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Telephone Tales by Ginanni Rodari Illustrated by Valerio Vidali

子どもに戻ったような、幸せな気分になれる本

Telephone Tales
by Gianni Rodari, Illustrated by Valerio Vidali
イタリアではみんなが知っているという、児童文学作家でジャーナリストのジャンニ・ロダーリ。

Telephone Tales は、生誕100年記念の2020年に、装丁を新たに Valerio Vidali のイラストで出版されました。

セールスマンのビアンキさんは、週に6日は薬を売るためにイタリア中をまわり、家を留守にします。日曜に帰宅して、また月曜の朝に出発。

出発の前に、小さい娘は必ずお父さんにお願いをします。おやすみ前のお話を忘れないでね、と。彼女は、お話を聞かないと眠ることができませんでした。

ビアンキさんは、毎晩9時きっかりに、公衆電話から電話をかけてお話を聞かせます。裕福ではなかったので、お話はいつも短いものになりました。

この本が出版された1962年は、公衆電話が利用されていました。私が大学生のときも、まだそうでしたが。表紙のイラストのように、電話線はぐるぐる回転していて、伸びるようになっていたなあ。

電話の交換手も耳を傾けたという、70の短いお話。フランスのシュールレアリズムに影響されたロダーリのお話は、ナンセンスなもの、ファンタジー、SF、中途半端に終わって考えさせられるものなど、どれも心に残ります。

私が好きなお話は、The Merry-Go-Round of Cesenatico。Cesenatico(チェゼナーティコ)は、海沿いの観光地です。あるとき、移動式のメリーゴーランドがやってきました。とても古びていて、運転をしている男は痩せこけ、魅力的とは言い難いものでした。しかし、メリーゴーランドは子どもたちに大人気。大人たちは、首をかしげるばかり。

ある夜、おじいさんが、孫を遊ばせるため、自分も一緒にメリーゴーランドに乗りました。木馬は、おじいさんには小さすぎて、居心地悪く感じました。しかし、男が運転を始めると、景色は一転。高層ビルの上を通り過ぎ、木馬は空中を駆け上がります。あっという間にイタリア半島を見下ろし、世界中を見下ろし、地球が一望できました。子どもたちの乗り物は宇宙船に変わって、一列に並んでいます…

そんなメリーゴーランドに乗ってみたいなあ。結局、誰にも打ち明けられないおじいさんも微笑ましい。

この本を知ったのは、『キンコンカンせんそう』という絵本からでした。英語のタイトルは、The War of the Bells。戦争が長引いて、武器をつくる青銅も鉄もなくなったために、教会の鐘を溶かして、大砲を作りますが、発射しようとすると、鐘の音が鳴り響くという素敵なお話です。

英語版の”Telephone Tales”は、日本語版で訳されていないお話も含まれていて、また Vidali のカラフルなイラストが想像力をかきたててくれます。人の肌が、ピンク色という独創的なもの。

装丁も凝っていて、ページが広がったり、小さな折り込みのページが貼り込まれていたりします。開くと、子どもに戻ったような、幸せな気分になれる本です。
Telephone Tales
by Gianni Rodari, Illustrated by Valerio Vidali
Publisher: Enchanted Lion Books
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谷津 いくこ
絵本専門士

絵本を原書で読んでみませんか?アートな絵本、心が豊かになる絵本、英語圏の文化に触れられる絵本などを紹介します。
StoryPlace
HP:http://www.storyplace.jp
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