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バックスター ルミ バイリンガルライフコーチ RumiBaxter
私たちが「生きる」中で、たくさんの選択をしています。 その選択は、意識したものから無意識に選んでいるもの、とるに足らない小さな選択から人生の岐路に立たされた大きな選択まで、その種類も様々。「丁寧に生きる選択」というライフスタイルは、未来へのキーワードでもあります。
丁寧に生きるという選択 ライフスタイル 2023-12-13
テート美術館展 光
今年は特に秋が素早く去っていったようですね。それでも一種独特な冬の匂いを感じます。

大阪は冬の季節に包まれていますが、皆様いかがお過ごしでしょうか。暖冬の影響でしょうか、今年の街の寒さは例年より随分と控えめなように感じます。

この気候の中、先日は大阪中之島美術館で催されている「テート美術館展 光 ターナー、印象派から現代へ」に足を運ぶことができました。光のテーマに焦点を当てたこの展覧会は開催前から心待ちにしていたので、期待いっぱいに出かけてまいりました。

展覧会では、ロンドン、テート美術館の膨大なコレクションから厳選された作品、約120点が一堂に展示されています。

テーマは「光」。これは私が長らく心に抱いていた関心事であり、展覧会を通して、18世紀末から現代までの約200年間に及ぶ芸術家たちの、光を表現する事への熱意、追求、そしてその軌跡を体験することができました。

光、それは、毎日繰り返される昼と夜という自然現象の中で、そして、巡り巡ってやってくる四季の中で、日常の当たり前としてとらえられがちであるかもしれません。それでも光の存在は古代から人類にとっての神秘の源であったのではないでしょうか。

だからこそ「光の存在」は、科学者のみならず、哲学者、芸術家、詩人達を魅せ続けているテーマなのでしょう。展覧会では光の圧倒的な存在、その多様性が感じられる構成となっていました。

光が時代を超えて様々なアーティストの手により、キャンバスの中から、そしてまたインストレーション(空間美術作品)を通して表現されて、それが鑑賞者に訴えかけていました。

その中からいくつか私の個人的な感想ではありますがご紹介したいと思います。

光の画家としてたくさんの風景画によって光を表現した、ターナー(1775-1851)の作品「湖に沈む夕日」(1840年)
まるで自然界の大気の渦が光と混じり合って存在するようです。光と色が感情に及ぼす関係性を追求したと言われるターナーは、このように、限りなく細部を描くこだわりを捨てた後期の作品の中で、一体何を表そうとしていたのでしょうか。

この表題にある湖はスイスのルッツエルン湖と言われていますが、その湖の持つ神秘性、全てを飲み込んでしまうような静寂な水面。

20年以上も前に居住したスイスで私が初めてルッツエルン湖を訪れたのは冬でした。髪の毛が凍るほどに寒かったその時を思い出しながら、絵の中の大気の渦に引き寄せられるような不思議を感じました。

現代抽象画の巨匠、ゲルハルトリヒター(1932-)の作品、「アブストラクト・ペインティング(726)」(1990)
251x351cmもの大きな作品。言葉では説明しきれないほどの存在感を持つこの作品を前に、一見して何が描かれているのか理解できない、そんな不思議な力に圧倒されました。

思わず「そこ」にしばらく立ち止まりました。リヒターの作品を観て、アートに問いも答えも必要ないという事を改めて実感したのです。

光と影、色彩の織りなす複雑な表現が説明を超えて、答えを出すことを強いられていることに慣れきってしまっている私の中で、少しの混乱を招いたのかもしれません。

問いと答えのセットが虚にも当たり前にさえなっている今、美術館で経験した圧倒的な存在感に何かがリセットされた気がしました。

デンマークの画家 ハマスホイ(1864-1916)「室内、床に映る陽光」(1906)
いつかハマスホイの実物を観たいと思っていたので、こんなに近くで観れたという感動がありました。

床に映る影と光の反映を描くことによって光の存在を表し、抑制した灰色のみで描かれた室内には、静寂の空間が描かれていました。「静寂の間」がそこにはありました。静寂を表現することの難しさは、同時に静寂の間の大切さを示してくれているようでもあります。

ここでは書ききれない数々の作品にあふれた光の展覧会は、エリアソン(1967-)の「星屑の素粒子」(2014)のインスタレーション(空間美術作品)で幕を閉じます
巨大ミラーボールがキラキラ光る様、宇宙の中の星屑の素粒子を表しているダイナミックな展示は、特定の環境下で光と色は人間の知覚にどのように作用するかを制作のテーマに創られたそうです。またそれは宇宙の中でのコンタクト、接触、を表現しているのだと知りさらに感動しました。

コンタクト、接触、とは、人を通じて、事象を通じて人生の良い面と難しい面の両方に触れることではないでしょうか。それは自らが手を伸ばして差し出すことからはじまり、そしてつながる事。

光のテーマは、「光を通して、それが私に何を見せてくれて、いったい何が見え、何を見るか、それは結局は自分次第」だという事を強く考えさせられた経験となりました。

今年も残り少なくなりましたが、いくつかの展覧会を通じて非日常を経験できたことに感謝したいと思います。そして、コラムを読んでいただいた方々、今年もどうもありがとうございます。良い年末年始をお迎えください。
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私たちが「生きる」中で、たくさんの選択をしています。 その選択は、意識したものから無意識に選んでいるもの、とるに足らない小さな選択から人生の岐路に立たされた大きな選択まで、その種類も様々。「丁寧に生きる選択」というライフスタイルは、未来へのキーワードでもあります。
バックスター ルミ
バイリンガルライフコーチ

心理カウンセラーのバックグラウンドをいかし、英会話講師として「コミニケーションレッスン」を展開中。 半生を英国、ヨーロッパのライフスタイルに関わってきたことから、それらの経験をもとに独自のレッスンを提供している。「五感+plus」を使ってコミュニケーション能力を磨くレッスンは、本格的英国サロンで行われている。
RumiBaxter
BROG:http://ameblo.jp/rumi-b/

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