まよなかのゆうえんち(ギデオン・ステラ―)
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![]() いつまでも眺めていたくなっちゃう まよなかのゆうえんち
ギデオン・ステラ―(作) マリアキアラ・ディ・ジョルジョ(絵) のっけからしょうもない話で恐縮ですが、3月末頃、口角炎ができたんです。
すぐ治るでしょと高をくくっていたら、こんなに?っていうくらい悪化して。 治るまで1ヶ月くらいかかりました。慢性的に貧血気味な上、おそらくは…心の疲れが溜まり過ぎていたようです。 かねてより、そうならないようにと絵本をおすすめしておきながら、なんてこった(汗) 15分のささやかな現実逃避で気持ちをリセットしよう。今月は、今の私自身が避難先にと選んだ作品です。 一番の理由は、物語はあるけれど、テキストがないことです。場面を追いかけるだけで作品の世界にひたれます。 表紙をご覧下さい。暗い背景に浮かび上がるメリーゴーランド。 電飾看板風のタイトル文字も、レトロな印象で素敵。点々と連なる背景の灯りが形作るのは、よく見たら遊園地の風景です。 さらには、メリーゴーランドを楽しむ誰かたち。人ではありません。 本の見返しから物語は始まっています。 表紙に描かれる動物たちが暮らす森に、移動遊園地がやってきたのです。 夕暮れ時。人間が遊園地で楽しんでいる様子を、彼らは草木の影からじっと眺めています。 人の気配が完全になくなると、彼らは動き出します。ここまでは少し、スリリング。 この後は、彼らが各々に楽しむ様子がひたすら丁寧に描かれます。 移動遊園地ならではの、昔ながらの乗り物や屋台ゲームが夜の森に突如として存在している。 それだけでも現実離れした高揚感がともなっていて、夢の中みたい。 そんなシチュエーションの中、クマの親子、リスやキツネ、アライグマなどなど、色んな動物が人と同じように、各々楽しんでいます。 コーヒーカップは真上から。前後に振れる船の乗り物は、逆光からの濃いシルエットで。 クルクル回る空中ブランコは…仰ぎ見る角度で。 各場面のアングルはもちろんのこと、背景に点在する灯りの滲ませ方が、カメラで撮影した時のそれとそっくりに寄せた描き方になっているんです。 これがまあ、本当に素敵。15分と言わず、いつまでも眺めていたくなっちゃう。 絵本を読んだからといって、私自身が目の前で抱える、色々と追いついていない現状が解消されることは、ありませんが。 それでも、心のリセットを怠った結果が今に至っているのは、確かなのです。 経験して知ってるはずなのに、どうして忘れちゃうんでしょうね…? 心の疲れを無自覚に溜めまくっている方がおられましたら。 5分でもいいので、絵本の中へ一時避難してみて下さい。 「ついでに深呼吸と、ストレッチもしてみようかな」という気分まで復活できたら、バッチリですね! まよなかのゆうえんち
ギデオン・ステラ―(作) マリアキアラ・ディ・ジョルジョ(絵) BL出版 ![]() 恒松 明美
ギャラリーリール(GALLERY RiRE)店主 小説なら1日。映画なら2時間。絵本なら、長くても15分くらいでしょうか。 それでも小説や映画に負けないくらい、心が満たされる絵本があります。 毎日、時間がたりない…。そんな、忙しく働く女性にこそ、 絵本はよきパートナーとなってくれると思います。 毎日窮屈だな。ちょっと背伸びしてばかりだったかな。 「心の凝り」が気になる時におすすめの、絵本をご紹介します。 ギャラリーリール(GALLERY RiRE) |
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