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池田 千波留 パーソナリティ、ライター 香のん
(←プロフィールは写真をクリック)宝塚歌劇の魅力にぐいぐい迫っていきます!
タカラジェンヌ歳時記 趣味・カルチャー 2015-02-20
タカラジェンヌと節分
2月3日は節分。
ご家庭でも、豆をまき、鬼を追い払う行事をなさったのではないでしょうか。
節分の豆まきは中国の邪気(鬼)祓いがルーツで
春の初めに祝福の神々を呼び込む意味合いも含んでいます。

宝塚市内にある大本山 中山寺では、毎年節分に「星祭 節分会」を開催され
宝塚歌劇団の生徒扮する観音様が、鬼を諭し善神に変える音楽法要を行っています。
今月の「タカラジェンヌ歳時記」では、
中山寺様のご協力のもと、
節分に活躍するタカラジェンヌの様子と後日談をお届けします。


まずは、タカラジェンヌが参加する音楽法要について、
大本山 中山寺の小笹全照さんにお話を伺いました。

「星祭」とは、星に除災招福を祈る法会のこと。
中山寺では特に、人の一生を守護している星や、
その年のご本人の数え年によって決まる「当年星」をご祈祷します。
悪い年は悪事災難を免れ、善い年は一層よくなるように、ということですね。
節分には全国のお寺で追儺式(ついなしき)が行われるわけですが、
中山寺では、鬼が観音様に諭され善神に変わる様子を
現代的にわかりやすくアレンジした音楽法要の形で行っています。
「鬼は怖いもの、嫌なものと思われがちですが
本当は鬼自体は悪いものではありません。
取り憑いているものが悪いのであり、
それを祓えば善になるのです」
観音様を宝塚歌劇団の生徒さんに務めていただくようになったのは
戦後のことで、以来60年以上続いています。
また、鬼は毎年、関西学院大学の学生さんにお願いしています。
1月末頃には宝塚歌劇団の振付の先生が
関西学院大学の「鬼さん」たちに振り付けを指導していらっしゃいます。
このお稽古があればこそ、初顔合わせの宝塚歌劇団の皆さんと鬼たちが
当日滞りなく務めることができるのです。

続いて、小笹全照さんに教えていただいたお話を交えながら
当日の様子をレポートしましょう。
中山寺での星祭節分会開催は13時と15時の2回。
福豆をいただきたいと願うかた、
立派な一眼レフカメラで迫力ある写真を撮りたいと願う善男善女は
その1時間以上前から中山寺に集い
思い思いに場所取りをされます。
そのころ、中山寺の一角では
追儺式・豆まき式に参加する人々が
観音様の御前で顔合わせをしています。
僧侶、大願主(1回目は現宝塚市長 中川智子さんでした)、
ゲスト(桂吉弥さん)、年男年女である福男福女の皆さん、
そして宝塚歌劇団の皆さんです。
福男福女の裃は松葉色。落ち着いた色調です。
その中で、黄緑や黄色を基調にした衣装を身につけたタカラジェンヌは
ひときわ映えていました。

まず小笹さんが、全体の流れや
参拝者の安全確保に関する注意事項を述べられました。
そして、いよいよ本番開始。
追儺式や豆まき式の全容が仏教用語で伝えられます。
よくよく聞けば先に示された式全体の流れと同じ内容ですが
格式があり、気持ちが引き締まります。

儀式が終わると、錫杖(金棒)を持った金棒引きに先導され
タカラジェンヌが静々と歩み始めます。
今年 節分会に参加したタカラジェンヌは100期生の
蘭尚樹、天彩峰里、優希しおん、希良々うみ、
蓮月りらん、夏風季々、奏音雅、汐聖風美、煌えりせ の9名。
金棒引きが一歩ごとに床に打ち付ける錫杖の"ジャラン"という音には
煩悩を除き、知恵を得る意味があるとか。
阿弥陀堂の回廊を一列になり、
豆の入った大きな福枡を捧げ持ちながら歩くタカラジェンヌたちも
神妙な面持ちです。
回廊から降りると、集まった参拝者の間を、本堂に向かって進みます。
市民カメラマンがシャッターを切る姿がそこここに見られました。

さすがに現役タカラジェンヌを招いての音楽法要だけあり、
本堂にはドラムやフルートなど、8人編成の生バンドが控えています。
彼らも小豆色のシックな色調の裃姿。

タカラジェンヌは生演奏に合わせ
観音様に捧げる奉賛歌を
二番まではお堂の外で
三番、四番をお堂の内で歌います。

と、そこに、鬼が登場。
黄色・赤色・青色の鬼は順番に、
欲深い心「貪(とん)」、怒りの心「瞋(じん)」・道理がわからない愚かな心「痴(ち)」
に取り憑かれています。
鬼棒を突き立て、振り回し、回廊を進む鬼たち。
ひとしきり暴れまわった後、
現れた観音様にも飛びかかろうとします。
しかし、最後は観音様の幣の前にひれ伏し、
取り憑いていたものが取れ、
それぞれ福・禄・寿に生まれ変わるのでした…

観音様は毎年、娘役が務めます。
幣を持つ役と
マイクを持ち上記ストーリーを説明するナレーターは
男役が務めることが多いようです。

追儺式が無事に終わると、ここからは豆まき式。
大きな福枡には、小袋に入った福豆がぎっしり。
特設回廊いっぱいに広がった福男福娘、そしてタカラジェンヌが
福豆を投げます。
この頃にはタカラジェンヌも笑顔、笑顔。
手を広げて「こっちこっち」と呼び招く参拝者の声に応え、
方向を変えながら豆を投げていました。
参拝者に怪我がないように配慮されながらの豆まき式は
賑やかに盛り上がりました。
タカラジェンヌを始め福男福女は
もと来た道を帰って行き、豆まき式は無事に終了。

今年の節分はあいにくの曇り空で
非常に気温が低かったのですが
2回で約1万人の参拝者さんも
いっとき寒さを忘れられたのではないでしょうか。

中山寺の星祭節分会に参加するタカラジェンヌは
研究科一年生(初舞台を踏んで1年目)から選ばれることが多いのですが
公演日程などの兼ね合いがあり、希望してできるものではありません。
このあとは、かつて星祭節分会に参加されたことのある
宝塚歌劇団OGのお話をご紹介します。
第61期生の優ひかりさんは、研究科1年、2年の時に参加。
観音様の役をされました。
「節分は一年で一番寒い時期でしょう?
そんな時『福』をいただこうと集まってくださったみなさんに
少しでも幸せを…と思いながら豆をまいた記憶があります。
それに、観音様として鬼を諌めたり、
あんな高い回廊から豆をまくなんて、
なかなか経験できないことをさせていただけて
ありがたかったです」
優ひかりさんと中山寺のご縁は、退団後 結婚され
お子さんを授かったことでまた深まることになりました。
中山寺は安産守護・除災招福のお寺。
優さんも中山寺に詣でて腹帯をいただきました。
「その時にお寺の方から
『あ、優ひかりさん。
優さんが観音様で豆をまかれた写真が今も残っていますよ』と
お声をかけていただいたのは嬉しかったですねぇ」
そしてその後、その腹帯が別の形で
優さんの二人のお子さんを守る日が来ました。
「こどもたちを通わせた学校では
小学4年生と5年生の夏に遠泳の授業があるんです。
日本海の竹野浜で3キロ泳ぐんですけど
安全のため体にまいた命綱をボートにつないで
いよいよダメだ…とギブアップの合図をしたら
先生がその綱を引いて助けてくださるんですね。
命綱は各家庭で作るんですけど、お母様方のクチコミで
『中山さん(中山寺)の腹帯が丁度いい長さよ』
ということで、3つに折ってミシンがけして幅を調整してね、
子どもの名前と『お前なら泳ぎきれる!』とメッセージを書いて
送り出したんですよ。
泳ぎきって帰って来た時の得意そうな顔!
二人で合計4回中山さんの腹帯に守っていただきました」

第65期生 白川亜樹さんは研究科一年生の時に参加。
「普段(男役は)着ないようなフワフワのお衣装を
着せていただきましたねぇ。
同期の南風まいが観音様の役で
歌っていたことをはっきり覚えています。
私は京都出身で、いろいろな神社仏閣を知っていましたが
豆まき式の時にぎっしり集まっておられる参拝者に
『すごい!!』と驚きました。
でも何より記憶にあるのは控え室が楽しかったこと。
研究科一年生って、劇団にいると他の全員が上級生でしょう?
この日は同期だけで、きれいなお部屋に通していただいて
心おきなくしゃべって、楽しかったですねぇ。
遠足気分だったかもしれません」
白川さんの旦那様は元阪急ブレーブスの山沖之彦投手です。
「結婚して新居に入った時に、
お互いの荷物の中に中山寺の福枡があったんです。
夫もブレーブス時代、24歳の福男として
豆まき式に出させていただいていたんです。
あの枡大きいでしょ?それが二つも家に」
なんだか幸せな光景ですね。
ちなみに、白川さんもお子さんに恵まれました。
「それが二人とも大安産で。
特に下の子なんか、たった15分で生まれてくれて
病院関係者もビックリなさっていたんですよ。
安産の中山さんのご利益だなあと思いました」

宝塚歌劇団の創始者 小林一三氏は
現役中は「清く正しく美しく」
そして退団結婚後は「タカラジェンヌは良妻賢母たれ」との言葉を残しています。
そういう意味でも中山寺とタカラジェンヌの関係は、又とない良縁と言えるでしょう。

【用語監修】
大本山 中山寺様

【取材ご協力】
大本山 中山寺  小笹全照様
(大本山 中山寺さまHP
元宝塚歌劇団  優ひかり様
元宝塚歌劇団  白川亜樹様

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