くままでのおさらい(井上奈奈)
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![]() 経験したことがその人の心を作る くままでのおさらい
井上奈奈 東京の印刷博物館にあるギャラリーで、3月31日まで「WORLD BOOK DESIGN 2017-2018」という展覧会が催されています。
様々な国の、興味深い装丁の本ばかりが、200点ほど展示されるという内容です。ちょうど東京で用事がありまして、行ってきたところです。 この展覧会は、4月に奈良県立図書情報館へ巡回する予定とのこと。ご興味を持たれた方、ぜひおでかけ下さいね。 今回ご紹介する作品は、そこで展示されている作品で、昨年の「世界で最も美しい本コンクール(ドイツ)」で銀賞を受賞したものになります。 写真手前、小さい「ハンディ版」の表紙をご覧いただけたら、本文イラストの雰囲気がわかりよいかと思いますが、元になっている絵は、紙版画の技法を用いているそうです。 紙版画、小学生の時、図工の時間に経験された方も多いのでは。バレンで紙の上をゴシゴシしましたよね!どのページも、濃い灰色、赤、黄の3色で表現されています。 主人公の女の子は、くじらやひつじなど、いろんなものを「ぱくぱく ごっくん」と飲み込んで、飲み込んだものに変身しては、恋人に尽くします。 例えば、ひつじを飲み込んだ時は、ひつじに変身して、寒がりの恋人にふかふかの毛でセーターを編んであげたり。 しかし、やがてうさぎを飲み込んだとき、彼女はふと、何もかもが悲しくなってしまいます。 この作品は、夢のあるおとぎ話のようなテイストで語られます。 「ぱくぱく ごっくん」という易しい言葉の繰り返しは、子供たちにも親しみやすく、自分がひつじになってセーターを編んであげる空想など、子供にとって夢のある展開となっています。 けれど実は、その奥に隠されたテーマの解釈こそが、私たち大人にとってのお楽しみ。 もしかしたら、その解釈は様々あるかもしれません。以下は、あくまで私の個人的なものですが…。 主人公の女の子は、恋人と出会って、最初はくじらのように大きくて広い心でいたはずが、彼に尽くし続けるうちに、いつの間にか自分の心が、うさぎのように小さくて臆病で寂しがっていることに、はたと気づいてしまったのかもしれません。 気づいてしまった彼女の心が、次に求めたのは、くま。くまに変身した彼女は、彼に対し、どんな行動に出たのでしょうか。 私には、それが潔い行動に感じられて、結構好きなんです(うふふ)。 ぜひ、皆さんにも読んでもらいたいなあ。 ちなみに、表紙が全部黄色い、銀賞を受賞した「特装版(美篶堂手製本)」は、お皿の形をデザインしているそうです。 窪みのある芯材にシワが寄らないように布を張ることも大変そうですが、お皿の中央、一番窪んだところに箔押しで文字を入れるのが、とても難しい技術なんだそうですよ。 経験したことがその人の心を作る。それって食べることにも似ていますもんね。 色んな経験で心を養う。心の糧としてゆく。 さあ、次のステップへ。爽やかな勇気を与えてくれる作品です。 くままでのおさらい
井上奈奈(作) ビーナイス ![]() 恒松 明美
ギャラリーリール(GALLERY RiRE)店主 小説なら1日。映画なら2時間。絵本なら、長くても15分くらいでしょうか。 それでも小説や映画に負けないくらい、心が満たされる絵本があります。 毎日、時間がたりない…。そんな、忙しく働く女性にこそ、 絵本はよきパートナーとなってくれると思います。 毎日窮屈だな。ちょっと背伸びしてばかりだったかな。 「心の凝り」が気になる時におすすめの、絵本をご紹介します。 ギャラリーリール(GALLERY RiRE) |