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藤田 由布
婦人科医 レディース&ARTクリニック サンタクルス ザ ウメダ

婦人科医が言いたいこと 医療・ヘルシーライフ 2020-08-27
婦人科のカーテンの向こう側…

婦人科ってなんか敷居が高い、何をされるか分からない・・・このように思う方も少なくないと思います。

また、過去に婦人科で嫌な経験をされた方も少なくありません。心無い言葉をかけられた、股を開けたまま長時間放置された、など、もう二度と婦人科なんか行くか!と憤慨される方もいらっしゃいます。

無理もありません。痛いほど理解できます。残念ながら、デリカシーに欠ける婦人科は未だに存在しています。

婦人科ほどプライベートを曝け出す場所は無いでしょう。ましてや男性の医師となると身構えてしまうのは、女性としては当然のことです。

気軽に婦人科なんか行けるもんか! ・・・という気持ち、ごもっともです。だからこそ、私たち婦人科医が、もっと現場で努力しなくてはならないのです。

そこで今回は、婦人科のバックヤードを丸ごとお見せしようと思い立ちました。そうです、婦人科内診室のカーテンの向こう側はどうなってんの?を解明いたします。
自動でうごく診察台
婦人科といえば、独特の内診台ですよね。

私たち婦人科医にとっては、この診察台はあまりにも馴れ親しみ過ぎるものなので違和感なく操作するのですが、婦人科を初めて訪れる人にとっては摩訶不思議な椅子かもしれませんよね。

しかし、これはもう、完全に椅子に身を任せて、最大限に力を抜いて、背中にもたれかかってドーンと構えて、昼寝をするがごとく座っちゃってください。

ゆっくりと動いて自動的に両足が開いていきます。股関節や腰などに支障がある場合は、前もって仰って下さると最小限の開脚ですむように調節します。

これらの写真は、カーテンを省略して撮影したものですが、普段は目の前にカーテンがあります。

つまり患者さんからは目の前はカーテンのみ。海外ではカーテンや仕切りさえない国も多くありますが、日本では殆どの婦人科ではカーテンが付いています。

医師側からは、こんな風になっています。
カーテンの向こう側からは両足と股しか見えていません。

こちら側で処置をする時は、軽く中腰の態勢になります。超音波の際は部屋を暗くするので、モニター以外は何も見えていません。

カーテンの向こう側で何か物音がすると、ええええ、何の音?って思ってしまいますよね。カーテンで区切られているからこそ、見えない恐怖があると思います。
だから、婦人科ではカーテンの向こう側は患者さんに配慮して、なるべく物音を立てずにそっと動作しているのです。

カチカチと音がすると、それはこの道具です。
「クスコ」という器械で、腟鏡のことです。子宮の出口(=子宮頸部)を見やすくし、子宮頸がんの検査や腟の中のトラブルを診察するときに使います。

クスコはアヒルのくちばしのような形をしていて、腟の壁を押しのけて奥の奥の方までちゃんと見えるようにします。

このクスコのくちばしの部分が、カチカチと音がするのです。

婦人科で使う超音波(エコー)は、経腟が多いです。
経腟超音波では、子宮と卵巣の詳細がしっかり診ることができます。

たとえば、子宮筋腫の大きさ、内膜の状態、卵巣腫瘍の性質や大きさ、内膜症の状態など、その他骨盤内のトラブルを詳細にみることができます。
妊婦健診を受けていらっしゃった方は2週間おきに超音波をしていたかと思います。胎児や胎盤は、お腹の上からの経腹超音波が見やすいのですが、子宮頸管は経腟超音波でしかみることが出来ません。

気になるのが、腟に挿入するプローブとよばれる細長い棒状のセンサーの太さです。
大人の手の親指ぐらいの太さです。足の親指ほど太くはありません。殆どの人は腟に挿入しても痛みを感じることは無いので、ご安心くださいませ。

あと、毎回きれいに磨いて上から新しい薄手カバーを装着しているので、衛生面も問題ありません。

ここで大事なのは、性交渉の経験がない女性の方には、この超音波を腟に挿入しないということです。この超音波を肛門から挿入して使う場合があります。

親指くらいの太さなので、肛門から挿入しても痛みを感じることは殆どありません。ただ、少し違和感はあります。

性交渉の経験がない方にとっては、内診や経腟超音波はとても恐ろしく感じることだと思います。それは当然ですし、人間として当たり前の反応ですし、決して恥ずかしいことではありません。

最近の婦人科の診察室は、個々の事情やニーズに合わせるよう配慮していますので、どうか安心してご来院下さい。

子宮頸がんの精密検査は、コルポスコピー検査といいます。
コルポスコピーとは子宮頸部を拡大してみるカメラのことで、これを使って行う検査がコルポスコピー検査です。子宮頸部拡大鏡診ともいいます。

子宮頸がん検査で「精密検査が必要」といわれた場合は、このコルポスコピーで子宮頸部を診察します。

子宮頸部に、がんができやすい部位(移行帯)というのがあり、そこに3%酢酸溶液を塗ると、異常部分が白くなり観察しやすくなります。
白い異常部分が観察できると、このハサミ状の生検鉗子とよばれる器械で、異常部位の3mmほどの組織片をパチンと切り取り採取します。小さな爪切りのような器械です。痛みを伴うことがありますが、一瞬チクッとする感じです。

処置の後に出血がある場合は、ナプキンを用意している婦人科が多いです。

一番よく使う検査道具
検査キットで一番よく触れるのは、やはり子宮頸がんの定期検査で使うブラシです。上記のコルポスコピーの精密検査と違って、殆ど痛みは感じないです。

これは「子宮頸部細胞診」といって、このブラシを腟から挿入し、子宮頸部をシャカシャカシャカと擦って細胞を採取するのです。

このブラシの先はとても柔らかくフニャフニャなので、何も感じない人も多く、「え?もう終わったの?」って言われることが多いです(笑)。

そういえば、婦人科診察室のバックヤードを見渡したら、まだまだ道具がありました。またの機会に、残りの器具を紹介したいと思います。
profile
全国で展開する「婦人科漫談セミナー」は100回を超えました。生理痛は我慢しないでほしいこと、更年期障害は保険適応でいろんな安価な治療が存在すること、婦人科がん検診のこと、HPVワクチンのこと、婦人科のカーテンの向こう側のこと、女性の健康にとって大事なこと&役に立つことを中心にお伝えします。
藤田 由布
婦人科医

大学でメディア制作を学び、青年海外協力隊でアフリカのニジェールへ赴任。1997年からギニアワームという寄生虫感染症の活動でアフリカ未開の奥地などで約10年間活動。猿を肩に乗せて馬で通勤し、猿とはハウサ語で会話し、一夫多妻制のアフリカの文化で青春時代を過ごした。

飼っていた愛犬が狂犬病にかかり、仲良かったはずの飼っていた猿に最後はガブっと噛まれるフィナーレで日本に帰国し、アメリカ財団やJICA専門家などの仕事を経て、37歳でようやくヨーロッパで医師となり、日本でも医師免許を取得し、ようやく日本定住。日本人で一番ハウサ語を操ることができますが、日本でハウサ語が役に立ったことはまだ一度もない。

女性が安心してかかれる婦人科を常に意識して女性の健康を守りたい、単純に本気で強く思っています。

⇒藤田由布さんのインタビュー記事はこちら
FB:https://www.facebook.com/fujitayu
レディース&ARTクリニック サンタクルス ザ ウメダ 副院長
〒530-0013 大阪府大阪市北区茶屋町8-26 NU茶屋町プラス3F
TEL:06-6374-1188(代表)
https://umeda.santacruz.or.jp/

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