HOME  前のページへ戻る

藤田 由布 産婦人科専門医 レディースクリニック サンタクルス ザ シンサイバシ
生理痛は我慢しないでほしいこと、更年期は保険適応でいろんな安価な治療が存在すること、婦人科がん検診のこと、女性にとって大事なこと&役に立つことを中心にお伝えします。
婦人科医が言いたいこと 医療・ヘルシーライフ 2025-06-12
「低用量ピル」ってなに? その⑥ 〜見逃してはいけない副作用〜
低用量ピルには複数の副作用があり、最も多いものでは、不正性器出血や胸の張り、吐き気などがあります。

また症状の出現には個人差があり、副作用が全く観察されないケースもあるし、重篤な副作用が生じる場合もあります。
・頻度は高いが重篤でない副作用
低用量ピルの副作用で多いのは、不正性器出血12%、嘔気 7%、体重増加5%、気分変調 5%、乳房緊満 4%、頭痛 4%であった。※1)

・ 頻度は低いが重篤な副作用
頻度はとても低いが、重篤なものとしては血栓症がある。血栓症の年間の発症頻度は以下の通り。※2)

低用量ピル:3-9人/1万人
服用なし :1-5人/1万人
妊娠中  :5-20人/1万人
分娩後12週まで :40-65人/1万人

血栓症のリスクは、40歳以上、肥満、高血圧症既往、喫煙者の方が高く、低用量ピルの服用を開始した最初の1ヶ月目〜3ヶ月目において最も高くなることが知られています。
さらに、低用量ピルの服用を4週間以上中断したのちに再開した場合は、血栓症のリスクが上昇します。

大部分の方は問題なく服用が可能だが、どうしても継続服用できない女性がいるのも事実です。

血栓症のリスクの高い人というのは、高血圧や喫煙者、それから肥満の人(BMI 25以上)です。

足の付け根の大きな血管が詰まると、足が腫れて痛くなり、ふくらはぎが赤くなる、という症状が出現します。

詰まる場所が胸だと、激しい胸の痛み、脳血管だと舌のもつれ、といった重篤な症状も可能性としてはゼロではありません。

私のクリニックでは、ピルを内服している女性には、少しでも不安があればすぐに連絡して下さいとお伝えしています。

ピルを飲んでせっかく生理が楽になって、生活の質が向上したのですから、ピルの対する不安もしっかり払拭して安心してほしいです。
服用されて副作用などを自覚される際は受診し、避妊方法を変更するか黄体ホルモン単剤に変更するかの選択肢も含めて検討することが大切です。
禁忌(服用が禁止の対象者)
以下の人にはOCは処方不可です。
✓  過去に肺梗塞・脳梗塞・心筋梗塞など血栓症の既往
✓ 乳がんの既往
✓ 重篤な肝機能障害がある
✓ 35歳以上で15本以上の喫煙者
✓ 前兆を伴う片頭痛がある
✓ コントロールできていない高血圧・糖尿病・高脂血症がある
✓ 収縮期血圧160mmHg以上や、拡張期血圧100mmHg以上の値を持続的に示す方
血栓リスクのない「ジエノゲスト」
黄体ホルモン単剤のもので「ジエノゲスト」という「ピルのようでピルでない、ピルみたいな薬」があります。

このジエノゲストは、0.5mgと1mgの2種類あります。1日2回内服するものです。これは、月経困難症や子宮内膜症・子宮腺筋症に適応される保険診療薬剤です。

黄体ホルモン単剤であっても、このジエノゲストは避妊効果があります。ですから、妊活中の女性は内服していると妊娠しないのでご注意を。
痛くなったらすぐセデ●ではなく、ピルで生理痛を撃退してください!
若い女性が生理痛をずっと我慢して、いつの間にか重症な子宮内膜症を発症しているという症例を多くみかけます。

毎月のように生理痛に悩まされ、イブやバファリンの鎮痛薬でなんとか凌いでいるという女性の皆さま、痛み止め薬だけでは根本的な解決は何も出来ていないのです。

生理の量を減らし、生理日数を短くし、子宮の負荷を減らしてあげると、いろんな病気も防げるのです。ピルを内服して内膜症や不妊症も今のうちに撃退しておきましょう。

痛みに負けルナ!ではなく、痛みは我慢せずに気軽に婦人科へご相談くださいね。

次号「アフターピル(緊急避妊ピル)」に続く
【参考文献】
※1)Rosenberg MJ. Waugh MS: Oral contraceptive discontinuation: a prospective evaluation of frequency and reasons. Am J Obstet. Gynecol. 1998: 179: 577-582 (II)
※2)日本産婦人科学会 / 日本女性医学学会 OC・LEPガイドライン2020年度版 2021.2
profile
全国で展開する「婦人科漫談セミナー」は100回を超えました。生理痛は我慢しないでほしいこと、更年期障害は保険適応でいろんな安価な治療が存在すること、婦人科がん検診のこと、HPVワクチンのこと、婦人科のカーテンの向こう側のこと、女性の健康にとって大事なこと&役に立つことを中心にお伝えします。
藤田 由布
産婦人科専門医
レディースクリニック サンタクルス ザ シンサイバシ 院長

大学でメディア制作を学び、青年海外協力隊でアフリカのニジェールへ赴任。1997年からギニアワームという寄生虫感染症の活動でアフリカ未開の奥地などで約10年間活動。猿を肩に乗せて馬で通勤し、猿とはハウサ語で会話し、一夫多妻制のアフリカの文化で青春時代を過ごした。

飼っていた愛犬が狂犬病にかかり、仲良かったはずの飼っていた猿に最後はガブっと噛まれるフィナーレで日本に帰国し、アメリカ財団やJICA専門家などの仕事を経て、37歳でようやくヨーロッパで医師となり、日本でも医師免許を取得し、ようやく日本定住。日本人で一番ハウサ語を操ることができますが、日本でハウサ語が役に立ったことはまだ一度もない。

女性が安心してかかれる婦人科を常に意識して女性の健康を守りたい、単純に本気で強く思っています。

⇒藤田由布さんのインタビュー記事はこちら
FB:https://www.facebook.com/fujitayu
レディースクリニック サンタクルス ザ シンサイバシ
〒542-0085 大阪府大阪市中央区心斎橋1-8-3 心斎橋パルコ10F
TEL:06-6253-1188(代表)
https://shinsaibashi.santacruz.or.jp/

藤田 由布  婦人科医が言いたいこと  コラム一覧>>
おすすめのコラム
医療・ヘルシーライフ
オーラルフレイルを予防しよう
阿部 純子
歯科医師
じゅん矯正歯科クリニ…
医療・ヘルシーライフ
歯石は自分で取れる?
阿部 純子
歯科医師
じゅん矯正歯科クリニ…
医療・ヘルシーライフ
歯がキーンとしみたら
阿部 純子
歯科医師
じゅん矯正歯科クリニ…
コラムのジャンル一覧



@kansaiwoman


■ご利用ガイド




HOME