Vol.4 あみもののおばちゃん、の巻 |
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オラー、ケタル!(Hola, ¿qué tal?)
メヒコはオアハカより一か月ぶりにこんにちは。日本よりもずいぶんとのんびりとした時間の流れのはずなのに、気が付けばもう8月で毎日が高速で駆け抜けていくようです。 上に書いた「ケタル?」は「元気?」というくだけた言い方で、先月紹介した「コモエスタス?」と同じように使います。 今回紹介するのは「あみもののおばちゃん」です。このコラムのタイトルがアミのアミーゴで、編み物のおばちゃんと、今月は「あみ」だらけのタイトルになってしまいました。 ちなみに「アミーゴ」は「友だち」という意味で、「オラー、アミーゴ!」というと、「よう、友よ!」と一気にジャイアン風のあいさつになりますね。 スペイン語には男性名詞と女性名詞というものがあって、日本語には言葉や単語には性がないので不思議な感じがします。 日本でもよく知られている単語「アミーゴ」は男性名詞で男の友だちを指します。そして「アミーガ」というと女性名詞になり、女の友だちのことを指すのです。 というわけで、今回は「あみのアミーゴ」ではなく「あみのアミーガ、編み物のおばちゃん編」をお送りします。 オアハカは食べ物がおいしい州としても名高いのですが、インディヘナ(先住民)の人たちの割合がメヒコ国内の中でも高く、それゆえスペイン語以外の現地語が多く存在したり、先スペイン時代からの豊かな文化がたくさんある場所という一面も持っています。 エスニックなファッションが好きな人ならご存知かもしれませんが、オアハカには織物や刺繍がほどこされたウイピル(巻頭衣の一種)やブラウスが各地域ごとにたくさんあります。 日常的に洋服を着る人の数は増えていますが、いまだにそれらの民族衣装を着て生活している村もたくさんあります。各村や地域ごとに衣装の素材やデザインが違っていて、地域性や気候なども反映されているので大変興味深いです。 このように衣装も様々あるように、手工業品なども本当にたくさんの種類があります。素材も木、毛糸、あるいは皮などと多岐にわたっていて、オアハカの地理的な大きさも感じます。 オアハカ市内では数か月ごとに産地からやってきた衣装や民芸品のフェリア(市)が開催されているのですが、一挙にたくさんの村のものを、生産者の方であったり、あるいはその村からやってきた売り子さんたちから話を聞きながら買い物ができるというのはとても楽しいです。 たくさんの屋台が並ぶのですが、やはりそこは人のすること。たとえ同じ地域からきていても、「こっちの店のほうが好きだな」というのができてきます。 私の場合は圧倒的に「人柄」がそれを左右するのですが、いつも会うのを楽しみにしているおばちゃんがいます。そう、その人こそが今回紹介したいアミーガなのです。 彼女との出会いはもう2~3年前にさかのぼります。羊の毛で作った編み物をいろいろ売っているのですが、ものすごくインパクトの強い丸い顔をした編みぐるみがあったので 「これはなに?」 と聞くと、 「くま!!」 と即答。このなぞの生物は、そうか、くまなのか、と思うと何だか急にかわいらしく見えてきて笑いがこみ上げてきました。 「これ、くまなんですか?!」 と笑い転げていると、これもある、それもあると次から次へと作品を出して見せてくれました。 たまに何かよくわからないものもあるので、その都度と聞くと返事はいつも即答で、その迷いのなさがめちゃくちゃかっこいいので、すっかりおばちゃんのファンになってしまいました。 くまの購入を勧められたのですが、かわいいけど使い道がないということで、もう少し小さかったらいるけど、これは大きすぎるからいいと断わりました。 しかし、おばちゃんは商売人であると当時に作り手でもあるので、私がくまちゃんをだいぶん気に入ったことを察してくれてか、 「明後日までに小さいのを作っとくから、また戻っておいで」 と言ってくれました。メヒコの人は結構調子のいいことをいうので、話を半分に聞いてしまいそうなところですが、とりあえず「明後日」、つまりその2日後にまたお店を覗きに行きました。 すると私の顔を見るなり「あ!あのくまで爆笑するやつ!」と、ごそごそと小さいくまのあみぐるみを出してきてくれました。 その時から民芸市が来るたびに、このおばちゃんを探すのが儀式というかルーティーンというか、TO DO LISTの一つみたいになっていて、見かけるたびに新作とともに写真を撮らせてもらうという関係が続いています。 ![]() 今回の新作は「パボレアル」ことクジャクだそうですが、あちらにもこちらにもぶら下がっていたサルが面白かったです。
いっちょ前にハンチング帽をかぶっていて、足を組んでいる様子は見ているだけで顔がゆるんでしまいます。 ちなみに、おばちゃんはこのような緩い編みぐるみも作っていますが、メインはセーターやマフラー、帽子などの毛糸の作品を作っています。 15歳から作り続けているというだけあってその腕前はすばらしく、素朴ながらもとても質のいい素敵な作品の数々を扱っておられます。 おばちゃんは制作は主に家でして、市の時は手がすいたら作業をするときもあるけど、お店を見てくれるお客さんを一番大事にしていて、人がくるとすぐに気さくに声をかけて、お客さんの質問に答えます。 作り手ならではの明確な説明と商品への自信、そしてたぶん天性の人懐っこさで、来る人はみんな笑顔です。 明るいイメージのメヒコですが、みんな結構愚痴とかも言ったりします。 「バスで来るとき、手荷物量がめちゃくちゃ値上がりしてて!ほんま嫌になるわ。まぁ、しゃあないけど!!」 「ほんまですか~。大変ですねぇ。」 暮らしの中のあるあるというか、他愛もない話ですが別に内容はどうでもよくて、小さな会話を楽しむという人との距離感の近さをこんなところに感じます。 どうでもいい話をちょっと大げさに言ってみたり、聞いてるような聞いてないような受け答えのやり取りはなにか、とても関西っぽいなと感じます。 関西人がメヒコに来たら妙に心地がいいというか、落ち着くのはこういう雰囲気もあるのかなと思うこともしばしばです。 メヒコに来たら、ぜひこのような小さなお店や作り手の方とのやり取りを楽しんでみてほしいと思います。言葉がわからなくても、にっこり笑って「これ、いいなぁ!」と日本語で言ってもきっと伝わるはずです。 このおばちゃんに会えるのは、おそらく次の市がやってくるクリスマスごろです。どんな新しい商品を引っ提げてくるのか、楽しみです。 それでは、コラムはまた来月! ![]() ”el sol”(太陽)版画 日本は夏といえば7月、8月。一番暑いのもそのころ。 メヒコは暑いイメージを持たれていますが、実はオアハカが一番暑いのは3月、4月ごろだというのはあまり知られていないかもしれません。だから日本の夏休み期間にメヒコに遊びに来るのは結構いいアイディアだと思います。 【お知らせ】 2018年9月15・16日に大阪梅田で開催の”UNKNOWN ASIA”というアートフェアに参加することになりました。オアハカより大阪へ行きます! ここで紹介させてもらっている版画を展示させていただく予定です。このコラムを読んで下さっている方で、メヒコのことを直接聞いてみたいという方がいらっしゃいましたら是非気軽に声をかけていただければうれしいです。 UNKNOWN ASIA ⇒OFICIAL WEB SITE ⇒作家紹介ページ |
![]() あみ りょうこ
版画家 1982年大阪生まれ、兵庫育ち。メキシコのオアハカ州での暮らしを経て、2020年から日本に。 ものつくりが好きで、オアハカで版画に出会い制作を続けている。 HP:https://amiryoko.wordpress.com/ instagram:ninjacco メヒコTプロジェクト |
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小森 利絵 フリーライター えんを描く |
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