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池田 千波留 パーソナリティ、ライター 香のん
(←プロフィールは写真をクリック)宝塚歌劇の魅力にぐいぐい迫っていきます!
タカラジェンヌ歳時記 趣味・カルチャー 2015-09-18
世界からTAKARAZUKAへ! 外国人ファンじわじわ増加中
今年(2015年)の夏、台湾で宝塚歌劇団花組公演が開催されました。

宝塚歌劇団が初めて海外公演を行ったのは1938年のヨーロッパ公演。
ドイツ、イタリア、ポーランドを周りました。
その後、2013年の台湾公演まで、合計25回17カ国、120都市以上で
公演を開催しました。

台湾公演は2013年星組公演以来2度目のこと。
東日本大震災の際、台湾からは多くの温かい支援が寄せられたことは
記憶に新しいと思います。

前回の星組公演は、その支援に対する感謝を表すだけでなく、
宝塚歌劇団のアジア進出を視野に入れたものでした。
その公演が好評だったため、わずか2年のちの今年、
花組の台湾公演が開催されました。

花組公演の初日だった8月8日は、あいにく台風が上陸。
初日が1日延期されるという予期せぬ事態になりました。
客足も心配された中、約1週間の公演は連日の盛況で、
あまりの歓迎ぶりに感動した花組トップスター明日海りおは
千秋楽のあいさつで涙を流していました。

おそらく台湾公演はこのあとも頻繁に開催され、
宝塚歌劇団のアジア進出の拠点となることでしょう。

一方で、宝塚歌劇団に魅せられて来日したり、
好きが高じてついには日本に(宝塚市に)住むまでにいたった外国人ファンがいます。

外に外にと出て行くことも大切ですが、
日本にいる外国人宝塚ファンを大切にし、
世界に発信していくこともまた、宝塚歌劇のために大切なことではないでしょうか。

今月は、現在宝塚市に在住のCatie Grotherrさんにお話を伺いました。
(以下、Catieさんのことはケイティさんと表記します。)

ケイティさんはオーストラリアご出身。
2004年、高校生だったケイティさんは
語学研修のため来日され、東京や広島を回ったそうです。

運命の出会いは2年後でした。
高校を卒業したケイティさんは、再び来日。
半年間大阪の高校に留学しました。
日本と違い、秋に高校を卒業するため、
大学に入る前の期間をうまく生かしたわけです。

ある日、ホストファミリーと梅田を歩いている時、
ケイティさんは一枚のポスターを目にし、興味を惹かれます。
「コレ、ナンデスカ?」
帰ってきた言葉はただ一言。
「ああ、それ?タカラヅカ」。

あとで調べてみると、ケイティさんが見たのは、
宝塚歌劇団宙組公演
ミュージカル『NEVER SAY GOODBYE』の公演ポスターでした。

ホストファミリーは宝塚歌劇には全く興味がなく、
それ以上の進展はのぞめません。
そこでケィティさんはインターネットを駆使し、情報収集にあたることに。

そして同じオーストラリア人の書いた英語の論文を見つけたのです。
それは宝塚歌劇ファンの生活を社会学的に分析したものでした。

それによると、宝塚歌劇の(ディープな?)ファン生活は…

ファンクラブ(*注)に入会し、会報などを受け取り、
チケットを取ってもらう。

みんなで整列して おめあてのスターさんを待ち、
楽屋に入るのを見届ける「入り待ち」。
公演やお稽古が終わるのを待ってお出迎えする「出待ち」。
人気スターの場合、一般ファンからもみくちゃになるのを防ぐため
列を組んで「ガード」をしたりもする。
その際は、他の人たちと区別がつくように
会服(ファンクラブで作るお揃いの服)を着る。
公演期間中に一度開催されるお茶会では、
普段化粧のスターさんからいろいろな話が聞ける…Etc。

宝塚ファンの行動や生活は、
これまでケイティさんが体験したことのないものばかり。

「世界中探しても、こんなユニークなファン活動は他にはないかも。
面白そう!!私、こんな生活を送ってみたい!」
ケイティさんはなんと、宝塚歌劇の公演を観る前に、
宝塚ファンとして生きる道を選んだのでした。

そして帰国前に
月組『暁のローマ』、花組『ファントム』、星組『コパカバーナ』を観劇。
この時点で「星組が良い!」と、星組ファンとなったのでした。

半年の留学生活を終えたケイティさんは帰国し、
アルバイトに励み、貯金し始めます。
宝塚ファン生活を送るために。

そして2007年、ケイティさんは日本に3週間滞在しました。
その間、東京宝塚劇場で星組『シークレットハンター』、
宝塚大劇場で宙組『バレンシアの熱い花』、
梅田芸術劇場で花組『あさきゆめみしII』、
東京宝塚劇場で雪組『エリザベート』、
そして都内のホテルで開催されたディナーショー『宝塚パリ祭』と、
観劇三昧の日々を過ごしました。
また、毎日公演を見るだけでなく、楽屋入りと楽屋出も楽しみ、
「これが宝塚ファンの生活だ!と、夢のようでした」と語ります。

以来、大学の休みごとに日本にやってきていたケイティさん。
現在は日本で就職し、宝塚市に住んでいます。
ごひいきのタカラジェンヌのファンクラブにも入りました。

ケイティさん以外にも、宝塚にハマっている外国人のかたは
たくさんいらっしゃいます。
ケイティさんはその中でフロンティア的存在です。

この後は質疑応答の形で、
外国人宝塚ファン生活についてケイティさんに語っていただきます。

*注:宝塚歌劇団には宝塚友の会という公式ファンクラブがあります。
そして、劇団は正式には生徒個人のファンクラブを認めていません。
ですが、実際には個別のファンクラブが存在し、
チケットの取りまとめなどを行っています。
ファンクラブは、一般芸能人のファンクラブのような会社組織ではなく、
それぞれのスターを応援する一般人がボランティアで運営しています。
おそらく、詳しく研究すれば論文が書けるくらいの特殊な存在だと思いますが、
ここではこれ以上触れません。
なお、今月のコラムで表記する「ファンクラブ」は全て、
生徒個人のファンクラブをさします。
⚫︎お仲間をご紹介ください。
写真向かって左から、
リディア・ウェルズ(イギリス):月組ファン
ケイトリン・ボイル(アメリカ):雪組ファン
私(オーストラリア):星組ファン
アネ・ローゼ(ドイツ):雪組ファン
そしてモーリー・ウィン(アメリカ):全組のファンです。

最初は楽屋入りや出待ちに外国人がいると目立っていましたが、
顔馴染みになるにつれ受け入れてもらえるようになり、
ある人が私たちのことを「外人部隊」と命名してくれました。
写真に写っているのは外人部隊のごく一部で、
他にもスゥエーデン人、フィンランド人、マレーシア人、
中国人、フランス人がいます。
私たちはルームシェアするなど、
協力しながら宝塚ファン生活を送っています。

⚫︎入りたかったファンクラブに入会していかがですか?

私は最初、星組にいらっしゃった男役さんのファンクラブに入会しました。
でも、他の人たちは入会をお断りされる人が多かったんです。
それはおそらく言語の問題だと思います。
会報や、チケット申し込みの書類などは日本語で書かれています。
楽屋入りや出の時間、待つ場所などの連絡も日本語です。
私は日本語を勉強していたから、読み書きができましたが、
そうではない人も多かったんです。
それに会報などを海外に発送するなど、
ファンクラブ側が負担に感じることも多かったのでしょう。
でも今は、入会できるファンクラブが増えています。

ファンクラブに入った当初は、とまどうことだらけでした。
宝塚独特のルールが全くわからないものですから。
たとえば、入りや出を待つ場所はスターさんの学年順で決まっているとか、
(自分が応援している人より)上級生のファンの前を歩いてはいけないとか、
会服をどのタイミングで着るといいのか、といったことです。
でも、そういう決まりごとを嫌だと思ったことはありません。
だって、これが宝塚の文化。
私が英語の論文を読んでやってみたいと思った生活そのものですから。
揃いの会服を着て、静かに並んでガードをしているときに、
向かい側の人とふと目があってニッコリアイコンタクトするのがとても楽しい。
堅苦しいとか面倒だとか思いません。

逆に、まだ数が少ない外国人ファンの私たちが
ルールを守らず好き勝手をしたら、
後に続く外国人ファンが受け入れてもらえないと思って責任を感じています。

ファンクラブに入った外国人が悩むのが文章でのコミュニケーションです。
いろいろな問い合わせをメールですることが多いのですが、
日本的なメールが書けなくて誤解を生んでしまうことがあるのです。
たとえば、チケットの申し込みに関しての問い合わせをするときに、
いきなり本題を書くのではなくて、
「⚫︎⚫︎様、いつもお世話になっております。今度の公演のチケットですが…」と
ひとこと入れて柔らかな文面にするのが日本のメール。
それが苦手な外国人のために、私が目的ごとの例文を作って
参考にしてもらっています。

その他、宝塚ファンとしてのルールについて、
ファンクラブのスタッフさんに細かくお聞きしたことを、
メールで共有するようにしています。
私たちはフロンティア。
後に続く外国人ファンのために、ファンの鑑でいたいと思っています。

⚫︎ポスターでインパクトを受けたとはいえ、どうしてそんなに夢中になれたのでしょう?

私はもともとミュージカルが好きだったんです。
14歳のころ友だちとミュージカル映画『TOP HAT』のビデオを見ました。
そのときに友だちと「現代の男性は品がないから、今これを再演するんだったら
女性でやったらいいんじゃない?」と話しました。
まだ宝塚歌劇団を知らなかったのに。
今年宙組が『TOP HAT』を上演すると決まったとき、
「子どものころオーストラリアで言っていたことが実現した!」と興奮しました。
それから歴史ではフランス革命に興味があって、
『スカーレットピンパーネル』は9歳のときに読みました。
思えば、どれも宝塚ファンになる要素でしょう?

私以外の外国人が宝塚ファンになったきっかけを聞いてみると、
おおまかに二つでした。
一つは私と同じくミュージカルが好きなこと。
もう一つはアニメが好きなこと。
YouTubeで、ミュージカルやアニメを検索してるうちに
「おすすめ動画」に宝塚歌劇があがってくることが多いのです。
それを見て、いつの間にかのめり込んでしまったと。

宝塚歌劇は世界でも本当に珍しい劇団です。
私は将来オーストラリアに帰るかもしれないけれど、
あと数年は日本にいて、宝塚ファン生活を満喫したいです。

⚫︎最後に、世界の人たちに、ケイティさんの思いを発信してください。

At its core, Takarazuka really is all about love.
There’s a warmth and a passion in and around the theatre
that’s unlike anything else I’ve experienced.
It’s in the high romances of the shows, the friendship and 
support the performers offer each other and the passion of the fans.
I’ve never been very interested in sports, but I think that watching 
your favorite troupe perform
must be like seeing your favorite team compete in the grand final.
To be in that theatre, surrounded by that love and passion,
is an incredible experience. 
Takarazuka is an amazing thing to be a part of, and anyone can be a part of it. 
Theatre can’t exist without an audience,
and just by being in that audience, feeling all that love, 
for those magical three hours, you become part of the world of Takarazuka.

ケイティさん、ありがとうございました。

取材ご協力並びにお写真提供:
Catie Grotherr様
 

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