だけではどうにもならなかったのです。

私はアフリカの奥地で10年間この病と闘い、いかに人間の免疫力だけでは太刀打ちできなかったか痛感しながら仕事をしてきました。

人間には知恵で戦うべき疫病がまだありそうです。

ここで、副作用について、これが一番気にかかることだとおもいます。

産婦人科医や小児科医の多くが、メディアの報道の仕方には大きな過ちがあったという認識です。医師を生業とする者の大多数が子宮頸がんワクチンの積極推奨の再開を望んでいると言っても過言ではありません。

ワクチンの「副反応」とされた痙攣などを含む15個の症状は、ワクチン打ってない同年代女子にも出現している「よくある思春期の病」として多くの報告があります。

ワクチン打つ前から、元々、思春期の少女に多い病気の存在が、今回のワクチン騒動で「身体表現性障害」として顕在化した、というわけなのです。

ここで大事なのは、思春期の女子を対象にした初めてのワクチンということもあって、身体表現性障害の事も同時にもっと理解されるべきだったのかもしれません。

命を守る働きかけを、今辞めるわけには行きません。これは、婦人科医だけの活動であってはなりません。保護者の方も行政に訴えて大きな壁を動かさなくてはならないのです。

なぜ私がこれほどまでワクチン接種を叫ぶのか。

それは、子宮頸がんの患者を毎日診て、毎日女性の悲鳴を聞きながら、ワクチンの予防効果を嫌というほど目の前で見てるからです。

毎日診察している婦人科医が証人です。

ワクチンは安全です。ただし、どんなワクチンであっても数十万件〜数百万件に一例の割合で程度は違いますが何らかの健康被害があるともいわれています。一方、日本国内では女性の74人に1人の割合で子宮頸がんに罹患するというリスクと隣り合わせで生きています。親御さんもこの事実を踏まえて、子宮頸がんワクチンの接種について考えていただきたいです。

御一読くださりありがとうございます。
profile
全国で展開する「婦人科漫談セミナー」は100回を超えました。生理痛は我慢しないでほしいこと、更年期障害は保険適応でいろんな安価な治療が存在すること、婦人科がん検診のこと、HPVワクチンのこと、婦人科のカーテンの向こう側のこと、女性の健康にとって大事なこと&役に立つことを中心にお伝えします。
藤田 由布
婦人科医

大学でメディア制作を学び、青年海外協力隊でアフリカのニジェールへ赴任。1997年からギニアワームという寄生虫感染症の活動でアフリカ未開の奥地などで約10年間活動。猿を肩に乗せて馬で通勤し、猿とはハウサ語で会話し、一夫多妻制のアフリカの文化で青春時代を過ごした。

飼っていた愛犬が狂犬病にかかり、仲良かったはずの飼っていた猿に最後はガブっと噛まれるフィナーレで日本に帰国し、アメリカ財団やJICA専門家などの仕事を経て、37歳でようやくヨーロッパで医師となり、日本でも医師免許を取得し、ようやく日本定住。日本人で一番ハウサ語を操ることができますが、日本でハウサ語が役に立ったことはまだ一度もない。

女性が安心してかかれる婦人科を常に意識して女性の健康を守りたい、単純に本気で強く思っています。

⇒藤田由布さんのインタビュー記事はこちら
FB:https://www.facebook.com/fujitayu
レディース&ARTクリニック サンタクルス ザ ウメダ 副院長
〒530-0013 大阪府大阪市北区茶屋町8-26 NU茶屋町プラス3F
TEL:06-6374-1188(代表)
https://umeda.santacruz.or.jp/

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