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藤田 由布 婦人科医 レディース&ARTクリニック サンタクルス ザ ウメダ
生理痛は我慢しないでほしいこと、更年期は保険適応でいろんな安価な治療が存在すること、婦人科がん検診のこと、女性にとって大事なこと&役に立つことを中心にお伝えします。
婦人科医が言いたいこと 医療・ヘルシーライフ 2021-11-04
一夫多妻の村で暮らしてみました。その③
従兄妹どうしの結婚が主流
子を授かることで、家庭内での妻としての地位を確立しているわけだが、これは貧困がゆえの制度であり、従属せずして自立できない女性の脆弱な立場がベースになっているのである。

結婚したらすぐに子供を授かるように、社会と夫の家族から期待される。

後継の男児を産むことを期待されるケースも多いが、ニジェールの田舎では、男児でも女児でも幼い頃からの許嫁(いいなづけ)がおり、従兄妹同士の結婚が主流である。どちらの性が生まれても、一族の安泰となるわけである。

日本でもひと昔は後継となる男児を産む重圧がのしかった時代もあったが、今は「女児を授かりたい」といって婦人科クリニックに相談にくる女性がいるくらい変化した。
一夫多妻制の女性の健康

お洒落なプール族の女性
一夫多妻は、妊娠間隔の短縮や若年結婚を助長するといわれている。

若年妊娠は、医学的見地からも、健康上リスクが高くなる。また、妊娠の次の妊娠の間隔が短すぎるのも、母体や胎児にとってよくない。

若年妊娠は、子癇、高血圧、貧血のリスクが高くなる。そしてこれらのリスクは、胎児の発育にも影響してくる。発育不全や新生児死亡のリスクも高くなる(Gillham, 1997:14)。
WHOも妊娠と妊娠の期間を1年以上あけるよう指導している。18才未満の出産は、20才以降の出産と比べて5歳児未満児死亡率が3倍以上高くなる、と報告している(WHO, 1997)。
スーダンは国をあげて「一夫多妻制」を奨励
2001年8月15日のBBCニュースでびっくりする内容が報道された。人口増加を目的として、一夫多妻制が国家戦略となったのだ。

まだ南北で分断される前のスーダンでのこと。オマール・ハッサン・アルバシル大統領が、スーダンはアフリカ大陸で最大の国土を有する国なのに、人口は3千万人。人口増産は国策であると明言し、一夫多妻制はこれを助けるシステムであるといったのだ。
ただ、これ、どうなのだろう。

一夫多妻制は本当に人口を増やせるのだろうか。倫理観や実現性とは別に。

一夫多妻を施行したからとて、国内の女性の数は変わらないのである。女性が一生涯で出産できる子供の数はどんな戦略を施行したとて限度がある。

なので、一夫多妻を奨励しても子供の数は変わりないのではないか?

増えるものといえば、1人の男性に従属する子供の数が増えるだけ。もしくは、家族に属するメンバーの数が増えるだけ。のような気がする。

一夫多妻制は、国家レベルで人口を増やすのは、物理的に現実味がない。

まあ、これは、もともと女性のリプロダクティブヘルスを真っ向から無視した政策であることは、いうまでもない。しかも、女性の健康も生活の質も完全に無視している。

女性の人権を無視した政策とは、世界のどこかでは未だに蔓延っているのである。

はて、灯台下暗し。日本でも蔓延中だ。
エイズが蔓延するのか、一夫多妻制?!
一つの家族に複数のセクシャルパートナーが存在するのが、この一夫多妻制の最大の歪(いびつ)なポイントである。

夫か妻のだれかがHIVに感染したら、このウィルスは家族全員に蔓延するのである。

一夫一妻の家族より、一夫多妻の家族は、男も女も、性感染症リスクを多く抱えながら生きているのだ。

第一夫人は、夫がどこの誰と現在付き合っているのか知る由もなく、夫の性的パートナーを事前に知ることもない。

第二夫人候補の女性も、その婚約者の妻がどのような女性なのかも知る由もなく、その妻が性感染症にかかっていても調べる術はない。

だれかがHIVに感染していたならば、妻たちは全員感染するのである。夫も、もれなく。

HIVだけでない。梅毒、クラミジア、淋菌、ヘルペス、コンジローマ、トリコモナス、全ての「性病」しかりである。

ゾッとする。

妻は、夫が次なる妻を迎えるかどうかの決定に口を挟むことはない。できない。

結婚前に、夫となるパートナーが、一夫多妻を導入するかどうか、これも夫が決めること。

我々の感覚からすれば、夫の裏切り行為とでも言うべきか。

第二、第三と続く妻たちは、夫よりずいぶんと若い女性であることが多い。

夫の方がうんと年上であることから、夫が経てきた性交渉の機会は若い妻よりも多いはずであり、性感染症の病気は「夫から妻へうつるもの」と考えるのが当然である(Berer, 1993:45)。

性感染症予防のコンドームなどの普及を頑張ったとて、一夫多妻制の妻たちに避妊具やプロテクションを使う選択肢はない。

妻が複数いたとしても、正式な夫婦関係であり、コンドームを使うなんていう夫婦はありえない。
女性を苦しめる伝統文化
1999年6月7日のBBCニュースのナイロビからの報告が印象的だった。

一夫多妻制で有名なLuo族の話だ。Millicentさんの夫が、6人の子供を残して突然の死を遂げた。周囲は再婚を勧め縁談をもちかけたが、Millicentさんは頑なに再婚を断った。

女性の独身は貧困を意味するのに、それでも再婚の縁談を断った。なぜなら、夫の死はきっとエイズによるものだと悟り、自分も感染しているのだろうと考え、ならば自分がHIVを次なる夫にうつすことは間違いないと恐れたからである。
HIV・AIDSの蔓延を食い止めるためには、教育啓発と行動の変化が必須であるという。

かといって、この一夫多妻制という制度の下で、社会文化的ダイナミクスの側面を理解せずして、教育や啓発は難しいのは言うまでもない。

女性が、HIVやその他の性感染症に感染する最大の原因は、自分の性をコントロールする力の欠如なのではないか。女性の立場が脆弱であるがゆえに病気になる、これが問題なのだ。

これはなにも途上国に限ったことではない。

この子達は今30代で村のリーダーとなっているはず。
一夫多妻制の女性は、リプロダクティブ・ライツという枠組みの中でも脆弱な立ち位置であることがわかる。

アフリカの伝統的な社会では、家族には子供、両親、祖父母、叔父と叔母、自分の子供と他の親戚がいる兄弟姉妹が含まれる。

アフリカの文化的文脈の中で「大規模な家族」は安定を意味し、一夫多妻制は家族の規模を拡大するための重要な手段になるのだ。
ただ、一夫多妻の中で暮らす女性に対する性病対策は必須であることも忘れてはならない。
女性の健康は、いろんなものに影響を受けている
日本においても不倫している輩は大勢いる。今も昔も。

隠れた不倫がまかり通った日本社会を棚にあげて、一夫多妻のことを「婚姻外の恋愛の正当化」と揶揄するなんて、ちゃんちゃらオカシイのである。

永遠の愛なんて胡散臭いと感じる人もいるだろうが、一応、日本は複数の配偶者を持つこと(=重婚)は法律上禁止されている。

一夫多妻制は、複数の婚姻外のパートナーと関係を持つことを正当化したり、女性の脆弱性の問題が浮き彫りになる唯一の事象ではない。

女性の健康は、医療の質とかアクセスだけでなく、社会経済的な発展や、社会における女性の地位、そして、このように特定のライフスタイルによっても大きく影響を受けるのだ。

トアレグ族の親娘
声なき声、それは脆弱な女性の小さな小さな声である。

一夫多妻の制度内で活躍する女性もいる。しかし、その裏の側面で性感染症で女性の健康が脅かされている側面も無視するわけにないかない。

明白でない、内面化されて見えづらくなっている事に目を向けることも重要である。

女性が自分の本当の気持ちを表現する余白を、社会に広げていくこと。なにも一夫多妻だけじゃなく、日本においても重要なことである。
profile
2021年大阪なんばクリニックから近畿大学病院経由で、梅田のレディースクリニックへ異動し新天地へ到着。必要とされるところにはどこへでも行きます。金髪から黒髪に戻して日々切磋琢磨でこれまで通り診療に邁進しています。生理痛は我慢しないでほしいこと、更年期は保険適応でいろんな安価な治療が存在すること、婦人科がん検診のこと、女性にとって大事なこと&役に立つことを中心にお伝えします。
藤田 由布
レディース&ARTクリニック サンタクルス ザ ウメダ

大学でメディア制作を学び、青年海外協力隊でアフリカのニジェールへ赴任。1997年からギニアワームという寄生虫感染症の活動でアフリカ未開の奥地などで約10年間活動。猿を肩に乗せて馬で通勤し、猿とはハウサ語で会話し、一夫多妻制のアフリカの文化で青春時代を過ごした。

飼っていた愛犬が狂犬病にかかり、仲良かったはずの飼っていた猿に最後はガブっと噛まれるフィナーレで日本に帰国し、アメリカ財団やJICA専門家などの仕事を経て、37歳でようやくヨーロッパで医師となり、日本でも医師免許を取得し、ようやく日本定住。日本人で一番ハウサ語を操ることができますが、日本でハウサ語が役に立ったことはまだ一度もない。

女性が安心してかかれる婦人科を常に意識して女性の健康を守りたい、単純に本気で強く思っています。

⇒藤田由布さんのインタビュー記事はこちら
FB:https://www.facebook.com/fujitayu
レディース&ARTクリニック サンタクルス ザ ウメダ
〒530-0013 大阪府大阪市北区茶屋町8-26 NU茶屋町プラス3F
TEL:06-6374-1188(代表)
https://umeda.santacruz.or.jp/

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