芸名を考える夏休み@宝塚音楽学校 |
舞台から夢を届けてくれるタカラジェンヌ 芸名もそれにふさわしく、夢があり華やかなものが多いです。 宝塚歌劇団では創立当時、小倉百人一首にあやかった芸名をつけていました。 天津乙女(あまつ おとめ)、小夜福子(さよ ふくこ)、 富士野高嶺(ふじの たかね)、神代錦(かみよ にしき)、 霧立のぼる(きりたち のぼる)などは、 元になった句がわかりやすいのではないでしょうか。 しかし、数に限りがある百人一首から芸名をつけることは難しくなり、 しだいにより自由な発想で芸名をつけるようになりました。 2015年8月1日現在、宝塚歌劇団に在籍中の生徒数は404名。 (専科16名、花組75名、月組80名、雪組80名、星組77名、宙組76名)。 404人分の芸名に使われている漢字を分析したところ、 一番多かったのは「月」で31名。 続いて「美」28名、「真」27名、「花」26名、「乃」25名でした。 一般の名付けと同じように、流行りはあるものの、 上位にあがった字は時代を問わない タカラジェンヌらしい文字と言えるかもしれません。 宝塚音楽学校本科生にとって8月は芸名を考える月です。 印象の良い字、画数、音の響きなど、様々なことを考慮に入れて 考えていることでしょう。 夏休みの間に考えた芸名は、新学期が始まる9月に宝塚音楽学校に提出します。 宝塚音楽学校が全員分をまとめて宝塚歌劇団に提出し、審査を受け、 冬休みのころまでには全員芸名が決定するという流れです。 今月は元宝塚歌劇団 毬穂えりなさんにお話をお聞きしました。 |
毬穂えりなさんは第80期生の娘役さん。 1998年香港公演に研究科4年生で参加され、 新しく設立された宙組の初代メンバーに選ばれました。 2006年に宝塚歌劇団を退団されてからも、抜群の歌唱力を生かして、 ディナーショーやライブ活動等、歌を中心に活躍されています。 ⚫︎ご自身の芸名について教えて下さい。 宝塚歌劇団では芸名は基本的に本人がつけます。 夏休み中に考えるので、家族と相談して決める人もいますが、 私は恩師にご相談して名前をつけていただきました。 ただ、「毬」という字は最初から入れたいと思っていました。 というのもファン時代に毬谷友子さん(雪組の娘役さん)の舞台を拝見したとき、 素晴らしい歌唱力に衝撃を受け、「私もこんなふうに歌えたら」と憧れたのです。 その後宝塚音楽学校に合格したわけですが、 憧れの毬谷友子さんに少しでも近づけたらという思いで、 恩師に芸名に「毬」という字を入れていただきたいとお願いしました。 私だけではなくて、芸名に憧れの上級生の方のお名前の字をいただくのは 一番多いパターンではないかと思います。 同期の中には赤ちゃんの名付け辞典を参考にしたり、 歴史好きな人は、歴史上の人物や出来事にまつわる名前を考える人もいました。 二文字目の「穂」は実りの穂ということで縁起も良いですし、 ”実るほど頭を垂れる稲穂かな”の言葉のように 初心を忘れず謙虚に、という意味が込められています。 この苗字に合っていて画数が良いものをと恩師が考えてくださった名前が 「毬穂えりな」でした。 私は洋服を選ぶ時にもインスピレーションでパッと決める性格で、 できた芸名を見せていただいた時に 「あ、この名前すてき」とすぐに決定しました。 ただ、宝塚歌劇団のチェックがありますから、 芸名は一つだけではなくて、第一希望、第二希望と複数出すのが普通です。 私は恩師が考えてくださった「毬穂えりな」「毬穂いのり」の二つを提出しました。 私は宝塚歌劇団の80期生です。 「80」という数字はきりがいいし、 末広がりの「八」で縁起のいい数字だと思っているのですが、 芸名に関して、80期生は全員、第一希望の名前に決まりました。 これは珍しいことかもしれませんね。 ⚫︎芸名に関する劇団ルールはありますか? 自分の芸名が、上級生の方と同じ漢字を使っていたり、 読み方が同じの場合、そのかたのところにご挨拶に伺います。 とは言え、すでに宝塚歌劇団を卒業されているかたのところには 何か機会がないと名前に関するご挨拶には行きません。 ですから、憧れてお名前をいただいた毬谷友子さんには、 残念ながら、まだご挨拶させていただいたことがないのです。 いつかお話しさせていただくチャンスがあれば嬉しいです。 反対に、上級生のかたからお声をかけていただいたことがありました。 私が入団した時には、退団なさっていた藍エリナさんが、 1998年の香港公演の振り付けを担当されました。 そのお稽古場で下の名前が同じだということで、お声をかけてくださったのです。 その後も、可愛がってくださってありがたいです。 不思議なもので、同じ漢字や読み方の芸名の下級生が入団すると 私もやはり注目してしまいます。 藍エリナさんがお声をかけてくださったように、 私も今度楽屋に行った時に声をかけてみようかしら、と思います。 ●芸名に関するエピソードを教えてください。 「毬」という字がつくお名前といえば、 星組のトップ娘役さんだった毬藻えりさんがいらっしゃいます。 その印象が強いのでしょうか、下の名前も二文字同じだからでしょうか、 「毬藻さん」「まりもちゃん」と呼ばれることがよくありました。 初舞台の頃はまだ「毬穂えりな」という名前に実感がわきませんでした。 慣れるまで3,4年かかったかもしれません。 でも今では本当に愛着が湧いていて、 逆に本名で呼ばれた時に一瞬誰のことだろうと思ってしまうくらいです。 私は芸名はほとんど即決したとお話ししましたが、 逆に時間がかかったのがサインでした。 サインも基本的に自分で考えます。 芸名が決まってすぐにサインを考え始めたのですが、 画数の多い字をどうくずせばカッコよく見えるのか、 試行錯誤の連続でした。 だから、入団したあともサインは微妙に変化していって、 安定するまでは何年もかかりました。 先日、初舞台の頃のサイン色紙が出てきたのですが、 自分のサインだとわかるまでしばらく時間がかかったくらいです。 ●今 芸名を考えている宝塚音楽学校本科生に一言お願いします。 生まれた時の名前は両親や家族など、他の人がつけてくれます。 自分で自分の名前を決めるなんて、考えてみれば本当に貴重な経験ですし、 希望すれば改名ができるとはいえ、一生付き合っていく名前です。 自分が心から好きになれる名前を考えてくださいね。 自由に、でも考えすぎずに、自分のインスピレーションを信じて。 「この名前が良い!」とひらめく名前こそ、 自分が一番輝くことのできる名前だと思いますから。 以上、毬補えりなさんのお話でした。 それぞれの夢や思いがこもった芸名。 タカラジェンヌお一人お一人の芸名の由来に 思いをはせるのも興味深いかもしれません。 また、来年の春、宝塚歌劇団に入団する102期生の芸名にもご注目ください。 ▪取材ご協力・お写真提供:元宝塚歌劇団 毬穂えりな様 |
池田 千波留 タカラジェンヌ歳時記 コラム一覧>> |
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