関西で働く女性のライフスタイルマガジン［関西ウーマン］

いつもなら穏やかな美しい桜の季節だったでしょう。そして、いつもなら新しい制服に身を包んだ新入生達が希望に胸を膨らます季節だったでしょう。

今世界中を脅かせているパンデミックは映画や小説の中の話だったはずです。

この一ヶ月あまりで世界は大きく変わってしまいました。これを書いている今、日本の明日もどうなっているかわからない、と言っても大袈裟でない状況です。

世界各国で外出規制が課され、都市が封鎖され、イギリスでも2020年3月23日に全面的に外出規制が出されました。

開かれた国境を目指したグローバリゼーションのピークにみる、世界中の国境封鎖という現象にアイロニーを感じざるを得ません。

このような非常事態の中、多くの人が精神的に厳しい状況で生活を強いられてることを思うといろいろなことが頭をよぎります。

どれだけその厳しさに伴う痛みを共感できるか、それはその人の経験と想像力によるところが多いとあらためて感じます。

そして自己責任という概念はもう通用しないのです。

「見えない敵」であるウイルスをもし自分が持っていたとしたら、それを相手に移さないためには何をして、何をしないのか、という想像力を持った行動をとる責任が求められているからです。

想像力とは、自分の行動が次に起こすかもしれない先の先のインパクトまで読めることです。

今、自分だけが責任をとればいいというレベルを超えて、コミニティーの、そして国家の未来を作るために一人一人の行動の全てが問われ、そして意味があるんだと警告されているようです。

「見えない敵」には意思はありません。意図も無いのです。その見えない敵は、私たち一人ひとりの行動を通じて広がっていく(もしくは広がらず収束するか)だけなのですから。媒体となる体がなければ広がることすらできません。

意図も意思も持たない敵にこれだけ多くの人々の命が犠牲になる事はただただ驚くばかりです。

各々の行動を考える時、ここでも想像力が問われます。

重い症状に苦しんでいる方々、その御家族、リスクと闘いながら彼らを救おうとしている人々がいることに想像を及ばすことができれば、私たちの意識は変わり、行動も変わるでしょう。

ヴォランティアに応募している方々の想像力のエネルギーは大きな力となってコミュニティを救うはずです。

この非常事態の最中、もはや以前と同じ価値観は存在しない様な気がします。

それは「大切な物」は何かについて考える時間がたくさん与えられたからかもしれません。少なくとも何が必要で、何が不必要というのが浮き彫りにされたように思います。

もちろん個人差はあるでしょうが、属しているコミュニティが、働いている会社が、学校がこんなにも違うストラクチャー、体勢に変わった以上、何が必要で何が大事かが問われているのです。

時には残酷にも二つ以上の「大事」について天秤にかけることを強いられるかもしれません。この嵐の後に残るのは何なのでしょうか。歴史を見ても本物は残る、と言い切るのはとてもシビアで残酷な気もします。

非日常が日常となり、常識が姿を変え、それでも時間は過ぎていきます。責任とは何かを考え、嵐は必ず終わるから「大丈夫なんだ」と思うしかない気もします。

来年もまた美しい桜の季節がやってきて、また私達は満開の桜に、そして桜の花びらに癒されることを祈るばかりです。