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藤田 由布 婦人科医 レディース&ARTクリニック サンタクルス ザ ウメダ
生理痛は我慢しないでほしいこと、更年期は保険適応でいろんな安価な治療が存在すること、婦人科がん検診のこと、女性にとって大事なこと&役に立つことを中心にお伝えします。
婦人科医が言いたいこと 医療・ヘルシーライフ 2022-12-29
皇室式「さくらんぼの食べ方」〜天皇皇后両陛下にご接見の機会を賜りました〜
今の天皇陛下がかつて皇太子殿下であられた頃、私は東宮御所へ招かれてご接見の機会を賜ったことがありました。

皇室式のさくらんぼの食し方に戸惑い、お皿に添えられた和紙状の筒を「なにこれ、何に使うの?」とキョロキョロ…。

高貴なお味のチーズケーキやお紅茶も御呼ばれし、数時間にわたり夢のような時間を過ごしました。

この時、当時の雅子妃殿下がご懐妊されて5ヶ月目の頃でした。つまり、2001年夏頃のことです。

東宮御所の綺麗な50畳くらいの大広間の中央に、向かい合わせで円になるように座り、とても近い距離で皇太子殿下と雅子様とお話しするのです。

河内出身で決して育ちの良くない私が、こんな高尚な機会を仰せ仕るなんて、「僭越すぎるにも程がある」と自分でも感じたものです。
タバコにも菊の御紋
青年海外協力隊は、出発前には全員が皇太子殿下とご接見の機会があるのですが、ごく一部の隊員のみ任期を終えた帰国後に東宮御所に招かれる、という貴重な機会がかつてありました。

黒塗りの高級車に乗せてもらい、東宮御所の中は御所内は砂利道が敷かれ、ずっと奥へ進むと割と質素だけど大きな玄関らしき入り口へ到着しました。

宮内庁職員の執事らしき男性から「しばらく待合室の中で待つように」と言われ、ご接見前の15分くらい待合室に居たのを覚えています。

待合室のテーブルに上には、簡素な灰皿とタバコが20本くらい剥き出しの状態で置かれていました。

そのタバコには一本一本に金色の菊の御紋が刻印されていました。普通の市販タバコと大きさや見た目は変わらない。ただ、菊の御紋印があるだけで全てのタバコに高級感が溢れ出ていました。

ダメだと分かっていても、「父親のお土産」として、1本だけハンカチに包んで拝借したのですが、これはもう20年以上昔のことなので時効ということで勘弁下さいませ…。

菊の御紋印付き皇室タバコは、父曰く「高級な味するやん」とのことでした。
仲睦まじい両陛下
私の真ん前に両陛下がいらっしゃる。信じられない光景でした。

皇太子様はグレイ色のスーツ、雅子様は淡い水色の上下で御懐妊された身体が冷えないように白いニットの膝掛けを足首までかけていました。

雅子様は妊娠5ヶ月目だったので、おそらく胎動を感じ始められた頃合いだったと思われます。

最も印象的だったのが、御二人がとても仲睦まじく御顔を合わせてよく話しておられたことでした。

雅子様の方から皇太子様の方向へ身体をかがみ寄せているお姿、そして、エクボがきゅっと出る雅子様の微笑みに、庶民の私が惹き込まれる思いでした。

ゆっくりお話しになられる皇太子様、そして、割と低音ではっきりした話し方の雅子様。

会話が途切れることなく、たくさんの質問をして下さいました。きっと我々庶民の背景をあらかじめお調べになって下さったのだろう。
知性あふれる雅子妃殿下
「ニジェールは砂漠地帯の大変暑い国ですよね。村の暮らしで大変だったことはどんな事でしたか?」 「ギニアワームという寄生虫の病気の対策で難しかった事はどんな活動でしたか?」

元外交官という職歴をもつ雅子様ならではの的確な質問でした。

私の話を目を見て聞いてくださった雅子様は、終始うなづいて時折おどろくような反応も見せて下さる。

「もう一つお聞きしてもよろしいですか。ニジェールの村で一番嬉しかった事はどんな事でしたか?」

私はこう答えました。

※ニジェールのザンデール県郊外のガリンイッサンゴーナ村は150世帯ほどの小さな村
「私の住んだ村は150世帯ほどで、とても貧しく、たくさんいる子供たちが誰一人とも小学校に通ってしませんでした。学校は隣村にしかなかったからです。そこで私は子供たちが何か学べる場を提供しようとして奮闘しました。私がいた3年間で、この村で4人の子供が隣村の小学校に通うようになりました。それに村の大人たちが工夫してくれたことが一番嬉しかったです。」

こう答えた後、皇太子様と雅子様が大きくうなづき、「それは嬉しかったですね」と言ってくださいました。
「まあ、ロバさん!」

※実際に両陛下にお見せした写真
ロバに乗って水汲み出かける子どもの写真を私は手元に持っていました。

それに気付いた雅子様が「お手元のお写真を拝見しても良いですか?」と言ってくださいました。

この写真を手にお取りになった雅子様が「まあ!ロバさん!子供たちもかわいいですね!」と言って、皇太子殿下に身重の身体を寄せてお二人で笑顔になられたのを、今でもはっきり覚えています。

その時の雅子様から聞こえてきた笑みのお声が、可愛らしい少女のようだったのです。

私の村の子どもたちも、まさか自分の写真がこうして両陛下にご覧頂いたとは夢にも思わないことでしょう。

私にとって思い出深い村のこの可愛い子どもたちの写真を見るたびに、特別な思いが付加されていろんな思いが想起されることとなりました。
さくらんぼに添えられた「和紙の筒」
まず、テーブルに運ばれてきたのは、レアチーズケーキとアイスティーでした。

巷のレアチーズケーキより白く滑らかで、土台のビスケットの部分が柔らかくて程よい甘さ。

むむむ、庶民のチーズケーキとは何かが違うぞ…。

なんぼ食べても太らないレシピになっているかもしれない、と思えるほど丁度良い甘さ。
粗相のないように上品に食べる事に気を取られながら、次に運ばれてきたのが、プリプリとしたさくらんぼ。

白い大きめのお皿に10個程のさくらんぼが乗せられ、その横に和紙の筒が置かれていた。

はて、なにこの筒…?? 

顔をあげて皇太子様の方を見ると、さくらんぼをお食べになった後に口元に筒をもっていき、どうやら種を筒の中に落とし、枝を筒内にひょいっと入れているのです。

はっはーん、なるほど、こうやって筒を使うんだ…

私はあたかも以前から知っていたかのように和紙の筒を手に取り、皇太子様と全く同じ方法で皇室式さくらんぼの種の出し方をやってのけたのでした。
時間ですよの合図は「コン、コン、コン」
夢のような高貴でいて楽しく心躍る時間というのは、すぐに過ぎてしまう。

2時間半は過ぎていましたが、大広間の大きな木の扉の向こうから、ゆーっくり「コン、コン、コン」と3回扉をノックする音が聞こえてきました。

執事からの「もう時間ですよ」の合図で、そこでハッと我にかえり夢の時間の終了を告げられたのでした。

思えば、後の天皇陛下・皇后陛下になられる御二人も、我々庶民のアフリカ話などによく耳を傾けて聞いてくださったものです。

でも、ふと思いました。

20代の血気盛んで夢途上の若者の話は、堅苦しい杓子定規な定型文でなく、採れたてホヤホヤの若造の生生しい活きた話です。もしかすると浩宮様と雅子様にとってもそれほど多くない機会だったのかもしれません。

終始、温かい微笑みを向けてくださった浩宮様と雅子様に、言葉にならない想いが湧き上がりました。
青年海外協力隊は幸運な若き精鋭たち
青年海外協力隊は、出発前に全員が皇太子殿下と雅子妃殿下にご接見の機会があり、ここでは一人20秒ずつほどお話し出来る機会があります。

200人くらいの出発直前の青年海外協力隊員が東宮御所に一同介して、20人ずつの輪になって、皇太子殿下と雅子妃殿下が輪の中で一人一人に激励を下さるのです。

これから途上国の奥地へ派遣される若葉マークの若造たちと向かい合って談笑して下さるなんて、今となっては、皇太子殿下にとっては大変な御気遣いだったのでは、と想像します。

この全員ご接見の機会とは違い、今回は数人の精鋭部隊に選ばれての数時間にわたるご接見なのです。

ありがたすぎる機会を私に与えてくれた国際協力機構(JICA)に感謝です。
雅子妃殿下の微笑みが忘れられない
私たちが東宮御所の大広間を退室する際に、私たちの歩く動線に一脚の椅子があったことに雅子様がお気付きになられ、その椅子をさっと引いて道を作ってくださいました。

その時に、雅子様は斜め後ろにいらっしゃった皇太子殿下にご配慮されたのか、私たちには背を向けないまま大きく後ろに下がって皇太子殿下の真横にピタっと御並びになられました。

最後まで笑顔で見送って下さった雅子様。隅々に御気を配られ、どんな人にもお優しい笑みを向けて下さる雅子様に私はすっかり魅了されたのでした。
profile
全国で展開する「婦人科漫談セミナー」は100回を超えました。生理痛は我慢しないでほしいこと、更年期障害は保険適応でいろんな安価な治療が存在すること、婦人科がん検診のこと、HPVワクチンのこと、婦人科のカーテンの向こう側のこと、女性の健康にとって大事なこと&役に立つことを中心にお伝えします。
藤田 由布
婦人科医

大学でメディア制作を学び、青年海外協力隊でアフリカのニジェールへ赴任。1997年からギニアワームという寄生虫感染症の活動でアフリカ未開の奥地などで約10年間活動。猿を肩に乗せて馬で通勤し、猿とはハウサ語で会話し、一夫多妻制のアフリカの文化で青春時代を過ごした。

飼っていた愛犬が狂犬病にかかり、仲良かったはずの飼っていた猿に最後はガブっと噛まれるフィナーレで日本に帰国し、アメリカ財団やJICA専門家などの仕事を経て、37歳でようやくヨーロッパで医師となり、日本でも医師免許を取得し、ようやく日本定住。日本人で一番ハウサ語を操ることができますが、日本でハウサ語が役に立ったことはまだ一度もない。

女性が安心してかかれる婦人科を常に意識して女性の健康を守りたい、単純に本気で強く思っています。

⇒藤田由布さんのインタビュー記事はこちら
FB:https://www.facebook.com/fujitayu
レディース&ARTクリニック サンタクルス ザ ウメダ 副院長
〒530-0013 大阪府大阪市北区茶屋町8-26 NU茶屋町プラス3F
TEL:06-6374-1188(代表)
https://umeda.santacruz.or.jp/

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