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アメリカ人の夫と今年で国際結婚生活11年目。2児の母。フロリダ ディズニーワールドにて勤務4年。日本へ帰国後、生まれ育った関西北摂地域で英会話講師のエージェントの仕事の傍らイラストレーターとして活動中。母として、働く女性として、アーティストとして3つの視線から書き綴る心のコラム。
いつも心に太陽を ライフスタイル 2017-02-15
A taste of home
私にはアメリカに住んでいる日本人の友人がいて、彼女とは知り合って13年の長い付き合いになります。

元同僚で同じ年にアメリカ人男性と結婚して、同じ町の近所に住み始めたこともあり、アメリカでの様々な経験と想いを共有してきた友人というよりは、私にとってはアメリカに置いてきた自分の分身のような存在です。

不慣れな海外生活を共に支えあった戦友であり、赤裸々に結婚生活を相談できる頼りになるカウンセラーでもあります。

私は結婚してアメリカに4年住み、日本に帰ってきて7年になります。彼女は結婚して以降、アメリカにそのままずっと住んでいるので、アメリカ生活ももう11年超えたことになります。

先日そんな彼女とスカイプで話しをしていたら、

「ここには朝起きてこれが食べたいというものが無いのよ。それが悲しくて」

「日本だったら色々あるでしょ」

「朝に日本のあの美味しいふわふわのパンが食べたいわ」

という話になりました。

「私は朝はいつもシリアルだよ。しかもアメリカから買ってる」

と私がいうと、友人は驚いて二人で爆笑しました。

アメリカの友人は日本の朝ごはんが恋しくて、日本に住んでいる私はアメリカのシリアルをわざわざ買って食べているのです。

我が家では、朝ごはんはいつも鳥の餌のようなヘルシーな味のするシリアルか、冬はオートミールで、日本のシリアルを買うのとそんなに価格も変わらないので、夫のためにアメリカから個人輸入して買っています。

食べ物について考えるとき、私はいつも味や食材を超えた、人間の心の穴を補うためのものだと思います。

特に海外で暮らしている場合は、心が不安定な時は特に、幼少時代に食べた故郷の味、A taste of homeが恋しくなるのです。国内でも地方から離れて暮らしている人達は、故郷の味が恋しくなるのだろうなと思います。

そのホームの懐かしい味が、孤独な心の癒しになり、海外暮らしで心が自分のルーツと切り離された状態で、糸の切れた凧のようになってしまった時、一時的でも錨のような作用が働く安定剤になるのです。

日本に住んでいると、アメリカで暮らしていた頃に食べていたものが懐かしくて食べたくなり、アメリカに住んでいると日本のものが食べたくなります。これは夫と、この二つの国を行ったり来たり生活してゆく限り一生続くのではないかと想像します。

海外旅行の数週間であれば、私は日本食を食べなくても全く問題なくやってゆけますが、住むとなると話は別です。

アメリカに住み始めてちょうど3ヶ月ごろ、ずっと日本の白米食べていなかった時に、現地に40年以上住んでいる、見ず知らずの日本人女性に声をかけてもらって、「一緒に食べましょうよ」と昆布のおにぎりを手渡されたことがありました。

その女性の「こんなものでも、こんなところで食べたら美味しいでしょう?」という言葉とそのおにぎりの味が、日本の味に飢えてカラカラになっていた私の体に、染み渡るような美味しさであったことが今も忘れられません。

アメリカで暮らしていた頃は、アジア食材を扱うスーパーマーケットに毎週のように通い、そば、ラーメン、ちらし寿司の素、カレーのルー、焼肉のたれ、賞味期限が書いていない、もはやいつのものか見当もつかない冷凍の納豆など、日本の5倍くらいする値段でたくさん買い込んで食べていました。

しかし日本に帰ってきて日本で暮らし始めると、日本の食材に全く興味がなくなり、今度はアメリカのスーパーで売っていたものをどうにか購入できないかと探し回り、アメリカの価格の3倍くらいする値段でも購入して食べているのです。

なんと不経済なことをやっているなと自分でも呆れてしまいます。夫と二人で、ヨーロッパにでも住んでみたらどうなるのかとも想像します。そしてようやく2人とも故郷のものを買いあさるのをやめるのか、日本とアメリカの食材の両方を買いに回ることになってしまうのか・・・?

海外旅行のクルーズ旅行に、わざわざ炊飯器を持ってこようとする日本人観光客がいると、海外旅行会社で働いていた友人が話していました。

クルーズ旅にはもちろん豪華な食事が3食含まれていて、炊飯器と白米を持ってゆく必要は全くないのですが、そういう人も、日本の米が無い異国の地で、何週間も自分がやって行けるかが不安なのかなと想像します。米がないと生きていけないという嗜好の問題というよりは、心の問題のような気がします。

最近、うちの近所のご老人と、日本の漬物について立ち話になりました。

寒い日だったのですが、その方の漬物の話が面白くて、時間を忘れて話にのめり込んで聞いていました。あまりに漬物に詳しいので、色々質問してみると、百貨店に卸したり、お漬物のお商売をずっとしていたそうです。

「今も庭に何個も漬物の大きな壺があってな、季節ごとに色々つけてるねん」

「漬物は生き物やからな、その食べる人の体の調子とぴったり合わんとおいしくないねん」

「今の時期は大根の漬物がうまいなぁー」

「もうこの歳になると、食べ物は旨い漬物とご飯だけでいいねん」

冬のグレー空を見上げながら、「旨いなぁー!あー旨いなぁー」という溜め息混じりの話を聞いていると、今までの人生、全く漬物に興味がなかった私でさえ、その”旨いなぁー”のお漬物がどうしても一口食べてみたくなるから不思議です。

この漬物の話を聞いた日以来、どうもこのおじいさんの漬物が食べてみたくて仕方がありません。そのおじいさんを見かけると、服を着たお漬物にさえ見えてくる、禁断症状まで出てきた今日この頃です。

故郷で幼少時代に食べたものは、心のバンドエイドであるというセオリーとともに、食べ物は私たちの体に埋め込まれた、先祖から受け継がれたDNAに反応する動物的なものではないかとも思えてきました。

私の体の中の日本のご先祖様たちのDNA が、「その旨いなぁの漬物を一口食わせろー!」とデモ活動をして私に訴えているようにも感じます。

今度会ったら勇気を出して、おじいさんのお漬物をちょと一口味見できないものか聞いてみようと思っています。
ガードナー 瑞穂
アメリカ人の夫と今年で国際結婚生活11年目。2児の母。 フロリダ ディズニーワールドにて勤務4年。 日本へ帰国後、生まれ育った関西北摂地域で、英会話講師のエージェントの仕事の傍ら、 イラストレーターとして活動しています。コラムに掲載しているイラストのサイトはこちら
英会話アルテミス
豊中と箕面のカフェで習うマンツーマン英会話。お洒落なカフェレッスン。レッスンは毎回払い。
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