藤田 由布 産婦人科医 レディースクリニック サンタクルス ザ シンサイバシ 生理痛は我慢しないでほしいこと、更年期は保険適応でいろんな安価な治療が存在すること、婦人科がん検診のこと、女性にとって大事なこと&役に立つことを中心にお伝えします。 |
私が政治家に送った「相談の手紙」 |
ふと、自宅の郵便受けに一枚のチラシに目が止まった。若い政治家の顔が表紙の広報チラシだった。
ありきたりな公約文言よりも、どの政党かよりも、まず「平成生まれ」に目がロックオンしてしまった。 若い政治家は、30年この先の未来は我ごとに直結した当事者となる。若い女性の健康のことも、我が家族のこととして親身に聞いてくれるのではないか、と直感的に感じた。 私は特定の政党支持者でもなければ、推しの特定政治家がいるわけでもない。 市民の話を聞いてくれるか、 カンペを棒読みせず、自らの言葉で語りかける人なのか、 あたたかい眼差しの鋭い熱量を持ち合わせているか、 10年、20年先の未来を見据えた政策を実行しているか、 しがらみの無い、根回しに囚われない鉄のハートを持ち合わせているか、 そして関西人には重要であるユーモアがあるか、 これが重要な要素で投票している、ただそれだけ。 私は普段、心斎橋のクリニックで産婦人科医として勤務しています。患者さんを毎日診察し、さまざまな健康相談を受け、頻繁に目を見張るような事象に出くわします。
最近、生理トラブルで親御さんとご受診された小学校5年生の女子生徒は、「学校のトイレに汚物入れがないので使用済みナプキンが捨てれない」と悩んでいました。 他にも、「一日中の立ち仕事でナプキンを交換する時間がないので経血が漏れていつもズボンが汚れてしまう」、「妊娠初期の悪阻(つわり)が酷くても職場を休めない」など、女性らの婦人科的な悩みを言い出したらキリがない。 女性における日常フツーの生理現象が生活の質をうんと落としているのは、現実の事実です。 しかし、日本の女性にしてみれば「そんなの当たり前のこと」で済まされてきました。
産婦人科の診療の現場では、そんな女性のフツーにツライ悩みを毎日ききます。 産婦人科領域の診察と治療を行うかたわら、何か社会や組織が改善することで、女性の暮らしの質が向上しないだろうか、どないかならんだろうか、という「難儀」が私の脳みその半分以上を占めています。 そこで、郵便受けの中で目に飛び込んできた若くて活きのいい政治家の広報チラシ。そして、このチラシの隅にあった「市民の皆様のご意見おきかせください」の文字。 そっか、政治家に市民の声を届けてもいいんだ・・・ 実際に私が送った手紙
実際の手紙を記します。
大阪市議会議員 ○○さんへ
突然の意見メールにて大変失礼いたします。 大阪市内で産婦人科医として勤務する藤田と申します。 自宅ポストに投函された○○さんの広報チラシを拝見し、もしかしたら○○先生なら一市民の意見に傾聴してくださるかもと思い、産婦人科領域での課題についてご相談させていただきました。 市議での議題を新聞や広報誌などで拝見しております。そこで、女性の健康問題に直接関連した事柄として、私が現場で課題だと感じたいくつかについて相談させて頂きたく存じます。 ▶まず、中高生の水泳授業でタンポン使用を強要する体育教諭に指導をお願いします。 夏季になると毎年、女子生徒を連れた何人かの親御さんが当院に相談に来られ、「水泳授業の際に生理で見学するとペナルティがある」と悲痛な声が私に届きます。 水泳の授業の日が生理とかぶってしまうと、体育教員から「ずる休み」を疑われ、タンポン入れて出席するよう強要されたそうです。 初交前の女性の膣の構造は個体差があり、痛みにも差があって当然であり、未熟な少女達にタンポンを強要するなど暴力に等しい行為です。 また、生理で水泳授業を見学した際は、見学レポートのほか翌週に25mmプールを8往復することを課せられています。これは女性の生理現象へのペナルティではないでしょうか。 女子生徒の悲痛な声なき声をひろってあげてください。 水泳授業の見直しを、お願いします。 もしかすると、男女一緒に同じ時間に全員で水泳の授業をしなくても、民間のスイミングスクールなどとの協力によって「溺れ防止」の対策はできるかと思った次第です。 ▶HPVワクチンの男性への助成金の開始をご考慮ください 〜 長くなるのでこのコラムでは省略 〜 ▶大阪市の婦人科がん検診の手法を従来型から液状化細胞診へのアップデートをご考慮ください 婦人科検診の検査方法の件ですが、いまだに大阪市は他市と違い、サンプリングエラー(標本誤差)が散見される「板ガラスを使った従来法」です。 大阪市の採用している従来法だと、月経中だと検診不可能だったり、閉経期のご婦人だといつ来るか分からない性器出血のせいで検査日が合わないという不都合が生じます。 ただでさえ日本で急増している子宮頸がんの検診取りこぼしが懸念されます。日本婦人科がん検診学会においても液状化細胞診が推奨されています。しかし、大阪市では、従来型の手法で不適切な綿棒で細胞診を施行している施設もいまだに散見されます。 「従来型は液状化細胞診よりも安価である」とか、変化を拒んでアップデートしないまま従来型を施行し続けているのかもしれませんが、この現状を少しでも改善することが急務と感じざるを得ません。 ▶ほかにも、産婦人科診療の現場において、たくさんの社会問題に直面しています。 ・子供の学費のために性風俗勤務を辞めれない若い女性が増えている、 ・性教育を受けたことのない若い世代が性感染症による卵管閉塞で不妊が増えている、 ・緊急避妊ピルが高価でアクセスできない女性があとをたたない、 ・就職して数年しか経ってないので今はまだ産めないという妊娠人工中絶の相談、 ・月経困難症が長年放置され、子宮内膜症も診断されず放置され、そんな女性たちが不妊治療で何年も治療が要されている現状など 産婦人科領域の課題の改善にも政治家の先生方がご注目いただければ、少しでも少子化対策にも寄与するものだと、産婦人科診療の現場で感じております。 私は長年の海外生活から日本に帰国し、産婦人科医として10年目です。日本でまず驚いたこととして、若い女性たちの「我慢している現状」に驚愕しました。 日本の女性たちの無知が問題ではありません。「知らされていないこと」が問題だと思っています。若者が健康健全に発育するシステムが未構築であることを問題視しています。 あなたのような若い世代の市議の政治家さんたちに少しでも現状を知って頂きたく、広報チラシにあった連絡先に問い合わせさせて頂きました。 突然のメールで大変恐縮です。声なき声に少しでも耳を傾けて頂きたいと思いご連絡させて頂きました。よろしくお願い申し上げます。お時間とらせてしまい大変申し訳ございません。 レディースクリニック・サンタクルス心斎橋 藤田由布 ありがたいことに、お便りをしてからすぐにお返事を頂きました。まずは、長ったらしい私の相談綴りを読んでくださったことに感謝です。
このような返信がありました。
藤田先生
お世話になります。 ○○市会議員の○○でございます。 広報紙をお手に取って頂き、その上、ご連絡を頂きましたこと心より感謝申し上げます。 さて、たくさんの貴重なご意見、誠に有難うございます。医療の最前線でご活躍されている藤田先生ならではのご指摘、大変勉強になります。対応方針について、取り急ぎ以下の通りご報告申し上げます。 ①プール授業に関する生理中の女子生徒への対応についてですが、 こちらは「大阪市」という自治体として公立小中学校が該当しますので、教育委員会に確認しました。これまでにも学校現場での不適切な対応についてのご意見が寄せられたため、令和2年6月に通知を行い、心身の健康状態など、個々の事情を考慮するように学校現場に指導しているとのことです。 なお、本件通知については、今年の4月にも再度展開しているとのことで、全体としての対応は一旦完了しているようです。 もし今後も同様のケースが発生した場合には個別対応となるかと思いますので、改めてご連絡くださいませ。(まずは学校もしくは教育委員会に連絡するのがよろしいかと思いますが。) ②HPVワクチンの男性への公費接種について 婦人科領域等について、女性議員も多数在籍しておりますので、決して無関心という状況ではなく、HPVワクチンについても、市議会でも何度か取り上げられておりますので、まずはご安心ください。 しかしながら、男性接種については、言及が無いように思います。東京都等では、男性接種に公費負担がされるケースもあるようで、必要性について認識致しました。大阪市の対応について、当局に相談したいと思います。 ③婦人科検診の手法の改善について 大阪市の婦人科がん検診の手法について、WEB上では詳細が分かりかねましたので、 こちらも当局に確認を取ってみたいと思います。 以上、簡単なご報告となり恐縮ですが、市議会内でも、がん検診やワクチン接種に関して熱心な議員もおりますので、情報共有しながら、対応について検討してまいりたいと思います。 また何かございましたらお気軽にご連絡くださいませ。 引き続きどうぞ宜しくお願い致します。 政治家の先生方、市政にご尽力下さりありがとうございます
場末のいち産婦人科医からの唐突なる相談に対して、ご多忙極められる中、ご丁寧に回答くださったことに、まず深く感謝しています。
私は、大阪市の市民として、地域の住民として、医師として、産婦人科医として、そして女性として、若い女性が悩める環境を改善できればと願い、「こんな社会になればいいな」のために微力ながら役に立ちたいと思って仕事して生活を送っています。 「生理痛なんて我慢して皆んな過ごしてきた」、「更年期障害なんて病気じゃない」と言われ続けてきた日本の女性たちに、もう我慢なんてしてほしくない。ちゃんと改善できる治療があるのですから。 この若い政治家の方からも学ばせてもらいました。私も診療の現場で患者さんの声なき声にも耳を傾けていかねばと思う毎日です。 |
藤田 由布
産婦人科医 レディースクリニック サンタクルス ザ シンサイバシ 院長 大学でメディア制作を学び、青年海外協力隊でアフリカのニジェールへ赴任。1997年からギニアワームという寄生虫感染症の活動でアフリカ未開の奥地などで約10年間活動。猿を肩に乗せて馬で通勤し、猿とはハウサ語で会話し、一夫多妻制のアフリカの文化で青春時代を過ごした。 飼っていた愛犬が狂犬病にかかり、仲良かったはずの飼っていた猿に最後はガブっと噛まれるフィナーレで日本に帰国し、アメリカ財団やJICA専門家などの仕事を経て、37歳でようやくヨーロッパで医師となり、日本でも医師免許を取得し、ようやく日本定住。日本人で一番ハウサ語を操ることができますが、日本でハウサ語が役に立ったことはまだ一度もない。 女性が安心してかかれる婦人科を常に意識して女性の健康を守りたい、単純に本気で強く思っています。 ⇒藤田由布さんのインタビュー記事はこちら FB:https://www.facebook.com/fujitayu レディースクリニック サンタクルス ザ シンサイバシ 〒542-0085 大阪府大阪市中央区心斎橋1-8-3 心斎橋パルコ10F TEL:06-6253-1188(代表) https://shinsaibashi.santacruz.or.jp/ |
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