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小森 利絵 フリーライター えんを描く
レターセットや絵葉書、季節の切手を見つけるたび、「誰に書こうかな?」「あの人は元気にしているかな?」などアレコレ想像してはトキメク…自称・お手紙オトメです。「お手紙がある暮らし」について書き綴ります。
おてがみじかん ライフスタイル 2021-05-19
お手紙とわたし~津玲子さん編②~
私のまわりにいる「日常の中でおてがみじかんを楽しんでいる人」にインタビュー。5人目は津玲子さんです。お手紙の思い出や楽しみ方などについてうかがったインタビューを4回に分けて紹介しています。

前回は「自分の気持ちや想いを乗せやすいツール編」として、日頃はLINEなどでやりとりしていても、今の気持ちを聞いてもらいたい時や「元気にしているかな?」と気になった時など、用事のないお手紙を書く部分を意識的に残しているというお話をうかがいました。

第2回目となる今回は「お手紙が『今、ここ』以外の世界とのつなぎ目編」。津さんが大学時代にどう生きていったらいいのかを悩んだ時、自分が興味のある生き方をしている方々とお手紙を通じてつながることができたというお話をうかがいます。
大学時代に、お手紙を通じていろんな人たちとつながることができたそうですね。それは、どんな出来事だったのですか?

津さん:「この先、どう生きていったらいいんだろう」と悩んでいた時、お手紙が「今、ここ」の世界とは違う世界とつながる、つなぎ目になってくれたんです。

私が中学・高校・大学時代を過ごした1980~1990年代というと、バブル経済期とその後の崩壊期があり、「自分探し」といった言葉が流行っていた時代だったでしょうか。

私自身は、高度経済成長によってもたらされた大量生産・大量消費という社会の在り方に疑問を感じながらも、自分も何をするにも消費側にまわっていることにモヤモヤ。また、親子関係にも悩みを抱えていて、言葉にならない生きづらさみたいなものを、高校時代からずっと抱えていたように思います。

大学進学と同時に実家を離れて下宿するなど環境を変えてみたものの、大学4年生になっても、自分にしっくりとくる何かが見えてこず。自分がいる「今、ここ」の世界にもなじめなくて、鬱々とするばかり。就職活動をする友だちを横目に見ながら、自分はどこで、どんなふうに生きていくんだろうと、悶々と考えていました。

そんな日々の中で、草の根の市民運動や大きな経済から離れた生き方を模索する人たちを取り上げた『名前のない新聞』をはじめ、メインストリームからは一歩離れた生き方をする人たちの本を愛読。世の中にはいろんな生き方をしている人たちがいるんだと、たくさんの刺激を受けたんです。

本やフリーペーパー、映画などを見て、豊かな自然に囲まれて暮らしたり、会社で働く以外の働き方をしたりなど、自分が興味や関心を持った人たちとつながりたくて、お手紙を送ってみることにしました。お手紙でやりとりさせていただいた後、何人かの方に実際に会いにも行ったんです。

すごい行動力ですね!

津さん: それほど切実だったのだと思います。これからの生き方を考える糸口を得たいという一心でした。

今ならきっとtwitterやインスタグラムなどで瞬く間に、自分が心惹かれる世界観や感性などを持っている人たちとつながり、言葉を交わすことができるでしょう。また、さまざまな情報も得られるので、その情報をもとにイベントなどに出かければ、心動く出会いもあるでしょう。

当時の情報源と言えば、身近な出来事や本、映画、テレビなどです。まるで細い糸を手繰っていくみたいな感じで一歩一歩、自分の足で世界を広げていくという感覚がありました。

お手紙を送るという一歩を踏み出せたのは、高校時代に好きな漫画家さんにファンレターを書いて送り、お返事をもらった経験があったからかもしれません。自分とは違う世界に暮らす、距離的にも遠く離れた相手とつながることができたという経験が、背中を押してくれたんでしょうね。
大学時代のお手紙にはどんなことを書いたのですか?

津さん: その人の生き方に心動かされたという、ファンレターみたいなお手紙が最初だった気がします。

どんないきさつで知って、どんなところに心惹かれたのか、心惹かれた背景には私自身が悩んだり迷ったりしていることがあるなど、その時の自分の気持ちや想いを誠実に書くことを大切にしました。

対面とも、電話とも違い、顔が見えない&リアルタイムではないからこそ、緊張しやすい私でも緊張せず。しゃべるよりも、ずっと遅いスピードだから、気持ちや想いを整理しながら、自分の素直な気持ちや想いを、お手紙に乗せることができたと思います。

そしてなんと、お手紙をお送りしたみなさんから、お返事をいただけたことを覚えています。

それはとても嬉しいですね。

津さん: もう、奇跡を願うみたいなものですから。

距離が離れていますし、時間もかかりますし、紙という「物」を、郵便局員さんという「人」が運んでくれるものですから、途中で何かしら起こって紛失しても不思議ではありません。無事に届いたとしても、相手がお返事をくれるかどうかもわかりません。

相手に届いただけでラッキーと思っていたので、相手からのお返事が届いた時は「うわあぁー!!」って。私の手もとにあったお手紙が相手のところにちゃんと届いたんだ、受け取ってもらえたんだ、このお手紙は数日前までその人が手にしていたものなんだ、その人のもとから私のところに届いたんだって。

「はるばるやってきてくれてありがとうー」という感じでした。

お手紙を受け取った時も、ただメッセージが届いたというより、その人自身や生活の一部分を受け取ったような、独特な重みを感じました。

本やフリーペーパー、映画の中にいた憧れの人が「幻じゃない。同じ世界に生きている!」って。お手紙を受け取った時点でたくさんの感動をもらったんです。

それから1~2カ月ほどのやりとりの中で、「行ってもいいですか?」「来てもいいですよ」「じゃあ、行きます」という話になって、数人の方々のもとへ会いに行きました。
どんな出会いがありましたか?

津さん: 青森県にある悩みを抱えた人たちを食でもてなし癒す場「森のイスキア」を訪ねたり、屋久島にある助産院兼民宿で1カ月ほど住み込みのアルバイトをさせてもらったり。

今も交流が続く、福島県にある「天然酵母パンと焼き菓子 食工房」の青木さん。青木さんは「獏の空の下から・・・」という通信を発行されていて、それをオルタナティブな生き方を提案してくれる書籍、オーガニックの食材や日用品などを取り扱うお店で見つけて、お手紙を書いたのが始まりでした。

お手紙のやりとりを経て、何度か泊りがけで、うかがわせてもらったんです。

青木さんは当時、山奥に暮らしておられて、電気もガスも通っていない、電話もつながらない、テレビもない、あかりはランプ、火は薪でという生活をされていました。

大きな経済から離れた生き方をしようと、自分たちでパンを焼いたりお菓子をつくったりして、郵便で注文を受け付けておられました。また、6人のお子さんがおられて、学校ではなく家庭で教育するホームスクーリングを実践されていたんです。

「こんな生き方もあるんだな」とユニークな生き方をされていることに心惹かれました。そうした生き方を選んだのは、さまざまな経験や想い、考えなどがあってのこと。私自身が抱えていた悩みと通ずるところもあって、会って間もない方だったのに、デリケートなことまでお話しできるようになりました。

そのほか、大学4年生から卒業後1年という2年弱の期間に、いろんな方々に会いに行きました。出会う先々で言葉をかけてもらったり、手を差し伸べてもらったり、本当にいろんな方々に助けていただいたことを思い出します。

生きづらさを抱えていた津さんにとって、それらの出会いがどんな影響をもたらしてくれましたか?

津さん: 自分のまわりにいる人たちとは違う価値観を持った人たちと出会えましたし、「それ、いいですよね」「そんなことを大切にしていきたいですよね」というものを共有できる人たちとつながることができたことは、私にとって大きな出来事でした。

当時の私は「生きている」という実感が得られず、「こう生きていきたい」という生きる意欲も持てず。きっと、生々しい生き方に触れたかったのだと思います。だから、豊かな自然に囲まれて暮らしたり、大きな経済から離れて生きたりしている人たちに憧れていたのでしょうね。

実際にその方々の生きている世界を少し見せてもらったことで、「こうして山奥で畑仕事をずっとして暮らしていくのは、自分には難しいかもしれない」など、自分にはできそうにないこともわかってくるんです。それも、私にとって必要な経験でした。

いただいたお手紙は手もとに「物」としても存在しています。まるでお守りみたいに心を支えてくれていたことも思い出します。

青木さんからの絵はがき。交流は続いていて、出会うきっかけになった通信を郵送してもらったり、時々パン、12月には必ずシュトーレンを買ったり、お手紙を書いたりされているそうです。現在は青木さんのお子さんたちが一緒にパン屋さんを営んでおられるそうで、Facebookやインスタグラムなどウェブ上でもつながっているとのこと。
(2020年10月取材)
<お話をうかがって>

津さんがおっしゃられるように、今はtwitterやインスタグラムなどを使えば、自分が「いいな」「素敵だな」と思う世界とつながり、共通点を持つ人たちと出会えるチャンスが増えています。

一方で、そういうチャンスがたくさんあるからこそ、ウェブ上でつながるだけで満足してしまっている部分もあるかもしれないなと思いました。

「当時は細い糸を手繰っていくみたいな感じで一歩一歩、自分の足で世界を広げていくという感覚がありました」と津さん。お手紙が届くことさえも奇跡と感じられるように、一つひとつのことに対して、「当たり前」と思わず、流さず、それが起こることの重みを感じられたら、世界の見え方がまた変わるような気がしました。

また、お手紙は物質として手もとにあることで、お守りのようになっていたというのも素敵だなと思います。

私も、その時々で自分の支えになったお手紙を机の引き出しなど身近に置いて、何度か読み返すことがありました。中身を読まなくても、思い出せることがあったり、その物から発せられるものがあったり。本当に、お守りのようなんです。

次回は「年に1度、その人とやりとりできるチャンス編」。年賀状を書く枚数を減らすなどした時期もあったという津さんが、年に1度の機会を大切にしていこうと思い直した出来事についてお話をうかがいます。
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レターセットや絵葉書、季節の切手を見つけるたび、「誰に書こうかな?」「あの人は元気にしているかな?」などアレコレ想像してはトキメク…自称・お手紙オトメです。「お手紙がある暮らし」について書き綴ります。
小森 利絵
フリーライター
お手紙イベント『おてがみぃと』主宰

編集プロダクションや広告代理店などで、編集・ライティングの経験を積む。現在はフリーライターとして、人物インタビューをメインに活動。読者のココロに届く原稿作成、取材相手にとってもご自身を見つめ直す機会になるようなインタビューを心がけている。
HP:『えんを描く』
 
『おてがみぃと』
『関西ウーマン』とのコラボ企画で、一緒にお手紙を書く会『おてがみぃと』を2ヵ月に1度開催しています。開催告知は『関西ウーマン』をはじめ、Facebookページで行なっています。『おてがみぃと』FBページ

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