関西で働く女性のライフスタイルマガジン［関西ウーマン］

先日、ずいぶん久しぶりに、イギリスに住む友人と会うことができ、シャンパンカクテルで乾杯することができました。

その日は「何に乾杯をしようか」から始まりました。「今の瞬間に！今この瞬間があることに！」とお互いの口から出たのは大袈裟でも何でもなく、二人の正直な気持ちだったのでしょう。

距離を超え、お互いのスケジュールを調節し、やっと会えたという瞬間に。いろいろあっても、再会を祝える瞬間に。食事を美味しくいただけるという健康の瞬間に。何より、時間を共有したいと思える友人との瞬間に。

再会が実現できたこと自体、大いに感謝すべきことなのだと思えました。それは私たちも年齢を重ね、「今」があるからかもしれません。

彼女とはずいぶん長い間のお付き合いになりますが、その間のお互いの人生にはいろいろなことが起きました。時には身近で、そして時には距離を置いてお互いの生き方を観てきた仲です。

あると思っていたものがなくなった時、ないと思っていたものが見つかった時、そんな経験を繰り返し、人生に起こる必然性を傍観してきたのかもしれません。10年を超え、私たちの間で常に話題にあがるテーマがあります。それは、それぞれの人生のミッションについてです。

あらためてミッションという言葉を日本語で調べてみると、「使命」とありました。こんな時、漢字ってすごいなとつくづく感心します。使命とは文字通り、命を使うことですから。私たちの使命の一つに、人を育てながら自分を育てていくこと、自分を成長させながら人を育てることがあると思います。

頑張り屋の彼女は言いました。人を育てるというのは母親として子供を育てることだけではなく、職場で人をマネージメントしながら周囲の人を育てること、それは人間として大切なミッションだと。お互いの立場も年齢を超えて、変わりました。

人を育てるのは簡単なことではありません。何かを伝え、それが奥まで浸透し、そこから何かが育つためには、双方の努力が必要です。人を教え育てることが教育だとすれば、人を教え育てることで、教えている本人が育てられる、というのは本当だと思います。

教える側、学ぶ側その両方に、謙虚であることが問われます。学ぶために努力する姿勢も双方にとって大切です。しかし、「学ぶ」努力の途中で疲れている人を見かけることがあります。努力すればするほど、自分の思う結果を期待するのは当然でしょう。

しかし、充分な努力のあとは、結果を天に委ねる、天に身をまかせることがもっと大事だと思います。学びは一生続くものと信じていますが、その過程は結果も含め、受け入れながら楽しむ余裕をもたなければならない気がすらします。

「サレンダー、surrender 」という言葉がありますが、よく知られている、降参するという意味の他に、周りを信じ身をまかせる、という意味があります。努力のあとはどんな結果であれ、そこに身をまかせる必要があると思うのです。

それは、努力の結果としてやってくる「必然性」を受け入れ、感謝するということです。必然性に感謝する気持ちは私たちをとても謙虚深い存在に変えてくれるのではないでしょうか。努力の人こそ謙虚な人が多いのはそのせいかもしれません。

北海に囲まれた北の空は4ヶ月もの間グレーです。それを知っている私たちは、冬の大阪の青空をしみじみと感謝しました。川の水面をキラキラと照らす夕暮れの太陽は、その感謝の気持ちを謙虚さに変えてくれた気がします。

淀川を見下ろしながら、大きな流れに身をゆだねるイメージが浮かんできました。いい気に包まれた空間で、上質のサービスにもてなされ、真の言葉を交換できる時間は心の浄化でもあります。

その後も「今この瞬間に感謝」という乾杯の気持ちを時々思い出します。それは、また次の日から始まる気持ちをすがすがしくサポートしてくれているような気がします。