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小森 利絵 フリーライター えんを描く
レターセットや絵葉書、季節の切手を見つけるたび、「誰に書こうかな?」「あの人は元気にしているかな?」などアレコレ想像してはトキメク…自称・お手紙オトメです。「お手紙がある暮らし」について書き綴ります。
おてがみじかん ライフスタイル 2018-09-28
お手紙とわたし~楢村久子さん編①~
私のまわりにいる「日常の中でおてがみじかんを楽しんでいる人」にインタビュー。2人目は楢村久子さんです。

楢村さんとは、ある手づくり作家さんのホームページにあった掲示板(ホームページを訪問した人が自由にメッセージを書き込むことができる場)を通して出会いました。お互いのホームページやブログを行き来して掲示板等でコメントを交わすうち、いつしかお手紙でのやりとりも始まり、お誕生日プレゼントを送り合うようにも。

そして10年の歳月を経て初対面。今では「おてがみ部」として定期的に集まって一緒にお手紙を書く時間を楽しんでいます。

季節感を感じさせるレターセットでお手紙をくださったり、「こんなアイテムがあるんだ」といつも楽しいアイテムを教えてくれたり。日常の中で気軽にお手紙を楽しんでいる楢村さんのインタビューを3回に分けて紹介します。

第1回目は「気楽に楽しむ編」です。
どんなふうに日常の中で「おてがみじかん」を楽しんでいますか?
楢村さん:誰かにお手紙を書きくなって住所録を見ながら「どうしているかな?」と気になる人を探したり、雑貨店や展覧会でポストカードを見て「この絵、あの人に見せたい」と思ったり、その時々でお手紙を書くことを楽しんでいます。

中でも、ポストカードは気軽で気楽。切手を貼って住所を書いたら、メッセージを書くスペースは残りわずかだから、気負わずに「元気にしている? かわいいポストカードを見つけたから送るね」とメール感覚で送れるので気に入っています。

メッセージがシンプルでも、特別な用事がなくても、ポストカードの絵柄が魅力的ならそれで十分。

以前、旅先でカエルのかわいらしいポストカードを見つけたので、「カエル好きの、あの子にぴったり」と送ったら、「すごくかわいい。私がカエルを好きなことを覚えてくれていて嬉しかった」と喜んでもらえたことがありました。
いつ、何がきっかけで、手紙を書く習慣がついたのですか?
楢村さん:小学3年生の時に仲良しの友だちが引っ越したのを機に文通するようになったことでしょうか。中学生になると、友だちのお誕生日にバースディカードを贈るようになって、それは現在も続けています。

年齢を重ねるほどに自分のお誕生日を祝ってもらう機会が減ってくるから、メールやラインでのメッセージも嬉しいんだけど、わざわざ感のあるバースディカードならより一層特別なものに。絵柄が素敵だったら、カードそのものがプレゼントにもなります。

友だちからは「お誕生日をよく覚えているね」「今年も覚えていてくれてありがとう」と喜んでもらっています。

中には「今年もいろいろあったけど、年に1回お祝いしてもらえるのは嬉しい」とわざわざお手紙で返してくれた子もいます。最近バードウォッチングにはまっているらしく、ハガキは鳥の絵柄。それを見た瞬間、なんか彼女らしいなって嬉しくなりました。

ずっと会えていなくても、こうしてやりとりできることが楽しいですね。

時には「お誕生日、もう今日やん」ということもあります(笑)。その時はバースディカードに「遅れてごめんね」とお詫びの言葉を添えて送るか、メールやラインでお祝いのメッセージを送って、+αで伝えたいことがあればじっくりとお手紙を書くこともあります。
「お手紙に何を書いていいのかわからない」という声を聞きます。楢村さんはお手紙を書く時に意識していることはありますか?
楢村さん:かしこまらず、会っておしゃべりする感じで書くことです。私の場合、そうじゃないと書けないんですけど(笑)。

たとえば、時候のあいさつといえば、秋なら「仲秋の候」などありますが、いちいち調べなきゃと思ったら、なかなか書き出せなくなってしまうから気にしない。「涼しくなってきたね」「雨が続くね」と実感のこもった自分の言葉で書きます。

続けて「元気?」「最近、何をしていますか?」、その後は「私は相変わらず、やかましく元気ですよ」「最近はこんな仕事をしていて、こんな感じ。息子は就職したよ。夫とはこんな感じで。そっちはどうしている?」。

久しぶりの相手ならお互いにそれぞれの状況がわからないから、「こんなことがあったよね」と昔の思い出話を書いて、「最近はこんな感じ」と近況を添えます。

書き間違えたら一から書き直しなんてせず、親しい間柄でのお手紙なら「あ!間違えた」と修正ペンなどでピッと消して書き直しちゃいます。話題も書いているうちに、あちこちに飛んじゃうけど、おしゃべりしていたら、それも日常茶飯事だから気にしない。

ばあぁっと書いて「いろいろ勝手なことを書いてごめんね。またね」と締めくくっています。

20代の頃、友だちとまるでお互いの個人の日記をお手紙に書き合っていたことがあって、その時にだいぶ鍛えられたように思います。
「個人の日記のようなお手紙」とは?
楢村さん:その友だちとは学生時代、それほど仲がいいという感じではなく、一緒のクラスになったのも1度きり、その時に少し絡んだことがあるなあ程度だったんです。

でも、私は彼女のことがとっても好きで、卒業後になぜかお手紙のやりとりが始まって、近況報告をし合うようになっていました。

その内容が「何月何日、こういうことをしています」「今日はこんなことがあって、こう考えたのですが、どうなんでしょうか」「誰々とこんなことがありました」と、まるで日記に書くようなもの。

それに対して、私はちょこっと思ったことを書きつつ、同じように「何月何日、こんなことがありました」「会社でこんなことがありました」と。書いていると膨大な枚数になって定型サイズをオーバーしちゃうから、航空便用の薄い便箋に書き綴るようになっていました。

その彼女とは今でも年に1回お手紙をやりとりしていますが、その個人の日記のような内容はその一時期だけ。その時のやりとりが今もなお印象に残っていて、お手紙だから「用件のあるものを」なんて気負わなくても、お互いの日常を書き合ってやりとりするのも楽しいなあと思ったんです。
お手紙で「これは失敗したなあ」「こんな嫌な思いをしたことがあるなあ」といった経験はありますか?
楢村さん:嫌なことはすぐに忘れるタイプだから、あまり思い浮かばないけれど。付き合っていた彼から、お手紙で振られたことがあります。今でもそのお手紙を持っていて、「とっておくなよ~」と自分でも思うけれど、なぜか捨てられない。

彼は電話で別れを告げるのは失礼だと思ったらしく、お手紙で「どうして別れるのか」について説明してくれていて、当時それを読んだ私は相当ショックを受けたでしょうけど。それから何十年も経った今読み返したら、「そんなに深刻にならんでも」と笑えるかもしれませんね。

あと、これはメールでの話ですが、メールをやりとりする中で自分の近況として家族のことも書いたら、「あなたのだんなさんやお子さんの話にはまったく興味がありません」「あなたみたいに気楽じゃない」と言われたことがあります。

家族の自慢話を書いたわけではなくて、世間話みたいに家族の話を書いただけなんですが、当時彼女はシングルマザーとして気を張って生きていたから、そう受け取られてしまったんでしょうね。

この人はこういう話は嫌なんだとわかったから以降は一切そのことを書かないようにしましたけど、その時々の相手が置かれている状況によっても受け取り方が変わってくることを感じた出来事でした。

今、お手紙をやりとりしているのは、学生時代からの友だちなどわりと気心が知れている人ばっかりだから「嫌なら読み飛ばしてね」という感じだし、「またあのおしゃべりが書いてきたわ」くらいに思ってくれていたらいいなという気持ちで書いています。

(2018年6月取材)
その場で1枚、お手紙を書いてもらいました。

楢村さんが好きなイラストレーターの橋本京子さんのポストカード。橋本さんが参加していた展覧会で、この「黒猫ふらわぁ」のポストカードを見つけて、猫が好きなお友だちに送ろうと思ったそうです。
このポストカードと出会ったこと、それを見て相手の顔が浮かんだこと、イラストレーターさんから聞いたこと、このお手紙を書いている今の感じていることなど、たった100文字ほどのメッセージの中に、たくさんの想い、時間が込められていて、素敵だなあと思いました。

お手紙を送るほうは、便せんを用意して、メッセージを書いて、封筒に入れて、住所を書いて、切手を貼って、ポストに投函する。受け取るほうは、郵便受けを見て、中から取り出して、封筒を開けて、読む。というように、お手紙はわざわざ感のあるものです。

そんな手間のかかるお手紙だから「何か大事な用事がないと」「メッセージをたくさん書かなくては」と思ってしまいませんか。それが書くことを億劫にさせる一因になっているのではないかなあと思うんです。

でも、お手紙には書き綴られた言葉だけではなくて、こうした想いや時間もちゃんと宿っていて、伝わる人には伝わるのではないでしょうか。

次回は「多彩なツールで楽しむ編」として、メールにライン、メッセンジャー、お手紙とさまざまなツールでコミュニケーションを楽しんでおられる楢村さんに、それぞれの使い分けや多様な方法を選べるからこそのおもしろさについてうかがいます。
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レターセットや絵葉書、季節の切手を見つけるたび、「誰に書こうかな?」「あの人は元気にしているかな?」などアレコレ想像してはトキメク…自称・お手紙オトメです。「お手紙がある暮らし」について書き綴ります。
小森 利絵
フリーライター
お手紙イベント『おてがみぃと』主宰
編集プロダクションや広告代理店などで、編集・ライティングの経験を積む。現在はフリーライターとして、人物インタビューをメインに活動。読者のココロに届く原稿作成、取材相手にとってもご自身を見つめ直す機会になるようなインタビューを心がけている。
HP:『えんを描く』
 
『おてがみぃと』
『関西ウーマン』とのコラボ企画で、一緒にお手紙を書く会『おてがみぃと』を2ヵ月に1度開催しています。開催告知は『関西ウーマン』をはじめ、Facebookページで行なっています。『おてがみぃと』FBページ

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